運命には抗えない
ep.3 11話 王抗命 後編
「ねぇ、本当に大丈夫?」
「あ、、、」
彼女は本当に彼の事を心配していた。だが、彼には他者に心配されることがなかった。故にただ後退りするだけだった。
でも離れることを彼女は許さなかった。
「ちょっと、なんで逃げるの」
少し怒り口調の言葉に彼の肩はビクッと跳ね上がった。この行動がまた彼女を心配させたと同時に、彼女の記憶を刺激するものがあった。
「あーもしかして、君があの欠陥品って呼ばれてる子?」
欠陥品という言葉にまた肩をビクつかせた。なぜなら、また無理難題なお願いと理不尽な暴力を振るわれると思ったからだ。
「ふふ、安心して私はそこら辺の腐ったモノとは違うからさ」
そう言って彼女は笑った。しかしその顔は笑顔と呼ぶには些か歪んでいた。それでも彼にとってその笑顔はただ光であった。
「さ、行こうか」
彼女は彼の手を半ば強引に取り、ある場所へ連れていった。帰り道の途中彼女は何度か電話を掛けたが彼がその事について気に止めることは無かった。
「ついたよ!」
言葉に反応し、顔を上げた彼の目に映ったのは豪邸だった。
「ここが今日から君の家だよ」
後ろを向いて紹介した後スタスタと歩いていってしまった。彼は急いでその後を追いかけ、疑問を尋ねた。
「あ、の、、、僕の、家は、、、」
「うん、ここだよ」
彼は先程とは違い屈託のない笑顔を見せられ、思わず聞こうとしたことを胸にしまった。
玄関に着くまでの庭を歩いている時彼女は独り言のように呟き出した。
「体力向上実験ランクE、思考能力実験、反射科目、熟考科目共にランクE、社会適応度ランクC、機械化実験ランク外。三科目以上がランクDを下回った為被検体を下位人類種とする」
その試験結果に彼は今日幾度目かの肩を跳ねさせた。
「いやー、自分で言ってて言うのもあれだけどさー。酷い結果だよねー」
そこでちょうど玄関についた。
「よし、それじゃあまず私の部屋通すから着いてきて」
「、、、お邪魔、、、します」
「あはは、良いよ良いよ。今日からここが君の家なんだから」
数分後彼女の部屋の前に辿り着いた。そして、彼女が部屋のドアを開けながら彼に聞いた。
「さっきさ、私酷い結果って言ったでしょ」
彼女が言葉を切ったタイミングで彼は部屋のドアを閉めた。
「あれね、君のことを言った訳じゃないんだよ。試験そのものに対して言ったんだ」
そこで彼女は部屋の中央にあるイスに腰かけ、テーブルを挟んだ逆側のイスに座るよう勧めた。もちろん彼は自分自身に否定する権利はないと思っているので大人しく従った。
「もともと下位人類種なんて呼ばれてる人達は差別されがちだけど君は例外中の例外。この機械の時代で唯一一人機械化出来ない人間なんだからね」
彼女は慣れた手つきでテーブルのキーボードをタイピングし、テーブル中央にコーヒーサーバーを呼び出した。
「あ、ごめんね。私コーヒー派なんだ。君は?」
「なんでも、、、」
「言い忘れてたけど、なんでもいいなんて言わないでよね?」
まるで彼の言うことがわかっていたかのように言葉をさえぎった。また同じ回答をするのも失礼だと感じたのか彼は答えようとしたがそこで問題が生じた。
それは何を答えれば良いか分からなかったからだ。今まで彼は茶やコーヒーを嗜んだことがない為だ。そこで彼女と同じものを頼んだ。
「、、、コーヒーで」
「ふーん、じゃああとはこっちで任せて」
今のやり取りで彼女は彼がこの手の話題に不得手であることを見抜いた。
「そう言えば自己紹介もまだだったよね、私はミィナ・リル。君は?」
「僕は、、、王、抗命」
「抗命君ね、うん、覚えたよ。それでさっきの続きなんだけどね」
この後彼、抗命はミィナからある組織について話をされた。
それこそがレジスタンス。メンバーの九割が下位人類種と蔑まれる人間で構成されており、日々革命の時を待ちながら工作活動を行っている。
ミィナに半ば無理やりにレジスタンスに入れられた抗命はこれまた強制的にレジスタンスのリーダーにされる。
今までは仮リーダーとしてミィナが率いていたが、中位人類種どころか、上位人類種である私がレジスタンスを率いるのはおかしいと言ったためである。
そして最後に、ミィナは抗命に一番重要なことと念を押して言った。
「この組織は何も同じ思想の元集まった同志じゃない。むしろバラバラの思想の歯車が噛み合ってレジスタンスという大きな組織が機能しているの。だからいつか抗命君にも自分の目的を見つけて欲しい」
前後編になってしまい申し訳ございません。
ということで来週最終話です!
「あ、、、」
彼女は本当に彼の事を心配していた。だが、彼には他者に心配されることがなかった。故にただ後退りするだけだった。
でも離れることを彼女は許さなかった。
「ちょっと、なんで逃げるの」
少し怒り口調の言葉に彼の肩はビクッと跳ね上がった。この行動がまた彼女を心配させたと同時に、彼女の記憶を刺激するものがあった。
「あーもしかして、君があの欠陥品って呼ばれてる子?」
欠陥品という言葉にまた肩をビクつかせた。なぜなら、また無理難題なお願いと理不尽な暴力を振るわれると思ったからだ。
「ふふ、安心して私はそこら辺の腐ったモノとは違うからさ」
そう言って彼女は笑った。しかしその顔は笑顔と呼ぶには些か歪んでいた。それでも彼にとってその笑顔はただ光であった。
「さ、行こうか」
彼女は彼の手を半ば強引に取り、ある場所へ連れていった。帰り道の途中彼女は何度か電話を掛けたが彼がその事について気に止めることは無かった。
「ついたよ!」
言葉に反応し、顔を上げた彼の目に映ったのは豪邸だった。
「ここが今日から君の家だよ」
後ろを向いて紹介した後スタスタと歩いていってしまった。彼は急いでその後を追いかけ、疑問を尋ねた。
「あ、の、、、僕の、家は、、、」
「うん、ここだよ」
彼は先程とは違い屈託のない笑顔を見せられ、思わず聞こうとしたことを胸にしまった。
玄関に着くまでの庭を歩いている時彼女は独り言のように呟き出した。
「体力向上実験ランクE、思考能力実験、反射科目、熟考科目共にランクE、社会適応度ランクC、機械化実験ランク外。三科目以上がランクDを下回った為被検体を下位人類種とする」
その試験結果に彼は今日幾度目かの肩を跳ねさせた。
「いやー、自分で言ってて言うのもあれだけどさー。酷い結果だよねー」
そこでちょうど玄関についた。
「よし、それじゃあまず私の部屋通すから着いてきて」
「、、、お邪魔、、、します」
「あはは、良いよ良いよ。今日からここが君の家なんだから」
数分後彼女の部屋の前に辿り着いた。そして、彼女が部屋のドアを開けながら彼に聞いた。
「さっきさ、私酷い結果って言ったでしょ」
彼女が言葉を切ったタイミングで彼は部屋のドアを閉めた。
「あれね、君のことを言った訳じゃないんだよ。試験そのものに対して言ったんだ」
そこで彼女は部屋の中央にあるイスに腰かけ、テーブルを挟んだ逆側のイスに座るよう勧めた。もちろん彼は自分自身に否定する権利はないと思っているので大人しく従った。
「もともと下位人類種なんて呼ばれてる人達は差別されがちだけど君は例外中の例外。この機械の時代で唯一一人機械化出来ない人間なんだからね」
彼女は慣れた手つきでテーブルのキーボードをタイピングし、テーブル中央にコーヒーサーバーを呼び出した。
「あ、ごめんね。私コーヒー派なんだ。君は?」
「なんでも、、、」
「言い忘れてたけど、なんでもいいなんて言わないでよね?」
まるで彼の言うことがわかっていたかのように言葉をさえぎった。また同じ回答をするのも失礼だと感じたのか彼は答えようとしたがそこで問題が生じた。
それは何を答えれば良いか分からなかったからだ。今まで彼は茶やコーヒーを嗜んだことがない為だ。そこで彼女と同じものを頼んだ。
「、、、コーヒーで」
「ふーん、じゃああとはこっちで任せて」
今のやり取りで彼女は彼がこの手の話題に不得手であることを見抜いた。
「そう言えば自己紹介もまだだったよね、私はミィナ・リル。君は?」
「僕は、、、王、抗命」
「抗命君ね、うん、覚えたよ。それでさっきの続きなんだけどね」
この後彼、抗命はミィナからある組織について話をされた。
それこそがレジスタンス。メンバーの九割が下位人類種と蔑まれる人間で構成されており、日々革命の時を待ちながら工作活動を行っている。
ミィナに半ば無理やりにレジスタンスに入れられた抗命はこれまた強制的にレジスタンスのリーダーにされる。
今までは仮リーダーとしてミィナが率いていたが、中位人類種どころか、上位人類種である私がレジスタンスを率いるのはおかしいと言ったためである。
そして最後に、ミィナは抗命に一番重要なことと念を押して言った。
「この組織は何も同じ思想の元集まった同志じゃない。むしろバラバラの思想の歯車が噛み合ってレジスタンスという大きな組織が機能しているの。だからいつか抗命君にも自分の目的を見つけて欲しい」
前後編になってしまい申し訳ございません。
ということで来週最終話です!
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