五つの世界の端々で

とっとこクソ太郎

戦闘 VS魔王 2

「あれ?バレた?」
「バレるも何もミソラより小さいではないか?しかも魔力まで失って…まぁそれは良いかっ!」
普通に亮太に気を取られた瞬間を狙い、水の球が頭の横を掠める
水単体なので避けるまでも無いが反射的に身体を逸らした瞬間美空が顔目がけて拳を放ってきたのを認識し、片手で受け止めようかとした時美空の手の中に何かが握り込まれているのを見つける
いけない。咄嗟に掴もうとした手を自身の後方に弾く
その瞬間美空の指の間からバッと氷柱が咲く
「面白い技を使うのう。しかも女性の顔に傷をつけようとするとは中々の思い切りじゃな」
「手加減してると負けそうなんで」
「そちらの者との連携も悪くない」
「いいいいきなり失礼しました魔王様!私片瀬由美と申します!」
「謝る事では無い、戦いとはそういう物じゃ」
「そいつ関根の嫁だぞーー。あんまりいびるなよーー」
「ほほぅ…やるな貴様」
「余計な事言わないでください川元くん!!」
「否定しなかったな?皆さーん!リア充です!リア充がいます!リア充は死ね!!」
「どっちの味方ですか貴方は!?」
ギャーギャーと言い合い、棒を振り回し、キーキーと喚く。一界の女王を挟んで。
「えーっと、失礼します!」
「ムッ」
ずっと背後にいた美空から裏拳が飛び、屈んで躱すと独楽の要領で遠心力を加えた左廻し蹴りが眼前に迫る
相殺出来ると見越し掌底で脛の骨を砕こうと手を翳すと、掌と美空の足の間に透明の石が1粒落ちてきたのが目に入る
(まずい!)
カウンターを取り止め突き出した手で部分的に黒い穴を生み、美空の足をその穴に通す
「非リア充の気持ちを少しは考えて生きろやリア充共…いたッ!?」
「あっごめん」
黒い穴がもう1つ亮太の真横に現れ、美空の足だけが亮太を捉えて太腿辺りに廻し蹴りが炸裂する
「いってぇぇぇぇ!!何!?足取れた?生えてる!?」
「別に取れてはおらんぞ。場所を移動させただけじゃ」
「なるほど、てめぇ美空師匠様に向けてどういうつもりだお前は!?」
「私悪くないわよ!魔王様が何かワープさせたんだもん!!」
「クソがやらしい肉付きしやがって」
「やっ触るなアホ!」
「実は1回触ってみたかったんだよこの…この部分を、ね。えー…ニーハイソックスのー…太腿のお肉の乗ってる部分…ね」
「ヒッ!?触るな!!」
「モモッ!」
膝から先だけのスナップを使い器用に亮太の顔を蹴り飛ばし穴から足を引き抜くと体勢を立て直した魔王が美空の顔を鷲掴み砂浜に叩きつける
それほど固くない地面でダメージを負うことは無いが突然の事で受け身も取れず視界も半分以上遮られ、起き上がることは叶わない
「中々悪くなかったぞ今のは。この小石のような物は魔石か?随分と器用な事が出来るのだな。亮太の入れ知恵か」
「お褒めに預かり光栄です…!それは亮太の父親に教えてもらいました!」
顔を抑える手を離させようと精一杯の力で魔王の手を掴むが離す気配は一向に無い
純粋な力の差があるようで、美空の必死の抵抗はまるで意に介していない
それどころか空いた手で美空の使う小石を拾い上げじっと見つめている
「良樹の教えか。不器用なくせに面白い事を思い付く」
「亮太よりよっぽど頼りになる人ですよ…っと!」
「ぬ?冷たいではないか」
「ぐぅぅぅ…!!」
魔王の手が凍るように美空が魔力を流すとパキパキと凍り始めるが、魔力操作に集中出来ないよう更に抑えつける力を強める
「どれ、そろそろ辞めておくか。海の水嵩も上がってきた」
今の今まで砂と貝殻の破片しか無かった美空の背中がじわりと湿り始めており小さく水が溜まってきていた
「むしろ好都合ですよ…」
抑えつける腕から手を離しザスっと砂と水が混ざった地面に手を触れる
「何か打開策を思いつい…」
思いついたか?と続く言葉が出る前に力いっぱい美空から飛んで離れると、その瞬間大量の氷柱が美空を覆い囲むように地面から聳え立つ
少しだけ腕を掠め傷を付ける事が出来たがそれでもダメージとは言えず、しかし状況の打開と仕切り直しと言う意味では充分及第点を与えられる
「うん、それで良い」
美空に蹴られた鼻を擦りながら亮太が満足気に呟く。誰に聞かせる訳でもないが手の下の口元が大きく緩んでいる
「美空!大丈夫!?」
「ありがと由美、助かった」
「ふむ…」

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