学園のアイドルと同居することになりましたが・・・

seabolt

家族

「「ただいま」」

二人で帰宅した。いつもなら紗耶香ちゃんがおかえりと迎えに来るはずなんだが、今日はいない。そうだった。受験生の紗耶香ちゃんは、塾に行っていたんだ。ということはとダイニングを見ると何もない。キッチンも朝出かけた状態のままだ。
俺は、服を着替えてキッチンに向かった。今日は、八宝菜の日だ。とりあえず、野菜をザクザクと切っていく。最近は、便利なもので、野菜だけを切ると後は炒めるだけのものがあるから、いいんだけど、

トントン

はぁ~

溜息しか出ない。沙織さんの暴挙は、エヴァ初号機が暴走した時みたいなことはなく、逆に目玉を赤くして暴走してくる王蟲を止めたナウシカの役割を果たしたようなものだった。その場で大爆笑をした生徒たちは、あー面白かったと散っていったのだった。そして、里奈さんも亜里沙さんも

「私、帰る」

「さおりん、面白い話ありがと!!」

って、結局、俺達の結婚疑惑はそのままにされていたのだった。すると沙織さんが

「手が止まっているわよ」

「おっと」

俺は野菜を切るのを再開していると横で、フライパンを取り出していた。

「手伝うわ」

沙織さんがフライパンに火をかけ油を入れた。その横で俺が次々と玉ねぎ、ニンジン、白菜と炒めて行く、そこへ、八宝菜の元を入れた。

ジャンジャンと炒めているうちに完成、こうして二人で夕食の準備をした頃に

「ただいま~」

沙耶香ちゃんの声がしてきた。と思ったら

「恵君!!ただいま!!」
ガバリ!!と俺に抱き着いてきた。

「おかえり」

「うっほん!!」

後ろから嫌味の様な咳払いがしてきて、そして、冷たい視線が

「おえねちゃん、ただいま」

「おかえり、紗耶香」

今日のこともあってか、沙織さんが怖く見える。そして、夕食後に紗耶香ちゃんが

「ねぇねぇ、どうだった?うまくいったの?」

すると沙織さんが

「失敗した……」

「え~!!どうして?ひょっとして、パパさんと結婚したこと言わなかったの?」

ばん!!

沙織さんが机を叩いた

「言ったわよ」

彼女がわなわなと震えている状況を見て沙耶香ちゃんは俺にこそッと聞いてきた。

「どうなったの?」

「実は……」

その説明をして、沙織さんが親父と結婚したことを正直に言ったがみんなに大爆笑されたと話すと

「ハハハハハハハハハ」

お腹を抱えて爆笑をする沙耶香ちゃん

「あ~おかし~!!どうして、そんな展開で言うのよ……ハハハハハハ…ヒー!!」

ゴン!!

ゴン!!

「「痛い!!」」

「なんで、俺まで?」

沙織さんのげんこつが俺たちの頭に落ちてきた。

「恵君がしっかりしないからじゃない!!」

「俺のせい?」

「じゃぁ……誰のせいよ」

「どういう意味?」

ゴン!!

「痛て!!」

再び俺の頭に沙織さんのげんこつが落ちてきた。




コンコン

「どうぞ」

「はいるね」

沙耶香ちゃんが俺の部屋に入って来た。もちろん、彼女は受験生なので受験前対策問題集を持ってやってきたのだ。そして

「ここが解らないんだけど」

一通り教え終わるのだが紗耶香ちゃんは俺の部屋を出ようとしない

「どうしたの?」

「恵君」

「はい」

「おねぇちゃんにしていることと同じことして」

「なんのこと?」

「知ってるんだ‥‥抱き合っているところ見たんだけど…」

沙耶香ちゃんが俺の方をじっと見つめている。妙なドキドキ感があるんだけど

「あ?ハグのこと?」

「ハグ?」

ここは勢いで、逃げ恥のようにやってしまおう!!俺が両手を広げた

「はい!!両手を広げて!!」

「?」

沙耶香ちゃんは言われるがまま両手を広げた

「えい!!」

俺は勢いのまま、彼女を抱きしめると自然と背中に手が回ってきた。しばらくして、離れると

「え?」

ぼーっとしたまま、紗耶香ちゃん、立ち尽くしていた。

「はい…終わり…」

「え?あ…」

俺が離れたまではいいんだけど、気をよくしたのか紗耶香ちゃんは俺の部屋を後にした。





コンコンコン

「はい?」

沙耶香ちゃんはさっき部屋を出たずと思っていたら沙織さんが部屋に入って来た。

「さっき、紗耶香が来てたわよね」

鋭い眼光が恐怖を感じさせるんだけど、

「あ…受験対策で…」

「そうなの?で?ハグまでしたんだ」

ジト目をしている。

「それは、沙織さんとハグしたのを見られて」

「そう…しかたないわね。で」

「で?」

「今日もおねがいしてもいい?」

そうこれはハグのお願いだ。紗耶香ちゃんと同じようにする。そして、ハグが終わると沙織さん

「そう言えば、恵君って、こんな状態で良く理性を保ってられるわね」

「それは大切な家族だから」

「それだけ」

「そう…それだけ」

疑問符を持ったまま沙織さんは俺の部屋を出て行ったのだった。









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