異世界に転生されたので異世界ライフを楽しみます!

クロ猫のクロウ

◇第5話◇ 再会


「直轄護衛部隊…ドール…?」

男は不気味に微笑んだ。その妙な余裕に少し肩が揺れた。

『ユーリ様…』

モモ…?

『この男が先程デカグラの森の異様な者の正体かと…』
「あの…」
「ん…?」
「さっきデカグラで何を…?」

男は怪しく笑うと、立ち上がった。

「罠にかかっていた小樹獣<ニアン>を助けていたんだ。何故わかった?」
「モモが…ペントリウスが教えてくれたから」
「ほう、有能なペントリウスだな。飼い主に似たか」
「飼い主じゃない」
「え?違うのか?」
「"家族"だ」
『…!』
「へぇ…」

困った時、迷った時、危なかった時、モモはいつも助けてくれた。モモは誰がなんと言おうと、俺の大事な家族だ。

「ユーリ、なんの騒ぎ…」
「これはこれは、どこかで見た顔ですね…」
「何故あんたがここに…?団長殿…!」
「"氷結の神鬼"殿こそ…!」

え…?知り合い…?てか、え…?氷結の神鬼?なにそのおっかない名前…。






「ユーリを団にいれる?」
「えぇ…」

こわっ!どっちも魔力だだ漏れなんですけど!?
家ミシミシ言ってるんですけど!?

「確かにユーリは普通じゃないわ。村民で神龍と契約したのは驚きよ。でもね、まだ子供なの…」
「私もあなたもあの時は子供だった」
「私たちとはグレードが違う!将来を約束された王族だった!けど、この子は…!」

え…?母さんが王族…?

「ちょっと待ってよ…。聞いてないよ…そんなこと…」
「話していなかったのか…?あのときの…」
「ごめんなさい、ユーリ…。今すべてを話すわ」

私はクレイム王国の1人娘だった。魔力を持っていてみんなに期待されてたわ…。
幼馴染みだったエフリートと魔法騎士団を立ち上げ、日々戦い明け暮れていた。
そんな時だった。唯一倒せない存在がいた。それが神龍。2人の魔力を合わせても勝てない存在。しかも、神龍はつまらなさそうに戦っていた。私は無力だった。その日を限りに私は魔法騎士団を抜けた。

「そして、ここに来た。1人で生きていこうと決めた。でもそこに、あなたが来た」

藁にくるまれた赤子を見たときに私は育てようと思ったの。無力な私でもこの子を育て上げようと思った。
ユーリは私の子供。誰がなんと言おうと私の家族なの。

「だからこそ、あなたの団にいれることは…!」
「母さん。俺が決めたんだ」
「え…?」
「俺は昔エルムに助けられた。魔物にだ。だからこそ、エフリートの魔物を助ける団に入って、魔物や全ての種族が笑って暮らせる世界を作りたいんだ…!」

事実だ。嘘はいってない。そりゃ、話は急だけどこれはチャンスだ。黙ってなにもせずいたら折角契約してくれた"こいつ"に申し訳が立たない。

「俺を…信じてくれ…!」

母の顔が苦痛の顔になった。育てた我が子が騎士団に入るんだ。俺だったら耐えられない。
でも、母親は強いな。堪えたように顔を丸めるとエフリートに向かい頭を下げた。

「息子を…お願いします!」
「任せろ!何があっても必ず守り抜く!」

俺はエフリートの騎士団ドールへ入団することに決まった。






「家来…?」
「あぁ、君にはその資格がある」

家来…か。なら、アイツしかいないよな…。

「生命の森へ行きたい」
「生命の森へ?なにかいるのか?」
「友達だ」

エフリートは少し驚くと軽く微笑み、馬を出してくれた。俺の4倍はある体の馬に乗り、生命の森へ向かった。

「そういえば…なぁ、モモ」
『はい、ユーリ様』
「スキルの中に黒焔っていうのあったよね?」
『ございます』
「あれって何?」
『バトルスキル黒焔<ブラッドフレイ>。すべてを飲み込む黒い焔です』
「それっていつでも出せるの?」
『常時出せます』

黒焔か。ちょっと物は試し。やってみよっかな。
こんな感じかな…。お、魔力上がってきた…!

左手を前に出し力を込めた。体中が燃えるような感覚に襲われたが、流石はチート級、耐性があったのか…。

「バトルスキル…黒焔<ブラッドフレイ>!!」

手から放たれた黒焔は渦を巻きながら森を"全て"食らった。それまで木しかなかった森がそこにはなかった。

「エグい…」
『ユーリ様』
「な、なに…?」
『近くに個体猪喰獣エルムの存在が確認されます』
「…!どこにいる!?」
『"そこです"』

大樹の中に鉄でできた檻があった。そして、そこに少し痩せたエルムが座っていた。
馬から降り近づく。あの時のような明るい顔はそこになく、ただ苦しみに耐える強張った顔がそこにはあった。

「エルム…」
「オ前…誰ダ…」
「俺だよエルム…!昔ここで助けられた村民の…!」
「オ前…ユーリ…ナノカ…?」
「助けに来た」
「…!ヤメロ!コノ檻ハ体力ヲ吸ウ…!」
『サポートスキル吸収を発動します』

両手から檻にかかっている魔法を吸いとった。黒かった檻はみるみるうちに鉄本来の色に戻った。

「コレハ…!?」
「待たせた、エルム。あの時のお返し、やっと返せるよ…!」

エルムと抱き合った。痩せこけ骨すら浮き出た皮膚を触ると、自然と涙が溢れ落ちた。ひたすらに俺達はお互いの存在を確かめ合っていた。


◇第5話◇ 再会          fin.



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