五つの世界の端々で

とっとこクソ太郎

始まる前に終わってるお話

私は
四季を知りません。
雨が降る、もしくは降らない
それだけは知っています
私は
海を知りません。
湖は知ってます。しょっぱい湖はありませんでしたから
私は
英語を知りません。
言葉の壁なんてありませんでしたから


私は
色んなことを知りません。


けど今は違います
色んな事を知ってます。


春はくしゃみが止まりませんでした
花粉症?でしたっけ。勘弁してほしいです。


一昨年の夏は海で真っ黒に焼けてお風呂に入る度に悲鳴をあげていました。


秋、食べ物が美味しい季節だと、美空ちゃんに教えてもらいました。でも私からすればこの世界の食べ物は何でも美味しいです。あ、ワサビは無理です。


冬はとにかく寒かったですね。お正月に風邪をひいてごめんなさい。振袖姿見たかったですか?


2回目の春
桜吹雪が舞っていましたよ。私には全て灰色に見えました。


2回目の夏
熱中症で病院に運ばれました。
苦しかったです。でもどうでも良かったんです


2回目の秋
すごく痩せました。由美ちゃんに泣きながら怒られました。
あなた達までいなくなるつもり?
ですって


2回目の冬
クリスマスに色んな人から告白されました
お正月には振袖を着てみました。綺麗だって褒めてもらいましたよ?


そろそろ3回目の春です。
マフラーも必要なさそうです。






あなたは今、どこにいますか?
私は今、ここにいます。














『では、3年生諸君はこれからの自分の進路をしっかり考えなさい。どの様な選択をしたとしてもそれは自分が選んだ道。悔いは残さない様に思いっきり遊んで、学んで…不純異性交遊に励んでくれ。以上、ワシからの言葉終わり!』


校長!それはいけません…


どうせこいつらに何言ったって無駄じゃよホッホッホ…






やたらと声のでかいおっさん
校長先生さんの話が終わりました。


講堂と言う密閉された空間で更にマスクをつけた私は息苦しさで少し気分が優れません。


「ミリー、大丈夫?」
「うん、ちょっと気持ち悪いけど大丈夫です」
「こういう所気が利かないよなあのおっさん」
「いつも通りだろ、使えないおっさん」


皆さん、酷すぎです。
まぁ事実ですけども
めっちゃ良い事言ったったわみたいな表情で壇上から降りていくおっさん、もとい校長先生は他の先生から怒られながら舞台袖にはけて行きました。


『はーい、んじゃ今日は解散。入学式に参列する生徒はちょっと残ってくれ。役割と段取りの打ち合わせをする』


壇上に置かれたままのマイクからツンツン頭の教師、佐久間先生の気だるげな声が響く
周りの生徒が立ち上がり、この後どうするとかどうとか話しながらゆっくりと人が居なくなり始める。


「さて」


そう言ってまず最初に立ち上がるのは茶髪の関根拓真さん
特に合図をする訳もなくそれに続くのは岩村宏昌さん、上井健治さん
「ミリアちゃん、終わりましたよ」
「ミリー、立てる?」
「はい、大丈夫です。ただの花粉症ですから、3年も経つと付き合い方も分かって来ます」
続いて私の手を取って立ち上がらせてくれる友人、笠木美空ちゃんとと片瀬由美ちゃん
「とりあえず帰ろうか。」


スカートの裾を直し、歩く態勢が整った所で関根さんに続く。


ミリア・レイドル
2年生になりました。












科学が発達した現代においてオカルトの類は非現実的


そう思ってる奴は時代遅れもいいとこだ。
世の中色んな奴がいる。
お前らがまさにそうだ
非科学の存在 『魔術師』


魔術師になるためお前らはここにいる。


体内で魔力を精製し、解き放つ
これは訓練さえすれば誰にでも出来る


ここではそんな当たり前の事を教えてるんじゃない


どんな物でも使い方一つでプラスにもマイナスにも働く
マイナスに働けば最悪死に至る。
そうならないために俺達はお前らに魔力の使い方を教えてるんだ


まぁ、最終の生き方まで決める訳じゃない


ここは学校で俺は教師
魔力、勉強、恋愛、友情、部活、ちょっと悪い遊び、けっこう悪い遊び
何だって教えてやる


んじゃ、今年も1年よろしく






「この学校の教師やっぱり駄目だな」
2-A
私達の教室は学校2階の1番東側にあたる
貼り出されたクラス分けの通りに移動するといつも通りのメンバーになった
1年の始まり
その最初の全体集会でクラスは4つに分けられる。
「しかしあのジジイ死ぬまで遊ぶ事しか考えてねぇな」
「どうせ後で怒られる」
口々にそうボヤくのはクラスメイト、もとい私の友人にあたる方達
1人は痩せ気味な銀髪の少年
1人は茶髪の体つきが逞しい少年
1人は私とあまり変わらない身長の金髪の少年


「ま、とりあえずそろそろ俺行くわ」
茶髪の関根拓真さん
「今日から1ヶ月魔界か。まぁ寄り道せずに帰って来い」
席から立ち上がる関根さんにそう言ったのは銀髪の岩村弘昌さん
何も言わず見ているだけの上井健治さん
「今回は俺も同行する。魔王と話をするからお前とは別行動だ」
窓に寄りかかっていたカライドは携帯の画面から目を離さず。
「見送りがてら全員で行ってみるか。夕方までに鳥の餌と一緒に準備しとけ」


岩村さんの言う鳥の餌
最終的にはそうなるけど実際は供物として扱う


供える意味も無いのに、いつもみんな同じものを持っていく
亮太さんの好きだった食べ物をお供えするために














丸2年
ミリーやアリスが人の世に住み始めてからの期間
そして、バカが消えて2年


「帰って準備しなきゃ。行くよミリー」


「そうですね。私もおにぎり用のご飯炊かなきゃです」


アタシ、笠木美空は桃色の髪の美少女、ミリアと同居している。


そっちの気があるとかじゃなくて友人として
とある事情でバカの家で家事をするために。
その「バカ」川元亮太とミリアは主従の関係にあたり家族と言っても差し支え無い関係で、亮太とミリアの生活力が酷すぎたからアタシが面倒を見ていた
正確には見られていたような気もするけど


「2年もどこほっつき歩いてんだかあのバカは」


家主を差し置いて高校生2人で暮らすには広すぎる
早く帰ってきなさいよ、バカ























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