五つの世界の端々で

とっとこクソ太郎

魔術師舐めんな 12

人だかりの間にはうずくまる高井
足首からは血がとめどなく流れていた
足首を切り落とされなかっただけマシだ
「ぐぅぅぅぅぅ……!!」
「ホントすまん。ウチのが無茶をした」
「申し訳ございませんでした」
「何者だその女ァ!?」
「あーはいはいとりあえずそんだけ元気あるなら大丈夫だな。どいてどいてー」
反省の意味も込めてミリアをうつ伏せに床に寝かせる
ピクリとも動かないその姿勢はかなり面白い
「ねぇ亮太く〜ん?これどうすればいいの〜?」
いつの間に来ていたのか、高井の側にはリムと健治
出血を止めるため無理矢理焼いてくれたらしい
「血は止まった。腱が切れてる」
「ん、サンキュ。片瀬ちゃんとその仲間達!ちょっとおいでー」
「ここにいますっ」
声をかけると集まっていた生徒の半数ぐらいが医療班の生徒のようで2人の女生徒に支えられたまま片瀬ちゃんが近寄ってくる
「これ集まってんのみんな水属性?」
「全員ではありませんがおおよそは。数名は進路で医療関係を希望している子です」
「なるほどね。ちょっと見といて」
返事は待たずに高井の足に手を触れる
水属性特有の治癒の魔術
単純な話魔力を患部に注ぐ
細胞が活性化され傷口はふさがり、損傷した箇所は痛みを伴わず治療が可能
パックリと開いた足首の傷はみるみる癒えて行き、追加で焼いた皮膚はそのまま残しておく
理由は2つ
ひとつは治癒の魔術は消費が非常に激しい
銃弾で打たれて空いた胴体や今回の様な深い傷を治すと普通の魔術師なら倒れてしまってもおかしくないから
もうひとつは人体が魔力に甘えて自己治癒力の低下を防ぐため
風邪薬は風邪を早く治すためや辛い症状を緩和するための物
でも絶対に必要な物でもない
何故なら人間は自分の身体で風邪の菌と戦う能力が元々備わっているので、今すぐどうにかしないとまずい傷じゃない限りは最低限を施して後は経過観察をすると自分で決めている


「はい終わりっと。もう痛くないっしょ?」
「嘘だろ……?」
「嘘じゃねぇよ。オラ立て」
綺麗さっぱり傷口の消えた足をパシンと叩く
一瞬痛そうな顔をしたが痛いわけがない
信じられないと言った顔でこちらを見て恐る恐る立ち上がった
もちろん、立てないわけがない
おおっと小さく歓声があがる
「治療完了。良いかい?全部治しちゃ本人のためにならないから、大急ぎで治療する必要がない怪我は残してもいい。人間は生きてる限り自分で治せるように組み立てられてんだ」
フムフムと言った感じで片瀬ちゃん達が頷く
「まぁ一応ちゃんと動くかどうかと健治がやってくれた火傷の処置は簡単にやっておいた方がい、い、ん、だ、け、ど…」
誰に頼もうか
正直誰でもいいが大人数だと却ってお互いの邪魔になるし
「川元君!高井君!だだだ、大丈夫ですか…?」
ひょっこりと間から委員長が顔を出す
「おー委員長!丁度いいところに!高井歩けるな?リムと委員長と一緒に保健室にGOだ」
「お前何者だ?何故本気でやらなかった?」
「やだなぁ高井、オレ本気だったよ。まぁあの状況から負けるとは思わなかったけど勝てる気もしなかった。そんだけかな」
「おい、ふざけるのも大概にーー」
「はぁいそこのお兄さん?行くわよ〜?」



コメント

コメントを書く

「コメディー」の人気作品

書籍化作品