五つの世界の端々で

とっとこクソ太郎

4人集まれば 2

さてどうしよう、と亮太は思案する
海面に叩きつけられてようやく乾いてきた髪を再び潮まみれにするのも触手に巻かれたり叩かれたりするのも嫌だ
剣を刺して落下を止める
無しだな。壁にはまず多分刺さらない
魔族は遠すぎて届かない
海に入る
これが最善。達成出来ればそろそろ健治が攻撃を始めるから意識がそちらに向けられオレはターゲットから外される
その間に触手の間から下に潜り込んで核を探す




「これだ」






うんと頷き衝撃に備える
落下までおよそ20メートル
我ながら良く考えた
そう思ってぎゅっと目を閉じるが海面の衝撃が一向に来ない
「あれ?」
変だと思い目を開けると自分の右足に何かが巻きついているのが分かる
それは緑色の触手であった
「あちゃー」
ペチコーンと額を叩きやられたぜと言った表情をした次の瞬間、遊園地のアトラクションのように大空に舞う
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァ……」
「あ、大丈夫そうですね」


亮太の無事を確認したミリアは落下が始まる前に迫り来る触手を何度も斬りつける
「無限に出てくるわねこれ!」
空中で戦うミリアに対し美空は棘を大量に生み出して自身を守っている
由美は手も足も出ず牽制だけで避けていたのに対し殴る蹴るで払う辺り自衛は出来るようだが、それすら必死になっているのであまり長時間持つようには見えない
「やっぱりソラは下がってください!今のあなたには危険すぎます!」
「…ァァアアア゛ナイスミリア!オブッ」
叫びながら落下してきた亮太を受け止め陸地に投げつける
起き上がるまでの間美空が亮太を跨ぐようにしながら周りに目を配る
「早く魔術使ってよ!」
「いや聞いてくれよ美空、今オレってば魔力無いんだよ」
「あぁ!?」
涅槃像のように寝そべってケラケラ笑うが頼みの戦力が1番のお荷物だと判明して女らしさの欠片もない叫び声をあげる
「落ちながら見てたけどお前さっきから面白そうなモン持ってんな。1個くれよ」
「これはアンタが持っても意味無い!」
そう言いつつポケットから透明の石をまた1つ取り出して魔術を発動する
「ふむ」
よっこいしょ、と小さく呟き重い動作で身体を持ち上げる
後方から迫ってきた触手を左手の剣で弾くと振り向いて美空の右手を掴む
お互いの手の間には美空が持っていた透明の石がある
「えぇ!?」
突然の出来事に今度は女の子らしい可愛い悲鳴をあげる
「ギュッと圧縮した魔力かこれ?面白い事すんなぁ」
右手の中にあるものを感触で確かめる
「あ、いけるかも…」
「何?何!?」
慌てて振り払うように亮太の手を弾く
「ちっ違うの!嫌だったとかそういうのじゃなくて…!」
「何必死になってんだよ」
ポイっと口に石を放り込む
「えっちょっと!食べ物じゃないわよ!?」
「だろうな」
ゴクンと飲み込む。味はもちろん無味
「やっぱおいしくねーわ。でも」
グッと目を閉じて全身で胃に落ちていった石を意識する
溶けていくような感覚とそれが全身に広がっていく感覚
「よし!」
ハッと目を見開くと前髪が一房赤く染まっている
「私の魔力を…?」
「そそ、吸収してみた。案外出来るもんだなー」
指先で空中に円を描くと氷柱が数本現れる
「そらよ!」
ビッとタコを指差すと氷柱が全て矢のように飛んでいく
外側についた目に1本が刺さり緑色の液体が吹き出す
「健治!!」
その部分を確認した健治が上空から剣を懐に構えて弾丸のように突っ込んでいく

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