運命には抗えない
ep.2 6話 師範
これは、アネモニーが道場に入る前のことである。
十年前、師範はまだマスフェスという名前で活動し、道場もなかった頃だ。マスフェスは鬼滅団の第8師団の団長をしていた。
その日、人類生存域拡大のための攻略が行なわれていた。マスフェス含む各師団長は今まで通り犠牲者は全鬼滅団中でも100人はいないだろうと高をくくっていた。しかしこれは油断の現れからくる慢心ではなく、今までの鬼との争いの中から得た予想である。故に団長はもちろん、団員一人とっても油断している者はいなかった。
ここで改めて攻略について再確認しておこう。攻略とは鬼の殲滅を目的としたものではない。人が護衛ありで安全に生活できる程度に鬼の数を減らすことが目的だ。無論、鬼を殲滅できることに越した事はないので、発見した鬼は例え一匹であっても見逃さない。
とまあ攻略に関しては重要なことわこれくらいだ。あとは鬼の討伐した数や大きさで攻略後の報酬が変わってくるだとかいう団員たちのルールだ。
ここで、攻略の様子をお見せしたいと思う。しばらく戦場の空気をご堪能下さい。
「前方に三体の鬼を発見!」
「特徴は?」
「3メートルのゴブリンと4メートルのゴブリン、それと6メートルのオーがです」
「よし、オーガには大砲を集中させろ!ゴブリンには通常戦法で行く!」
「「「了解!!!」」」
その後、指示を受けた団員達は迅速な対応を見せる。やがて、砲撃の準備が出来た。
「団長、大砲用意できました」
「よし、5で放て!後に、ゴブリン討伐には私に続け!5、4、3、2、1、発射!!」
その掛け声の後数発の砲撃の音が聞こえた。内、着弾したのは右足、左足、右手である。鬼の討伐で両足を潰すことはかなり有効で、討伐の難度が大きく変わる部位なのだ。
しかし、大砲での砲撃など大抵狙った方向には向かってくれず、外れていくのが定石。なぜなら、大砲一つ一つが手作りであるため、癖がかなり変わるからだ。
「よし、オーガは倒れたな。4メートルは私が引き受ける。その内に2体の息の根を止めるんだ!」
「「「オオオォォォ!!!」」」
その雄叫びに怯んだかのように見えたゴブリン達だったが、それは一瞬のみで次の瞬間には同じく雄叫びを上げて突っ込んできた。
「はあぁぁ!!」
「グギャアア!!」
そこで団長、マスフェスの剣とゴブリンの爪が交えた。体型及び武器で言えば圧倒的にゴブリンの方が有利だ。
「ふっ」
「ギャ!?!?」
しかし、団長を名乗るだけあってその技量は力さえも凌駕する。
受け流し。
それは他でも無いマスフェスが開発した剣術だ。「力の無い者が圧倒的力の強い者と渡り合う為の邪道剣術」とマスフェスは言っていた。
しかし、それを成し遂げるのには果てしない修行の末に手に入れた精神力と、何者を前にしても絶えない集中力が必要になる。
「さあ、今だ!全員突撃!」
彼はゴブリンとの戦いで1歩も引かず、更には団員達に指示することが出来る。実は団長になるためにはここが出来なければいけない。いくら強くともカリスマ性がなければ団員達をただ死なせてしまうだけだからだ。
そうして、しばらくして、戦いは終わった。
「犠牲者は?」
「0です。見事なご指示でした」
これは戦いの後必ずする行為。死者が出た場合は誰かを確認し、弔いもせず、次の行動に移る。
非情だと思うかもしれないが、攻略にはいち早い行動が必要不可欠だ。弔いをさせてあげる時間など最初からない。帰還の時、運良く死体の状態が良ければ、持ち帰って弔って貰える程度だ。
「よし、それでは、、、ん?なんだ、あれは、、、」
「だ、団長、、、あ、あれは。鬼の大軍です!数え切れないほどの鬼がこっちに来ます!!」
その言葉に第8師団の団員達は混乱に陥った。それもそのはず、今までは出会っても10体が精々だった。それでも苦戦を強いられ、やっとの事で倒したのは1時間後で、30人もの死者を出した。
「どうやら、私達の死地はここのようだ」
団長のその言葉に怒りを表す者はいなかった。なぜなら、10体ほどの鬼でも1時間かかったのだ。それが見ただけで50はいる鬼達にどうして勝てようか。
「しかし、私達はまだ生きている。ならば、あの鬼共に人類の威厳を見せつけてやろうではないか!!」
その言葉に次々と顔を上げる。その瞳は覚悟を決めた色をしていた。
いや、正しくはそれにすがっていたのだろう。自分は誉ある人間なのだと、半ば心酔しているような気分であった。
「私が先陣を務めよう!勇気ある者達から私に続くのだ!!」
そうして、走り出すマスフェス。それに呼応するように雄叫びが上がるのだった。
1時間後、総団員の3分の1が死んだ。その数字だけでも絶望的だが、それよりも恐ろしい絶望が前に現れた。
それは他の鬼とは明らかに違う。武器を手に持ち、周りにいる鬼達に指示をしている存在。
大きさは3メートルとゴブリンの中でも小さい部類だが、マスフェスは9メートルのオーガよりも厄介だと判断した。故に、
「あの武器持ちは私が相手取る!他のものは手を出すな!」
返事は返ってこなかったが、鬼との先頭で精一杯なのだろう。
「はぁ!!」
「ガァ!!」
この1太刀でマスフェスはこう感じただろう。「あまりにも違いすぎる」と。
それもそのはず。力で言えばオーガの方が上だ。しかし、このゴブリンは知性を持っていて、決して少なくない剣術を会得しているのだ。
今まで剣術で勝負してきたマスフェスにとってこれ程やりにくい相手はいないだろう。
だが、それで殺られる程マスフェスも弱くなかった。結局は知性があっても鬼は鬼。ならば、必ずどこかに弱点があるはずだと。
幾ばくか剣を交えた後、遂にその弱点を発見した。それは剣を振るう時必ず前に1歩右足を踏み出すことだ。それにより、剣を持つ左手は右足の対角線に位置する。これにより、右足の切断が可能になる。
しかし、ここで功を奏すことはしなかった。可能にはなるが、実践した次の瞬間マスフェスの体は分断されるだろうと分かったからだ。
だから、ここでマスフェスの得意技、受け流しをする。だが、思ったよりも力が強かったのか、受け流しに綻びが生じた。そのせいで利き手である左の肩が抉られてしまった。
それでも彼は諦めず最後まで攻撃を受け流し、相手がバランスを崩したところを狙い首を跳ね飛ばした。
それから数時間後、鬼滅団の第8師団は壊滅した。彼らはその後の作戦は続行不可と判断し、王都へ帰還した。
今までの攻略後の報告とは主に拡大地域と戦死者の報告のみだった。だが、今の王都が出来てから初めて、新たなる報告が生まれた。それは言うまでもなく鬼の新種についての報告だ。
他の師団も帰還し、本来の意味での攻略が終了した時、全師団に電撃が走ったことは言うまでもなかったが、それはつまり第8師団以外の鬼滅団は知性を持つ鬼と対峙していないことの証明だった。
また、このときを持って知性を持つ鬼を亜種と呼ぶとこに決定された。
ほとんど3000文字になってて若干困惑中な作者です。
そんなに日常的(?)な描写を書きたくないのでしょうか、、、。
十年前、師範はまだマスフェスという名前で活動し、道場もなかった頃だ。マスフェスは鬼滅団の第8師団の団長をしていた。
その日、人類生存域拡大のための攻略が行なわれていた。マスフェス含む各師団長は今まで通り犠牲者は全鬼滅団中でも100人はいないだろうと高をくくっていた。しかしこれは油断の現れからくる慢心ではなく、今までの鬼との争いの中から得た予想である。故に団長はもちろん、団員一人とっても油断している者はいなかった。
ここで改めて攻略について再確認しておこう。攻略とは鬼の殲滅を目的としたものではない。人が護衛ありで安全に生活できる程度に鬼の数を減らすことが目的だ。無論、鬼を殲滅できることに越した事はないので、発見した鬼は例え一匹であっても見逃さない。
とまあ攻略に関しては重要なことわこれくらいだ。あとは鬼の討伐した数や大きさで攻略後の報酬が変わってくるだとかいう団員たちのルールだ。
ここで、攻略の様子をお見せしたいと思う。しばらく戦場の空気をご堪能下さい。
「前方に三体の鬼を発見!」
「特徴は?」
「3メートルのゴブリンと4メートルのゴブリン、それと6メートルのオーがです」
「よし、オーガには大砲を集中させろ!ゴブリンには通常戦法で行く!」
「「「了解!!!」」」
その後、指示を受けた団員達は迅速な対応を見せる。やがて、砲撃の準備が出来た。
「団長、大砲用意できました」
「よし、5で放て!後に、ゴブリン討伐には私に続け!5、4、3、2、1、発射!!」
その掛け声の後数発の砲撃の音が聞こえた。内、着弾したのは右足、左足、右手である。鬼の討伐で両足を潰すことはかなり有効で、討伐の難度が大きく変わる部位なのだ。
しかし、大砲での砲撃など大抵狙った方向には向かってくれず、外れていくのが定石。なぜなら、大砲一つ一つが手作りであるため、癖がかなり変わるからだ。
「よし、オーガは倒れたな。4メートルは私が引き受ける。その内に2体の息の根を止めるんだ!」
「「「オオオォォォ!!!」」」
その雄叫びに怯んだかのように見えたゴブリン達だったが、それは一瞬のみで次の瞬間には同じく雄叫びを上げて突っ込んできた。
「はあぁぁ!!」
「グギャアア!!」
そこで団長、マスフェスの剣とゴブリンの爪が交えた。体型及び武器で言えば圧倒的にゴブリンの方が有利だ。
「ふっ」
「ギャ!?!?」
しかし、団長を名乗るだけあってその技量は力さえも凌駕する。
受け流し。
それは他でも無いマスフェスが開発した剣術だ。「力の無い者が圧倒的力の強い者と渡り合う為の邪道剣術」とマスフェスは言っていた。
しかし、それを成し遂げるのには果てしない修行の末に手に入れた精神力と、何者を前にしても絶えない集中力が必要になる。
「さあ、今だ!全員突撃!」
彼はゴブリンとの戦いで1歩も引かず、更には団員達に指示することが出来る。実は団長になるためにはここが出来なければいけない。いくら強くともカリスマ性がなければ団員達をただ死なせてしまうだけだからだ。
そうして、しばらくして、戦いは終わった。
「犠牲者は?」
「0です。見事なご指示でした」
これは戦いの後必ずする行為。死者が出た場合は誰かを確認し、弔いもせず、次の行動に移る。
非情だと思うかもしれないが、攻略にはいち早い行動が必要不可欠だ。弔いをさせてあげる時間など最初からない。帰還の時、運良く死体の状態が良ければ、持ち帰って弔って貰える程度だ。
「よし、それでは、、、ん?なんだ、あれは、、、」
「だ、団長、、、あ、あれは。鬼の大軍です!数え切れないほどの鬼がこっちに来ます!!」
その言葉に第8師団の団員達は混乱に陥った。それもそのはず、今までは出会っても10体が精々だった。それでも苦戦を強いられ、やっとの事で倒したのは1時間後で、30人もの死者を出した。
「どうやら、私達の死地はここのようだ」
団長のその言葉に怒りを表す者はいなかった。なぜなら、10体ほどの鬼でも1時間かかったのだ。それが見ただけで50はいる鬼達にどうして勝てようか。
「しかし、私達はまだ生きている。ならば、あの鬼共に人類の威厳を見せつけてやろうではないか!!」
その言葉に次々と顔を上げる。その瞳は覚悟を決めた色をしていた。
いや、正しくはそれにすがっていたのだろう。自分は誉ある人間なのだと、半ば心酔しているような気分であった。
「私が先陣を務めよう!勇気ある者達から私に続くのだ!!」
そうして、走り出すマスフェス。それに呼応するように雄叫びが上がるのだった。
1時間後、総団員の3分の1が死んだ。その数字だけでも絶望的だが、それよりも恐ろしい絶望が前に現れた。
それは他の鬼とは明らかに違う。武器を手に持ち、周りにいる鬼達に指示をしている存在。
大きさは3メートルとゴブリンの中でも小さい部類だが、マスフェスは9メートルのオーガよりも厄介だと判断した。故に、
「あの武器持ちは私が相手取る!他のものは手を出すな!」
返事は返ってこなかったが、鬼との先頭で精一杯なのだろう。
「はぁ!!」
「ガァ!!」
この1太刀でマスフェスはこう感じただろう。「あまりにも違いすぎる」と。
それもそのはず。力で言えばオーガの方が上だ。しかし、このゴブリンは知性を持っていて、決して少なくない剣術を会得しているのだ。
今まで剣術で勝負してきたマスフェスにとってこれ程やりにくい相手はいないだろう。
だが、それで殺られる程マスフェスも弱くなかった。結局は知性があっても鬼は鬼。ならば、必ずどこかに弱点があるはずだと。
幾ばくか剣を交えた後、遂にその弱点を発見した。それは剣を振るう時必ず前に1歩右足を踏み出すことだ。それにより、剣を持つ左手は右足の対角線に位置する。これにより、右足の切断が可能になる。
しかし、ここで功を奏すことはしなかった。可能にはなるが、実践した次の瞬間マスフェスの体は分断されるだろうと分かったからだ。
だから、ここでマスフェスの得意技、受け流しをする。だが、思ったよりも力が強かったのか、受け流しに綻びが生じた。そのせいで利き手である左の肩が抉られてしまった。
それでも彼は諦めず最後まで攻撃を受け流し、相手がバランスを崩したところを狙い首を跳ね飛ばした。
それから数時間後、鬼滅団の第8師団は壊滅した。彼らはその後の作戦は続行不可と判断し、王都へ帰還した。
今までの攻略後の報告とは主に拡大地域と戦死者の報告のみだった。だが、今の王都が出来てから初めて、新たなる報告が生まれた。それは言うまでもなく鬼の新種についての報告だ。
他の師団も帰還し、本来の意味での攻略が終了した時、全師団に電撃が走ったことは言うまでもなかったが、それはつまり第8師団以外の鬼滅団は知性を持つ鬼と対峙していないことの証明だった。
また、このときを持って知性を持つ鬼を亜種と呼ぶとこに決定された。
ほとんど3000文字になってて若干困惑中な作者です。
そんなに日常的(?)な描写を書きたくないのでしょうか、、、。
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