運命には抗えない
23話 幻覚
-音無 零side-
維真と別れてからはずっと走っていた。逃げだとわかっていてもそうすることしか出来なかった。
そうしてある一つの部屋が目に入った。何の変哲のない扉。今までも通路を走っていて何度も目にしたのと全く同じ扉。こんな所で立ち止まっている場合ではないとわかっていながら、俺はその部屋にさも吸い込まれるかのように入った。
その中は真っ白な空間が広がっていた。
いや正しくは、部屋なのだが、まるでどこまでも続いているような錯覚を受けるくらい真っ白なだった。
その空間の真ん中にはテーブルと対をなすように置かれた2脚の椅子のみが置かれていた。そしてその椅子の片方に1人の少女らしい人が座っていた。
「乙女の部屋にノックもせず入ってくるとは、男として、、、いや、紳士としてあってはならぬ行為じゃの」
その少女が話しかけてきたので対応することにした。無駄だとは思うが若しかしたら、優希がいる場所を教えてくれるかもしれないからだ。
「普通ならそうだろうな。だけど、今は俺達はここに攻め入ってるんだ。これから殺す相手にいちいち礼儀正しく接しなくていいだろ?」
そう言ってその後言葉を続けようとしたが、それより前に少女が発言した。
「ほう。我を殺すと?じゃが、変じゃのう。殺すと言っておる割には全く殺気を放っておらんだろう?演技でももう少し上手くやってもらわんとなあ」
、、、恐らくだが、この少女は俺がこいつのことを殺さないことが分かっている。見た目通りの少女なら殺すと言っておけばなんでも言うと思ったのだが、どうやらこいつは違うらしい。だから、こう聞くことにした。
「はぁ。んじゃもういい。単刀直入に聞く。十日前にここに来たウィード星人の女の子はどこだ」
「まあまあ、そんな立ち話も何じゃから、そこに座って話そうじゃないか」
そんな焦らすようなことを言ってきたので少し強めに発言した。
「俺はそんな悠長なことをしている暇じゃないんだ!早く話、、、」
とまで言ったところでまたも遮られた。それは先ほどと同じような声によるものではなく、もっと鋭利なものによって。
それは刹那の出来事だった。一瞬彼女の体が明滅したかと思ったが、次の瞬間には俺の首筋にナイフをあてていたのだ。しかし、相手もこちらを直ぐには殺したくなかったのか、殺すことはしなかった。
「言うたじゃろう?そこの椅子に座れと。聞き分けのない子には、それはそれは痛い罰を与えねばならぬのじゃ。お主はもちろん嫌じゃろうし、こちらとしてもそれは望まぬのじゃ」
その言葉に首肯し、大人しく座ることにした。いつもなら素直に言うことを聞くのだが、どうやら自分が思っている以上に心に余裕が無いらしい。
座ったところで少女はテーブルを軽く2回叩いた。そうすると何も無い空中からティーセットが出てきた。
驚いた俺はどういう事か説明してもらおうとしたが、
「優希はえぇのかえ?」
と言ってきた。俺の心を読んだのか、いきなりティーセットが出てきたことを聞くのと、優希について聞くのとどちらかにしたいらしい。優希より大事なものなんて俺にはないので、大人しく首肯した。
手馴れた動作でカップに紅茶を入れていき、片方をこっちに渡してきた。どうもと言い一口飲んでみたが、想像以上に美味しかった。そんな反応を見てか、少女は言ってきた。
「どうやら、口にあったようじゃのう。我の生まれ故郷の味なんじゃが、今まで誰も美味しいと思ってくれなくて少々傷ついていた所じゃから、その反応は嬉しいのう」
その後ひとしきり感傷に浸ったあと、少女から切り出した。その間に俺は半分以上紅茶を飲み干した。
「さて、その問題の女の子じゃが、我にも今何処にいるかはわからん」
「はあ?なんだよそれ。んじゃ、お前がここに俺を呼んだ理由はなんだよ!」
こいつは一体何がしたい。今はそんな遊びに付き合っている暇はないと言うのに。
「人の話は最後まで聞くのじゃ。よいか?今のお主がそのままこの船の長、墜落星に挑んだところで勝てる見込みなど万に一も無い。ここまではよいか?」
確かにここの船の長ともなれば、かなりの実力者だろう。事実さっき対峙したナイフ男に勝てる自身はほとんどない。
「ああ、そうだな。でも、それで諦める訳には行かないんだよ!」
「うむ、わかっておるのじゃ。だから、人の話は最後まで聞くのじゃ。そうやって先走らんで良い」
そこまで言って一息付き、また話し始めた。
「まあ、そこでじゃ。お主に1つ、贈り物を授けようと思うのじゃ。聞けばお主、魔法剣士だそうじゃな?しかし、今お主は一振の剣すら持って居らぬではないか。そこで我が贈るのは剣じゃ。それも我が持っている中で最高級のものを授けよう」
ここまで聞いて、正直魅力的な提案だと思った。でも魅力的すぎて裏があるんじゃないかと逆に疑ってしまった。
「魅力的な提案だが、そんなこと迄して一体お前になんの利がある?」
「もちろんあるのじゃ。しかし、それはまた時が来たら話す。故に今はただ黙ってつるぎを受け取り、墜落星を打ち倒すのじゃ。きっと奴を倒すことこそが、優希を助ける1番の近道になるのじゃからな」
どうやら、自己の利益については話してくれないらしい。こっちもこれ以上無為な時間を過ごす訳には行かないので、素直に剣とやらを受け取ることにした。
「ではまず、剣を渡そう。銘は神剣クラウソラス。所持者の気持ちをそのまま切れ味に変換する代物じゃ。ただし気をつけねばならぬことが1つある。所持者がマイナス思考に傾いた時、こやつはただのなまくらになる」
要はこの神剣を持っている間は気持ちを強く持てと言うことだろう。実に簡単なことだ。
「どうやら、分かってくれたようじゃな。ではこれを渡そう」
そうして剣をこちらに渡し、また1つ言ってきた。
「それと墜落星は今この場所におる。気をつけてな」
「この場所にいる」と言われた時は警戒したが、次の瞬間、頭の中にヘリオス内の地図が浮かび上がった。そこには現在地、地球人のいる場所、罠、そして、墜落星と思われるものが映し出されていた。
もちろんこんな場所には行ったことがないので、さっきの人がなにかしたのだろう。
もしかしたら、これ自体が罠かもしれないが、そこまでする利点がない。
そして、ここまでしてくれた人に形だけでもお礼をしようと前を見た。しかし、視界に写るのは先程まで走っていた通路の壁。
もしや幻覚を見ていたのかと驚いたが、自分の右手に先程まで握られていなかった神剣がある事と、頭の中に鮮明に思い出されるヘリオス内の地図からあれは夢では無かったことを認識する。
だから、すぐさま墜落星のいる元へと走り出した。その時幾らか体が軽くなっていたような気がした。
そういえば学生の皆さんは学校が始まったのでしょうか?では1つ提案しましょう。国語の点数を上げるには小説を読むのが一番手っ取り早いです。
それだけで、ある程度の読解力が着きますからね。あと、漢字も読んだり、書けたりが出来るようになります。
おすすめとしては、最初は100頁くらいの小説が良いでしょう。その後徐々に頁数を増やしていき、最終的には500頁を苦もなく読み切れると良いですね。
そこまでくると試験中、文章を読むのが早くなり、その分問題に取り組めるようになりますよ?
無駄話が過ぎましたね。では来週も予定通り更新する予定なので、乞うご期待ください。
追記:数個の表現の訂正(2020/09/18)
維真と別れてからはずっと走っていた。逃げだとわかっていてもそうすることしか出来なかった。
そうしてある一つの部屋が目に入った。何の変哲のない扉。今までも通路を走っていて何度も目にしたのと全く同じ扉。こんな所で立ち止まっている場合ではないとわかっていながら、俺はその部屋にさも吸い込まれるかのように入った。
その中は真っ白な空間が広がっていた。
いや正しくは、部屋なのだが、まるでどこまでも続いているような錯覚を受けるくらい真っ白なだった。
その空間の真ん中にはテーブルと対をなすように置かれた2脚の椅子のみが置かれていた。そしてその椅子の片方に1人の少女らしい人が座っていた。
「乙女の部屋にノックもせず入ってくるとは、男として、、、いや、紳士としてあってはならぬ行為じゃの」
その少女が話しかけてきたので対応することにした。無駄だとは思うが若しかしたら、優希がいる場所を教えてくれるかもしれないからだ。
「普通ならそうだろうな。だけど、今は俺達はここに攻め入ってるんだ。これから殺す相手にいちいち礼儀正しく接しなくていいだろ?」
そう言ってその後言葉を続けようとしたが、それより前に少女が発言した。
「ほう。我を殺すと?じゃが、変じゃのう。殺すと言っておる割には全く殺気を放っておらんだろう?演技でももう少し上手くやってもらわんとなあ」
、、、恐らくだが、この少女は俺がこいつのことを殺さないことが分かっている。見た目通りの少女なら殺すと言っておけばなんでも言うと思ったのだが、どうやらこいつは違うらしい。だから、こう聞くことにした。
「はぁ。んじゃもういい。単刀直入に聞く。十日前にここに来たウィード星人の女の子はどこだ」
「まあまあ、そんな立ち話も何じゃから、そこに座って話そうじゃないか」
そんな焦らすようなことを言ってきたので少し強めに発言した。
「俺はそんな悠長なことをしている暇じゃないんだ!早く話、、、」
とまで言ったところでまたも遮られた。それは先ほどと同じような声によるものではなく、もっと鋭利なものによって。
それは刹那の出来事だった。一瞬彼女の体が明滅したかと思ったが、次の瞬間には俺の首筋にナイフをあてていたのだ。しかし、相手もこちらを直ぐには殺したくなかったのか、殺すことはしなかった。
「言うたじゃろう?そこの椅子に座れと。聞き分けのない子には、それはそれは痛い罰を与えねばならぬのじゃ。お主はもちろん嫌じゃろうし、こちらとしてもそれは望まぬのじゃ」
その言葉に首肯し、大人しく座ることにした。いつもなら素直に言うことを聞くのだが、どうやら自分が思っている以上に心に余裕が無いらしい。
座ったところで少女はテーブルを軽く2回叩いた。そうすると何も無い空中からティーセットが出てきた。
驚いた俺はどういう事か説明してもらおうとしたが、
「優希はえぇのかえ?」
と言ってきた。俺の心を読んだのか、いきなりティーセットが出てきたことを聞くのと、優希について聞くのとどちらかにしたいらしい。優希より大事なものなんて俺にはないので、大人しく首肯した。
手馴れた動作でカップに紅茶を入れていき、片方をこっちに渡してきた。どうもと言い一口飲んでみたが、想像以上に美味しかった。そんな反応を見てか、少女は言ってきた。
「どうやら、口にあったようじゃのう。我の生まれ故郷の味なんじゃが、今まで誰も美味しいと思ってくれなくて少々傷ついていた所じゃから、その反応は嬉しいのう」
その後ひとしきり感傷に浸ったあと、少女から切り出した。その間に俺は半分以上紅茶を飲み干した。
「さて、その問題の女の子じゃが、我にも今何処にいるかはわからん」
「はあ?なんだよそれ。んじゃ、お前がここに俺を呼んだ理由はなんだよ!」
こいつは一体何がしたい。今はそんな遊びに付き合っている暇はないと言うのに。
「人の話は最後まで聞くのじゃ。よいか?今のお主がそのままこの船の長、墜落星に挑んだところで勝てる見込みなど万に一も無い。ここまではよいか?」
確かにここの船の長ともなれば、かなりの実力者だろう。事実さっき対峙したナイフ男に勝てる自身はほとんどない。
「ああ、そうだな。でも、それで諦める訳には行かないんだよ!」
「うむ、わかっておるのじゃ。だから、人の話は最後まで聞くのじゃ。そうやって先走らんで良い」
そこまで言って一息付き、また話し始めた。
「まあ、そこでじゃ。お主に1つ、贈り物を授けようと思うのじゃ。聞けばお主、魔法剣士だそうじゃな?しかし、今お主は一振の剣すら持って居らぬではないか。そこで我が贈るのは剣じゃ。それも我が持っている中で最高級のものを授けよう」
ここまで聞いて、正直魅力的な提案だと思った。でも魅力的すぎて裏があるんじゃないかと逆に疑ってしまった。
「魅力的な提案だが、そんなこと迄して一体お前になんの利がある?」
「もちろんあるのじゃ。しかし、それはまた時が来たら話す。故に今はただ黙ってつるぎを受け取り、墜落星を打ち倒すのじゃ。きっと奴を倒すことこそが、優希を助ける1番の近道になるのじゃからな」
どうやら、自己の利益については話してくれないらしい。こっちもこれ以上無為な時間を過ごす訳には行かないので、素直に剣とやらを受け取ることにした。
「ではまず、剣を渡そう。銘は神剣クラウソラス。所持者の気持ちをそのまま切れ味に変換する代物じゃ。ただし気をつけねばならぬことが1つある。所持者がマイナス思考に傾いた時、こやつはただのなまくらになる」
要はこの神剣を持っている間は気持ちを強く持てと言うことだろう。実に簡単なことだ。
「どうやら、分かってくれたようじゃな。ではこれを渡そう」
そうして剣をこちらに渡し、また1つ言ってきた。
「それと墜落星は今この場所におる。気をつけてな」
「この場所にいる」と言われた時は警戒したが、次の瞬間、頭の中にヘリオス内の地図が浮かび上がった。そこには現在地、地球人のいる場所、罠、そして、墜落星と思われるものが映し出されていた。
もちろんこんな場所には行ったことがないので、さっきの人がなにかしたのだろう。
もしかしたら、これ自体が罠かもしれないが、そこまでする利点がない。
そして、ここまでしてくれた人に形だけでもお礼をしようと前を見た。しかし、視界に写るのは先程まで走っていた通路の壁。
もしや幻覚を見ていたのかと驚いたが、自分の右手に先程まで握られていなかった神剣がある事と、頭の中に鮮明に思い出されるヘリオス内の地図からあれは夢では無かったことを認識する。
だから、すぐさま墜落星のいる元へと走り出した。その時幾らか体が軽くなっていたような気がした。
そういえば学生の皆さんは学校が始まったのでしょうか?では1つ提案しましょう。国語の点数を上げるには小説を読むのが一番手っ取り早いです。
それだけで、ある程度の読解力が着きますからね。あと、漢字も読んだり、書けたりが出来るようになります。
おすすめとしては、最初は100頁くらいの小説が良いでしょう。その後徐々に頁数を増やしていき、最終的には500頁を苦もなく読み切れると良いですね。
そこまでくると試験中、文章を読むのが早くなり、その分問題に取り組めるようになりますよ?
無駄話が過ぎましたね。では来週も予定通り更新する予定なので、乞うご期待ください。
追記:数個の表現の訂正(2020/09/18)
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