五つの世界の端々で

とっとこクソ太郎

夕日の似合うあいつ 6

「この調子で行けば健治さんだけでも行け…なさそうですね!」


大部分は健治の炎で文字通り焼き殺していてもその炎に取り込まれず羽音を立てながら迂回していた魔族にミリアの大太刀が突き刺さり、不気味な液体を撒き散らしながら海面に落下していき、やがて動かなくなる
ヒュンと刀身に付着した体液を払い、身体の右半身に隠すよう大太刀を構え直す
続々と飛び出しては健治に襲いかかろうとする魔族を斬り倒し、その度に構えを直す
身体に染み付いたその構えは心を鍛えるために始めたもの
父の方針でもあったが『この世界』に来て本当に役に立ってくれている
己の身だけでは無く忠義を尽くす相手を守るために私の剣術は存在する
いつしかそれはただ1人に褒めてもらいたいがために振るっていた
今はみんなが褒めてくれる
「ハッ!」
刀身が標的に当たる瞬間、息を止め握りしめる手に力を込める
柄を手前に引くイメージで刃を押し込み魔族を両断する
ミリア自身から見て左下5メートルほどの所にいる健治の周りを旋回するように動きつつ魔族に目を配る
健治も回避運動を取れば問題は無いのだが魔術の行使中に他に意識を取られればブレが生じ余計な被害を受けてしまうためミリアに全てを委ねている










ミリアが飛び出してきた10匹ほど倒したところで魔術の使用をやめて後ろを振り返る
少しだけ苦い表情の健治につられ振り返ると空間の歪みが自分たちの遥か後方で発生しているのが見えた
「陽動ですか!?私と健治さんを引き離して本隊での奇襲…!」
「急げ」
少しだけ語気を強めた健治がミリアを促すと一切の予備動作も無くミリアがUターンして陸地へ向かう
数字で表すなら約30秒
もし30秒以内に追いついたとしても人の住む土地に踏み込まれるとパニックは避けられない
「ソラ!」
「見えてるよ!」
歪んだ空間の向こうに見える赤髪の少女が手を挙げているのをミリアは確認し、援護のため飛翔に集中する

コメント

コメントを書く

「コメディー」の人気作品

書籍化作品