五つの世界の端々で

とっとこクソ太郎

魔人の憂鬱 10

「安心せい、この後はカー君とデートの予定じゃからお前には迷惑をかけん」
「それは良かった!さぁどんどん食べてくださいね!朝食は1日を始める大事なエネルギーですから!さぁさぁ!」
「急に元気になるのやめろや」
「元気なのはいい事じゃ」
「お前のせいで元気吸い取られてんだよ!?」
デートとか聞いてない、とは言わない
無視されるのが分かってるから
何度目か分からない溜息を吐いて観念し、残りの食事を口に放り込む
試行錯誤を繰り返し、テーブルを多少汚してはいるが魔王も朝食を終えた
時刻は9時半
「カー君、そろそろデートしよう」
「どこで覚えたそんな言葉…まだ早いから少しゆっくりしとけ」
「ふむ?なら大人しくしていよう」
ソファにだらしなく座り、昨日のゲームの続きを開始するカライドの横にくっつくように座り込む
面倒くさいので突っ込まずに受け容れると興味深そうに画面を見つめてくる
魔界にこう言った娯楽は何も無いので気にならない訳が無い
「何か魔王様とカライド、兄妹みたいですね」
「兄妹同然で育ったからな。幼馴染みなのじゃ」
(亮太が聞いたら血の涙を流しそうだなぁ)
関根は食器を洗いながら2人の様子を観察する
邪険に扱ってはいるが本当に嫌いではないらしく、カライドがただのツンデレに見えてきて少し面白い
そんな折、ふと窓から外を覗くと快晴にも関わらず上から雨が滴っているのが目に入る
「今日は珍しく朝から修行か」
建物の屋上は軽く運動が出来るスペースがあり、時々見習い魔術師の2人が師匠に稽古をつけてもらっている事がある
その師匠と言うのが先日帰還を果たした川元亮太その人であり、弟子の見習い魔術師が由美と美空である
シャーッとカーテンを閉め、魔王の視界に入らないようにさり気なく阻止
亮太が絡むとカライドが余計に面倒くさい顔をするためのご主人様からの計らいであった


「カー君、此奴めっちゃ苦労しそうな顔してる」
「小早川秀秋か?そんな風には見えないぞ?」
「何となく思っただけじゃ」
「ならこいつは?松永久秀」
「爆死しそう」
(侮れない…)




















ちなみに屋上では


「違う!下手くそ!2年間何してた!浮気か!オレと言うものがありながら浮気してたのかお前らは!えぇ!?何とか言えや!」
「うるさいから亮太静かにして」
「うるせぇ!下手くそ!」
「川元くん、もうちょっと分かりやすく説明を…」
「片瀬ちゃんは水の鞭にキレが一切ない!あと目が優しすぎるからもう少しゴミ虫を見るような目でオレを見てください!」
「私は?」
「論外だ。魔術師らしくない。物理で殴ってくるだけじゃん」
「それに負けてんじゃん」
「ほっとけじゃん」
ビショビショに運動服を濡らし、逆エビ固めを美空に極められボロ負けのまま亮太がバチバチと屋上の床を叩く
師匠らしく稽古をつけてやる。と朝から張り切ってみたが返り討ちにあっているにも関わらず本人的には駄目駄目らしい
「接近戦で勝てるならそれで良いぜ?距離とって攻められればただの的だし」
「ミリーにはそれで勝てたでしょ」
「あんなもん偶然だし本気のミリアには関根も追いつけない」
2ヶ月前
定期テストで美空はミリアに勝っている
精霊をカミングアウトしたミリアは力を加減する必要が無くなったため、問題なく勝てるラインの実力を発揮したがなんとそれで敗北していた
「良いかよく聞けチビ、オレが教えたのは身の守り方と魔力の制御。久しぶりに会ったお前の戦い方は攻め一択でまともに守りが出来てないだだだだだだだだ!?」
逆エビ固めがシャチホコ固めに近付いていく
「私よりチビが偉そうに」
「あはは……」
以上が彼女らの日常の一幕
場所は再び魔人達に戻る

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