運命には抗えない

あぶそーぶ

18話 訓練③

 ー立花 優希sideー

 今日で零達と別れて5日目。

 特にこの期間何も無かった。

 いや、元々、そういう事だった。

 5日前、つまり、零達と別れたあの日、私は偉いと思われる人の所に連れていかれた。なんでもこの後の私の処遇に関して話があるそうだ。

 気づいた人もいるかもしれないけど、私の口調は元に戻っている。

 そんなことは置いといて、私の処遇は「んまあ、1週間後に決めればいいでしょう。それまで牢獄にでも入れておけば問題も起こさないでしょう」という事らしい。

 正直直ぐに奴隷のような扱いを受けると思っていた私は戸惑ったけど、そういう事なら都合がいい。丁度零との約束とも時期的に合う。

 そんなこんなで、今日を迎えた訳だけど、意外な人物がやって来た。

「やあ、元気してるかい?」

 その言葉にいかにも不機嫌という表情を見せると男は、

「おー、おー、怖い怖い」

 と、わざとらしく両手を上げながら言った。ついでに敵意は無いことを示したかったのだろうか。それでも、私は警戒は解かなかった。

「今日はそんなことを話に来たんじゃない。私と共に来い。今はまだ信用できないかもしれんが、いつか必ず信頼させてみせる。だから、ついてこい」

(誰が、言うことを聞くものか)

 そう、思った。ただ、もしこの男が地球人とかいう人たちの中で重要な立場の人間だとしたら,,,

 計画の遂行のための情報を得られるかもしれない。それまで利用するのもいいかもしれない。

 とそこまで考えた私はこう答えるのだった。

「わかったわ。ついて行ってあげる。でも、妙な真似したら、容赦しないわ」

「ああ、分かってるさ」

 そう言って彼は、牢獄の鍵を外し、私に付けられていた手錠を外した。そして、私はこう問うた。

「それで、あんたの名前は?」

「え?ああ、そうだね。、、、いや、いいよ。どうせこのあとすぐ別れるからさ」

 腑に落ちなかったけど、仕方ない。そういう事なら、深く詮索しなくてもいいかな。人の名前なんて覚えるだけ無駄だし。

 こうして、私は牢獄から抜け出した。抜け出した事で騒ぎになったみたいだけど、それは昼過ぎの話。






 努力、それはいつの時代でも才能を補うためのものであった。凡人は常に努力をし、天才達にたどり着こうとした。だが、そうしたことで天才達を超えるものなど天文学的確率よりも低い確率、つまり、ほぼ不可能という代物であった。

 それでも、天才達と渡り合いたいと、隣にたちたいと願うもの達はいる。この者達こそ、ウィード星で言う終魔学園学生の最底辺に位置するもの達である。

 彼らの努力は天才はもちろん、凡人にも理解されるものではなかった。

 さて、そんなこんな、ここに1人凡人の少女がいる。名を呪歌じゅか玲音れいん。容姿は、ウィード星では珍しい紫色の髪をしていて、長さはセミロング、身長は低く、少し背の高い小学生と言われれば納得できるくらいの体型。彼女は凡人でありながら、終魔学園修学部2年禁断魔術研究学科に所属していて、また、その学科の首席でもある。

 しかし、凡人故に努力をしなければ、成績を維持出来ない。それも首席となれば、難易度は格段に上がる。故に彼女は「遊ぶ」という行為に興味を示さず、ただひたすらに努力することだけに専念していた。

 閑話休題それはともかく

 今日も彼女は努力する。しかし、その努力の方向はいつもと違っていて、それでいていつもより真剣だった。

 それは、軍艦での誘拐事件(終魔学園の学生がそう呼んでる)から3日後に、ある生徒からの指示によるものだった。簡潔にまとめると「あの軍艦に攻めるから、力を貸して欲しい。すでにウィード星屈指の軍隊には協力を付けてある。君の魔術にしか出来ないことをして欲しい」ということだ。

 その提案に玲音は「、、、正気なの?」と聞いた。それに対し、頷きを返した。

 そんなやり取りがあり、彼女は自分の務めを果たすため、もあるが、彼女自身少々思うところがあったようで、これまで以上に魔術研究に励んだ。いつもなら「危険だから」という理由で自制していた実践での魔法発動もする程に。






 ー音無 零sideー

「やっと、出来た」

 そう呟き、自分の打った魔法の威力を確認し、嘆息した。

 優希から教えてもらった古代魔法、その全てを放てるようになった。しかしそれは放てるようになっただけであって、完全なものでは無い。

 今日で6日目。俺が訓練に身を投じることが出来るのは後1日。やることはこの古代魔法をできる限り手中に収めること。

 そう言えば、優希は古代魔法ではなく、古代魔術と呼べと言っていたな。何故かは知らないけど。

 そうして、7日目が過ぎ、8日目。この日も午前中は訓練をした。午後からは、会議が始まる。何を議論するかは言うまでもない。軍艦へ攻め込むための会議だ。

 集まったメンバーは、俺、維真、呪歌を主とした終魔学園の中でもエリート学生と優希の父親とその率いるウィード星最大勢力の軍隊の指揮官である。

 優希の父親の名前は立花たちばな英樹えいき。髪は金髪で短く切りそろえ、筋トレわしているのか全身の筋肉は引き締まっている。指揮官の名前は童奈どな紫紀しき。呪歌と同じ紫色の髪で長さはロング、呪歌と親子と言われれば納得出来るくらいの容姿である。事実自己紹介されるまでは親子かなと思った程だ。

 自己紹介が終わったところで、会議は進行した。クラス会議などでは変態発言しかして居ない維真も今日ばかりは真面目に参加していた。

 まとめると、攻め込むのは明後日。これは最初から決まっていたことだ。あえて、この場で確認した。

 2つ目に、グループ分けだ。これもすんなり決まった。1つは敵を陽動するグループ、もう1つは優希を救出するグループだ。救出するグループに俺、維真、呪歌、英樹さんと何人かの軍人を配置し、それ以外を陽動に回した。

 最後に、作戦終了後の集合と脱出。作戦が成功(考えたくないが)もしくは失敗した場合の集合場所は軍艦に乗り込んだ場所とした。何故港ではないのかと言うと、まず、警備があること、脱出時に追っ手が直ぐに来れてしまうこと、そして、錯乱である。

 軍艦に乗り込む時はいくつかのグループに別れ、シャトルにのり、攻め込むことになった。そうすることで、相手側が混乱に落ちやすくなるかもしれない。正直これにはあまりかけてないけど、、、。

 そうして、その他細かいことも決め、3時間以上にも渡る会議は終了した。

 絶対、この計画は成功させる。その為に、今はしっかり休もう。作戦中に不手際を起こす訳には行かないからな。






 今回ギリギリ間に合いました。現在3/8の21:30です。あと2時間半で公開ですね。

 誤字などありましたら、報告よろしくお願いします。

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