運命には抗えない

あぶそーぶ

21話 アイドルである為に

 ーミレイsideー

 ミレイは、、、いや、まだ「ワタシ」だった頃、誰からも愛されなかった。両親や友達はいつも「好き」と言ってくれるもののそれでワタシの心が癒されることは無かった。

 多分、その頃からアイドルという物に憧れていた。あの大きなステージに立てば、多くの人から愛される存在になれると思ったから。

 それから必死に勉強した。昔、、、大体2000年代では可愛ければアイドルになれたらしいけど、今ー3560年は、そんな甘くない。

 今は、可愛さなんてみんな持ってる。整形はもちろん、遺伝子操作なんかでもいくらでも可愛くなれる。だから、可愛さは大して重要じゃない。大切なのは、頭の良さ。

 勉強出来なければ今という時代は生きていけない。だから、勉強する必要がある。

 そうして、8歳から8年間勉強を続けて、16歳やっとアイドルになれた。底辺だけどこれから頑張ろうという気持ちで溢れていた。

 それから、4年。どれだけ頑張ってもアイドルとして有名になれなかった。ファンはいたけど、同期で始めた子達はワタシの何倍ものファンを抱えていた。

 原因なんて分からなかった。次第に収入も減っていき、気がついた頃にはワタシは、その身を売られていた。

 それさえ気づかなかったのだから、相当衰弱していたんだと思う。その時ワタシを買っていったのが、墜さん。その時言われた言葉は一生忘れないと思う。

「もう一度アイドルを目指さないか?」

 その言葉にこくりと頷いたワタシを墜さんは買った。

 それからは流れるように時が過ぎた。まず、口調を治された。確かこの時に「ワタシ」は「ミレイ」になった。次に体を弄られた。

 別に変な意味ではなく、所々に機械を埋め込まれた。たとえば、脳の回転を早くするチップだとか、開脚をスムースに行うための関節だとかを埋め込んだ。所謂サイボーグと呼ばれる存在に私はなった。

 サイボーグとなった私の外見は、金髪で長めのツインテール、目はパッチリと開いていて瞳の色は緑色だった。また、身長は縮んでいて、164cmあった身長は150cm程まで低くなっていた。

 今までの外見からすれば驚くほどの美少女化たった。

 そうすると驚くくらい踊りが軽やかになった。今なら、どれだけ激しい踊りをしても苦にならないと思えた。

 そうやって、ミレイは有名になれた。まあ、有名と言ってもこの探索隊の中ではなんだけど。

 それでも嬉しかった。たくさんの人たちから愛されるの。その為にはあと1歩必要らしい。それがこれ。

「それじゃあ!初めに!特別ゲストちゃんに死んでもらうよー!」

 呪歌玲音を殺すこと。






 ー呪歌 玲音sideー

 なんだか、彼女と私は似てると思う。これまで一生懸命頑張ってきたもの同士、、、かもしれない。でも、なんでここまで違うんだろう。

 でも、そんなことも考えていられない。檻と言っても一辺100メートルくらいの正方形の面積があるので、幸い動きにくいということは無い。捕まっているのには変わりないけど、、、。

「特別ゲストに死んでもらおー計画!第1弾!ゴリーラ!さぁ、いってみよー!」

 ミレイが叫んだ後、檻の中の天井の1箇所が割れ、ゴリラが落ちてきた。恐らくあれがゴリーラと呼ばれるものなんだろう。見た目は完全にゴリラ。なら、これで行ける!

「、、、氷結ひょうけつ

 これは氷をひも状にしたものを相手に絡みつかせる魔法。もちろん禁術指定の魔法ではなく、一般人でも扱うことの出来る魔法。

 何故こんな簡単な魔法なのかと言うと相手がゴリラだからと、初めから強い魔術を使ってこちらの奥の手を見せたくないのである。

 そして、こちらの読みが当たったのか、そのままゴリラ、いやゴリーラは動かなくなった。それを確認するや否や、

「おおー!第1弾クリアおめでとう!続いて第2弾!ヒューマノイドMk-IIIマークスリー!」

 そうしてまた天井から人型のロボットが降ってきた。しかし、そのロボットの容姿は今まで私が見てきたロボットとは全く違っていた。

 それまで見てきたのは所々が角張っていたのだが、そのロボットは角張っている所がなく、表面が滑らかになっていた。

 そうして、私は一瞬でもそれに魅入ってしまった。その隙が命取りとなった。

 私に向かって勢いよく突進してきたのだ。それに対応出来ず、もろに体に受けてしまった私は、受身も取れず地面に叩きつけられてしまった。

「ぐ、うぅ、、、」

 思わぬ苦痛にうめき声が出てしまう。でも、ここでやられる訳にはいかない。相手はロボットだ。なら、思考回路がショートするくらいまで温度を高くすれば停止とまではいかなくても、動きを阻害することくらいは出来るだろう。

「、、、煉獄れんごく、、、っ!」

 これは、禁忌に指定されてる魔術。コントロールさえ間違わなければ、安全に使える類の1つ。

 そもそも何故「禁忌魔術」があるのかと言うと、仲間はもちろん自らの命までとってしまう危険性があるから禁忌魔術といわれる。

 そうして放った煉獄は想像通りヒューマノイドとやらだけを焼いた。いや、焼き尽くした。予想を超えたできに少々驚いたくらいたった。

「ひゅ〜♪驚いたよー。まさかヒューマノイドまで倒しちゃうなんてぇ。それじゃあそろそろほんきでいくよー!殺戮者、キラーノイド!」

 今度は床から出てきた。そして、その容姿も今までの敵とは全く違っていた。まるで今までのは序の口だと言わんばかりに。

 それは人の形をしていながら、腕は4本あり、それぞれが違う武器を所有していた。こちらから見て右上はボウガン、左上はライフル、右下はロングソード、左下は、、、鉄の棒を有していた。

 何故、鉄の棒?と思ったけど、凶器であることに変わりない。殺傷度、危険度から見てそれは1番低いことに変わりはない。よって、ライフルから無力化することから始めることにした。

「、、、電撃でんげき

 私達の住んでることろの銃と構造が同じなら、中の火薬が電気で暴発するはずだ。

 それは予想通り発現した。余程火薬の量が多かったのか、思いのほか爆発音が酷かったけど、、、。それでも悠長にしている訳には行かない。なぜなら、既にキラーノイドはボウガンをこちらに構え始めてるから。

 その射線を予測し、その範囲に入らないよう注意しながら、次に発動する魔法の詠唱を始めた。

 次に放つ魔法は爆氷焔ばくひょうえん。禁忌魔術の中でも危険な方の部類。何故これが危険なのかと言うと、燃えた氷が広範囲に飛び散るから。

 でも、工夫すれば一定方向に向かってのみ発動できる。それは爆氷焔の周りを炎壁で囲うことでできる。しかし、全部覆ってしまっては敵に当たらないので敵がいる方向には炎壁を発動させない。

「、、、爆氷焔っ!」

 まず最初に爆氷焔だけ発動させ、それが飛び散る瞬間、

「、、、炎壁」

 予想通り魔法を発動させることが出来た。そうして、倒したかどうか確認しようとした時、全身が焼けるような痛みを感じ、その後すぐに意識を手放してしまった。






 ーミレイsideー

「おー、勝負ありだねー。さぁて、審査員の観客のみんなー!今回の勝者は誰ー?」

「「「ミレイちゃーーーん!!!!」」」

 ある程度予想していた答えだったから、こちらも定型文で返すことにした。

「ありがとーー!!ミレイもそう言って貰えて嬉しいよー!それじゃあ、みんなのお楽しみ!特別ゲストの解体ショー!はっじまっるよー!」

「「「うおおぉぉぉぉ!!!!!」」」

 いやぁ、でもこんな簡単に殺られちゃうなんてね。あの時ライフルを壊したのにはちょっと驚いたけど、そのおかげで天井から降りてきたもう一体のキラーノイドの存在を秘匿できちゃったしね。

 まあ、全部済んだことだし、今度はどんな声で鳴いてくれるのかな?楽しみだなあ。






 壊れるのは一瞬

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コメント

  • とわさん@魔王

    更新お疲れ様です!応援してます!!

    1
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