異世界に転生されたので異世界ライフを楽しみます!

クロ猫のクロウ

◇第8話◇ 創造主エアリス


「して…ユーリよ」
「はい…」
「なぜこの王都に猪喰獣がおるのだ…?」
「えっと…契約の書き換えを…」

その場にいた全員が棹から刀を抜刀し、威嚇を始めた。

「止さぬか…」

その場を国王が納めてくれた。しかし、協力的と言う訳でもない…。威嚇を止めるための魔力は、どうやら俺に向けられた敵意だったようだ。

「貴様知っておるのか?契約の書き換えは重罪であるということを。そして、創造主は人には会わぬということを」
「重罪…?」
「それにどうやって会うつもりだ?」
「エルブレイドにてその姿を化現させます…」
「エルブレイド…。神の宝珠に触れるか…」
「俺には化現させるだけの魔力があります。神龍フェルブと契約した俺をどうか信じてください…!」

国王の頬が段々と落ちてきた。怒りに満ちた表情はそこにはなく、落ち着いた表情をしていた。
席から立ち上がると、ゆっくりと階段を降りてきた。

「創造主に…会わせてくれるのか?」
「はい…!」






「これが…」
「"創造神の加護"エルブレイド…。本来であれば精霊王ハルマリヤにしか扱えない代物だ…」

粗削りなダイヤモンドのような物がそこに浮いていた。その輝きは現世で見たどんな宝石よりも、ここで見つけたどんな鉱石よりも眩しく輝いていた。

「さて、どうやって化現するのだ?」
「どうやって…?」

ヤバイ…。そこまで考えてなかった…。
なんか呪文唱えたり?もしくは魔力を流し込むとか?いや、待てよ…。もしかしたら特殊な力が必要とか…!?

『私が教えます…』
「頼む…」
『両手をクリスタルへ…』

両手をクリスタルへ近づけた。すると、クリスタルは徐々に光だし、ゆっくりと回転し始めた。

『次にこう唱えてください』
「創造主エアリスよ、我が答えに応じよ。我は神龍フェルブと契約し者ユーリ、選ばれし特異点の柱となるべき存在。我が魔力を飲み、その姿をここに化現せよ…!」

なんか厨二っぽいな…。俺、そういうのとうの昔に捨てたはずなんだけどな…。

【余は創造主エアリス。特異点の柱となるべき者よ、お前の願いを聞こう…】

「この人が…創造主…」
【願いを言え…】
「あ、えっと…召喚獣の契約の書き換えを所望します…」
【召喚獣の契約の書き換えは創造神カオスの定めた運命。変えることは不可に等しい】
「そ、そこをなんとか…!」

うわ…、俺初めてかも、土下座すんの…。仕事でミスしてもせいぜい首で謝るぐらいだよな…。

【そうか、お前がユーリか…。創造神カオスの言っていた"運命の子"…】

創造神カオス…。創造主の上がいるってことか?そして、運命の子…?なんの運命だっていうんだ…?

【よかろう。書き換えを認める。だが、どうしてそこまでして書き換えを望む…?】
「友達…だから…」
【友達…か。面白い…】

ここの神様とか神龍ってツボ浅いのかな…。

【ユーリよ、お前に1つ願いがある】
「できる範囲内であれば…」
【我とも友達となってほしい…。出来るか?】

創造主と友達!?
出来るか出来ないかで言われたらどっちかって言えばお断りしたいけど…。

「エルムの為なら…」
【"親愛なる者"ユーリよ、友好の証にお前に贈り物をやろう…】

クリスタルから小さい光がポッと生まれると、その光は大理石で出来た床へと静かに降り立ち、そして綿毛のように咲いた。
中から出てきたのは小さい少女だった。

【我が分身、アイリス。その者とも友となってほしい。約束できるか?】
「お願いとあれば…!」
【では願おう。頼んだぞ、ユーリよ…】

まばゆい光は静かに消えると、クリスタルはゆっくりともとの位置に戻った。

「ユーリ…ヤッタノカ…?」
「あぁ、やったみたい…!」
「あれが創造主エアリス…」

国王はゆっくりと歩き出し、俺の側までやってきた。

「ありがとう。やっと創造主様にお会いできた…!」
「いえ、そんな、たいしたことじゃ…」

クイッと袖を摘ままれた。さっきの小さい少女が寂しそうにこちらを見つめていた。

「私はアイリス…。あなたは…?」
「俺はユーリ。君の友達だよ」
「友達…」
「そう、友達。ここにいる全員が友達だよ」
「友…達…」

膝から崩れ落ち、前から倒れるように倒れた。安らかな寝顔の彼女は、ただの子供にしか見えなかった。

この少女との出会いは運命だった。そう気づいたのはもっと先の話になる。



◇第8話◇ 創造主エアリス      fin.

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