運命には抗えない
ep.3 10話 王抗命 前編
ー王 抗命sideー
「そこにいる欠陥品の実の兄です」
後ろにいるメンバー達は墜落星、いや兄さんの言葉に息を飲んでいる事だろう。なぜなら、僕がその真実に対して一言も話したことは無かったからだ。
「その様子を見るにどうやらお前は仲間にうちあけていないようですね。流石は欠陥品!仲間の1人も信用出来ずに組織を率いるとは、これは傑作!」
僕達が、反論しないことをいいことに兄さんは長々と話し込んでいた。なので、目線だけで作戦を伝え、準備をさせてもらうことにした。
「しかし思えば、私の最大とも言っていい汚点はお前という存在です。お前が私の弟であるから、この私はどこへ行こうと欠陥品の兄というレッテルが貼られてしまっているのです」
準備が終わるまでは数分だろう。そして兄さんは一度話し始めたら自分が満足するまで語るのを止めない。
そして、兄さんを前にすると否応にも自らの過去を思い出してしまうのだ。
「おんぎゃあ!おんぎゃあ!」
「、、、」
「おめでとうございます!可愛い双子の赤ちゃんです!」
ある病棟で二人の赤子が生まれた。その二人はどちらも男の子であった。
しかし、双子であるにもかかわらず性格はおろか、容姿までも似つかない存在、言わば対を成すように生まれた。
兄は容姿に全く特徴がなく、産声も上げなかった。対して弟は瞳の色が輝いており、元気な産声を響かせていた。
これが墜落星と王抗命の誕生である。
普通であれば親は自らの子に分け隔てなく接するが、墜家は違った。どこまでも利己的で道徳心のない人間だったのだ。
その考えは自分の子供に対しても変わらなかった。故に彼らの欺瞞と呼ぶべき愛の全ては弟に与えられた。
何をするにも弟が優先され、兄は存在など初めからなかったような扱いを受けた。
しかしそれも長くは持たなかった。なぜなら、兄にはありとあらゆる才能があったからだ。
その事が分かってからの出来事など火を見るより明らかだった。全てにおいて優先されていた弟が今度は逆に以前の兄のような扱いを受け始めた。
そして、双子が物心つき始めた頃にはその差は既に取り返しがつかないほどとなっていた。またそれに比例するように能力の差もまた開いていた。
だが、まだ育てられただけでもまだ良い方だっただろう。利己心の塊が育児放棄しなかったからだ。
これは決して親心などという優しいものによってからくる決断ではなく、自分たちにとって利用価値のあるものなるかもしれないという可能性を見ての決断であった。
「これからはここが君のおうちだよ」
故に施設に送られるのにそう時間はかからなかった。
この時の弟の年齢はわずか5才である。普通の子供であればまだまだ甘え盛りな時期だ。
だが、不幸中の幸いにも直ぐに王家という引き取り手が見つかり、弟は新しい生活を手に入れることが出来た。いや、正しくは元々どん底だった人生が少しマシになっただけだった。
なぜなら、王家もまた養子を引き取ることによる相当な特別手当が目当てだったからだ。養子ということで学校には通うことが出来たものの待っているのは苦痛と疲弊の毎日だった。
学校では欠陥品と呼ばれ、子供であるが故の非人道的な行いを受け、帰宅してからも家の仕事の全てをさせられる毎日。少しでも間違いを起こそうものなら教育という名目の暴力が振るわれた。
そんな生活が9年間続いた。
その頃にはもう彼の明るい性格など崩壊しており、輝かしい瞳には光の一筋すら垣間見ることは出来なくなっていた。
ある日彼は学校の屋上に来ていた。だが、そこに彼の意思は無かった。
「よお、欠陥品ちゃん。今日もきてくれて嬉しいよ。まあ、当たり前だよな?俺たち友達だもんなあ」
そこには所謂不良と呼ばれるもの達と虐めに加担する生徒が居た。
「今日も約束のものちゃ〜んと持ってきてくれたんだよな?」
「はい」
彼が出したのは教師が持っている携帯電子機器だ。携帯電子機器とは通話機能を主とした物だ。その中にはもちろん財布機能も搭載されている。
そして、そんな携帯端末が三台あった。
「あ?ちゃんと人数分ねぇじゃねぇか!どういうことだ、アァ?」
「今日は人の目が厳しか、、、」
「うるせぇ言い訳すんな!」
ドンッ!
まるで当たり前かのように不良の一人が彼を蹴り飛ばした。それに呼応するように次々と倒れ込んだ彼に罵詈雑言を浴びせながら暴力を働いた。
そしてしばらくこの状況が続き、最後に言った。
「それじゃお前はここでじっとしていろ。教師の携帯を持ったまま、、、な。俺たちは欠陥品の友達になってあげてるんだからお前が犯人役やれよな」
「いやそもそも盗んだのはこいつだろ。だから、これは自業自得ってやつだな」
「それもそうだな。自分の罪は自分で償わなきゃダメだよなあ、欠陥品ちゃん」
その言葉を最後に彼らは消えた。彼は言いつけ通りいつまでもそこで待ち続けた。
またしばらくして屋上のドアが開かれた。だが、彼はドアの方を見ることはしなかった。ただ暴力が振るわれるのだという事実を再確認したまま動かなかった。
しかし掛けられた言葉は教師と言うには些か若く、いや若すぎた。彼は気になり、目を開け目の前に立つ人間が誰かを確かめた。
「ぇ、、、ねぇってば!、、、聞いてるの!」
驚くべきことにそこには少女が立っていたのだ。
前編終了です!
ちょっと思ったより長くなりそうですね(遠い目)。
補足ですが、王抗命が欠陥品と呼ばれる理由はまだ明かされていません。
「そこにいる欠陥品の実の兄です」
後ろにいるメンバー達は墜落星、いや兄さんの言葉に息を飲んでいる事だろう。なぜなら、僕がその真実に対して一言も話したことは無かったからだ。
「その様子を見るにどうやらお前は仲間にうちあけていないようですね。流石は欠陥品!仲間の1人も信用出来ずに組織を率いるとは、これは傑作!」
僕達が、反論しないことをいいことに兄さんは長々と話し込んでいた。なので、目線だけで作戦を伝え、準備をさせてもらうことにした。
「しかし思えば、私の最大とも言っていい汚点はお前という存在です。お前が私の弟であるから、この私はどこへ行こうと欠陥品の兄というレッテルが貼られてしまっているのです」
準備が終わるまでは数分だろう。そして兄さんは一度話し始めたら自分が満足するまで語るのを止めない。
そして、兄さんを前にすると否応にも自らの過去を思い出してしまうのだ。
「おんぎゃあ!おんぎゃあ!」
「、、、」
「おめでとうございます!可愛い双子の赤ちゃんです!」
ある病棟で二人の赤子が生まれた。その二人はどちらも男の子であった。
しかし、双子であるにもかかわらず性格はおろか、容姿までも似つかない存在、言わば対を成すように生まれた。
兄は容姿に全く特徴がなく、産声も上げなかった。対して弟は瞳の色が輝いており、元気な産声を響かせていた。
これが墜落星と王抗命の誕生である。
普通であれば親は自らの子に分け隔てなく接するが、墜家は違った。どこまでも利己的で道徳心のない人間だったのだ。
その考えは自分の子供に対しても変わらなかった。故に彼らの欺瞞と呼ぶべき愛の全ては弟に与えられた。
何をするにも弟が優先され、兄は存在など初めからなかったような扱いを受けた。
しかしそれも長くは持たなかった。なぜなら、兄にはありとあらゆる才能があったからだ。
その事が分かってからの出来事など火を見るより明らかだった。全てにおいて優先されていた弟が今度は逆に以前の兄のような扱いを受け始めた。
そして、双子が物心つき始めた頃にはその差は既に取り返しがつかないほどとなっていた。またそれに比例するように能力の差もまた開いていた。
だが、まだ育てられただけでもまだ良い方だっただろう。利己心の塊が育児放棄しなかったからだ。
これは決して親心などという優しいものによってからくる決断ではなく、自分たちにとって利用価値のあるものなるかもしれないという可能性を見ての決断であった。
「これからはここが君のおうちだよ」
故に施設に送られるのにそう時間はかからなかった。
この時の弟の年齢はわずか5才である。普通の子供であればまだまだ甘え盛りな時期だ。
だが、不幸中の幸いにも直ぐに王家という引き取り手が見つかり、弟は新しい生活を手に入れることが出来た。いや、正しくは元々どん底だった人生が少しマシになっただけだった。
なぜなら、王家もまた養子を引き取ることによる相当な特別手当が目当てだったからだ。養子ということで学校には通うことが出来たものの待っているのは苦痛と疲弊の毎日だった。
学校では欠陥品と呼ばれ、子供であるが故の非人道的な行いを受け、帰宅してからも家の仕事の全てをさせられる毎日。少しでも間違いを起こそうものなら教育という名目の暴力が振るわれた。
そんな生活が9年間続いた。
その頃にはもう彼の明るい性格など崩壊しており、輝かしい瞳には光の一筋すら垣間見ることは出来なくなっていた。
ある日彼は学校の屋上に来ていた。だが、そこに彼の意思は無かった。
「よお、欠陥品ちゃん。今日もきてくれて嬉しいよ。まあ、当たり前だよな?俺たち友達だもんなあ」
そこには所謂不良と呼ばれるもの達と虐めに加担する生徒が居た。
「今日も約束のものちゃ〜んと持ってきてくれたんだよな?」
「はい」
彼が出したのは教師が持っている携帯電子機器だ。携帯電子機器とは通話機能を主とした物だ。その中にはもちろん財布機能も搭載されている。
そして、そんな携帯端末が三台あった。
「あ?ちゃんと人数分ねぇじゃねぇか!どういうことだ、アァ?」
「今日は人の目が厳しか、、、」
「うるせぇ言い訳すんな!」
ドンッ!
まるで当たり前かのように不良の一人が彼を蹴り飛ばした。それに呼応するように次々と倒れ込んだ彼に罵詈雑言を浴びせながら暴力を働いた。
そしてしばらくこの状況が続き、最後に言った。
「それじゃお前はここでじっとしていろ。教師の携帯を持ったまま、、、な。俺たちは欠陥品の友達になってあげてるんだからお前が犯人役やれよな」
「いやそもそも盗んだのはこいつだろ。だから、これは自業自得ってやつだな」
「それもそうだな。自分の罪は自分で償わなきゃダメだよなあ、欠陥品ちゃん」
その言葉を最後に彼らは消えた。彼は言いつけ通りいつまでもそこで待ち続けた。
またしばらくして屋上のドアが開かれた。だが、彼はドアの方を見ることはしなかった。ただ暴力が振るわれるのだという事実を再確認したまま動かなかった。
しかし掛けられた言葉は教師と言うには些か若く、いや若すぎた。彼は気になり、目を開け目の前に立つ人間が誰かを確かめた。
「ぇ、、、ねぇってば!、、、聞いてるの!」
驚くべきことにそこには少女が立っていたのだ。
前編終了です!
ちょっと思ったより長くなりそうですね(遠い目)。
補足ですが、王抗命が欠陥品と呼ばれる理由はまだ明かされていません。
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