運命には抗えない

あぶそーぶ

ep.2 17話 準備

 会議室を後にしたスミスはその後戦力を整えることを第1の目的とした。

「大丈夫なのですかね、あのような素性も分からぬ者に任せておいて。もしかしたら、このまま逃げられる可能性もあるのですよ?」

 ジーニスのその考えは最もだった。事実、会議室にいたほとんどの団長がそう考えていたからだ。

「そんなことをしても人類が滅びるだけなのはあの人も分かっているはずです。勝算があるからあのような申し出を出したに違いありません」

 ジーニスの問に答えたのはヴァルキリーだ。この中で唯一スミスと戦場で会ったことのある彼女には、彼女にしか分からない何かがあるのだろう。

「なんで、、、そこまで、言える、、、?」

「あの人は1度我々第10師団を助けています。それに、我々が敵わなかったゴーレムをいとも容易く破壊していました。もし、あの人がここに来なかったとしても、探しに行ってましたから」

 サイレントの疑問に対しても間髪入れず応えた。彼女がスミスに対してある程度の信頼を置いていることを皆が察した。

 だが、皆は鍛冶師であるスミスが軍勢3万に対抗出来る戦力を揃えることが出来るかどうかなどは分からなかったが、頼らざるを得ない状況だということには気づいていた。

 そうして、スミスは3日後に王都に帰ってきた。スミスが逃げるかもしれないという疑いはここで晴れた。

 それからはひたすら武器を作り続けた。と言っても1日10本前後が限界で、次の襲撃までに全員分を作れない事は明白だった。

 そこで優先順位をつけ、各師団で名のある者に優先的に配布した。団長達に配らない理由は皆が神器持ちだからだ。

 スミスが作った武具は全て好評だった。取り回しが良く、硬い。そして、壊れない。

 これほどの代物を対価無しで受け取っていいものかと、団内で話されるくらいだった。中には試し斬りではもの足りず、試合を行っている者もいた。

 そうしている内に1週間がたった。相も変わらずスミスは王都で武器を作っていた。そんなスミスの元にある1報が伝わった。

「そうか、やってきたか」

 それはスミスにとっていや、人類にとって厄災を意味した。

「ならば、急ぎこの事を鬼滅団に伝えなくてはな」

 その後、瞬く間に鬼滅団中にその報せは広がった。

 そのような報せの内容はこうだ。

「遥か西の海に未確認の黒い島を発見。恐らく侵略者の保有する船と思われる。襲撃は明日決行されるものだと断定。速やかに準備されたし」







追記:一部表現の添削(2020/3/19)

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