五つの世界の端々で

とっとこクソ太郎

4人集まれば 6

上井は柄を握って空中で姿勢を制御して由美を捕まえている触手に狙いを定めている
が、姿勢を崩していたその一瞬を狙って死角からの攻撃に対応出来ず弾き飛ばされる
「健治くん!」
リムが健治の後を追いかけて駆け出し叩かれた勢いのまま地面に接触する直前に抱きとめる
「リム!」
「大丈夫よ〜」
力の方向を変えガリガリと音を立ててダメージを阻止する
良かった、大したダメージは無さそう
しかしよく見ると受け止めたリムの足から赤い液体が流れている
人1人受け止めてゴツゴツの地面の上を滑ればそうもなる
上井もすぐ復活するだろうからその間だけでも私が!
「やあっ!!」
サッカーのボレーシュートの要領で石を2つ同時に爆発させる
上井とリムに迫っていた触手を払い、攻撃をすり抜けてきた触手を徒手で弾く
「美空っ…!」
片手でスカートを押さえた由美が水の球をいくつかこちらに放ってくれた。なんとかそれに一瞬触れて氷の礫にする
「助かった」
「あとよろしく!」
そうこうしている内に上井が立ち上がって再び空中へ躍り出る
間に合った…
これ以上は邪魔になる
私が下がろうとすると左足が地面に突き刺さったようにその場で転んでしまう
「っ!?」
「美空ちゃん!!」
こちらに手を伸ばしてくれるリムが逆さまに見える
頭と手を固い地面に打ち付け鈍い痛みが視界を曇らせた
地面から離れなかった左足に加えて右足の自由も効かなくなりどんどんリムが離れていく。
何とか私の手を取ろうと懸命に手を伸ばしてくれるが頭を打った衝撃で思うように動けない
しかもかなりの速度で引っ張られているようでこちらに気付いて剣を振り下ろした上井が私とリムの間に飛び降りてきた
「私に当たったらどうするつもりよ…」
ガンガン響く頭痛を堪えて精一杯のツッコミを入れる
血が流れてるのかちょっとだけ赤くなった視界の向こうで珍しく上井が悔しそうな顔をしている


ふと身体に擦り付けられていた地面の痛みが無くなったかと思うと世界が逆向きにひっくり返る
あ、由美が見てる景色ってこんな感じかぁ…
スカートおさえようにもうまく手に力が入らない。倒れた時に痛めちゃったかな
「美空っ!美空っ!!」
由美が叫んでるけど頭痛となってるだけで何も出来ない
と言うより頭痛いから静かにして欲しい


どうも動けないなぁ…
これからどうなるんだろう
食べられる?千切られる?それとも思いきり叩きつけられる?
せっかく亮太が帰ってきたのに
死んでもいい理由が無くなったのに
ミリーと亮太が仲良くて、そのそばに私もいてご飯を食べて










「まだ死ねない!」




「別に誰も死ねと言ってないだろう。阿呆め」


刹那、引き上げられた身体が重力に従う
落下が始まる直線に、先程のリムと同じようにお腹を抱えられる感触と、静電気で髪の毛が持ち上がる感触
バチバチと何かの音が聞こえ自分を抱える手の人物を目線で追っていく


ミリーの物よりずっと短い片刃の太刀
上井と同じ水色のブレザーに銀の瞳と銀の髪
「なんだ岩村か…」
「助けられといてそれは無いだろう」


刃から滴る緑色の液体を払うと更に迫る触手を目にも留まらぬ速さで斬り裂く
「遅刻しといて偉そうなのもどうなのよ…あと静電気で髪の毛乱れるから早く離して」
「その二点に関しては全面的に謝罪する」
じわじわと後退しながら周囲を警戒する
タコの魔族も新しい痛みに思わず触手を仰け反らせる
「美空ちゃん!」
「大丈夫ー!」
必死に声を張り上げるリムに精一杯の返事をしてみる
安心したのかうなだれてるように見えるけど足痛いだろうなーアレ



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