無数の世界~巡り救う物語~

キユラ

神時代~前編~

 神は暇であった。神が自分の存在を自覚したときに初めて見たものはどこまでも続く白い空間。そこは、見渡す限り何も無く、ただ白い世界がどこまでも続いていた。


 神は何をするでもなく、ただ何もない空間を進んでいた。時々自分と同じような存在とすれ違ったりもしていたのだが、互いに何もせずにすれ違うだけであった。そして、神が自我を持ってから、長い長いそれこそ永遠と思えるほどの刻が流れた・・・


 それは、突然起こった...ある日、神々の中の幾人かが自分自身の持つ力に気がついたのだ。その日から、力を自覚する神々は増えて行き、力を自覚した神々は引かれるようにして、一つの場所へと集まっていた。その場所には、見るものを圧倒する巨大な一本の樹が存在していた。神々は、瞬時にその樹が何なのかを理解した。あそこから、自分達は生まれたのだと・・・
 それと同時に、一つの疑問が生じた。なぜ、今まで見る事が無かったのだろうか?自分は永い時間さ迷っていたのに...それは周囲にいる神々も、同じであった。だが、その疑問はすぐに解けた。まだ力を自覚していない神が、自分達の近くを通りかかったのだ。その神は、神々が一つの場所に集まっているのを見て、不思議に思っていた。力を自覚している神々の内の何人かが、その神に力の存在を教えた。するとどうだろうか、その神は自分の力を瞬時に自覚した。それと同時に、先程まで見えていなかった巨大な樹が見えるようになったのだ。それから、神々は自分達の力について話し合った。お互いの力が別のものだとわかっていたのだ。そして、神々は自分達の力が大きく分けて三つの種類があることを理解した。


 一つ目の力、数十種類ある平均的な普通の力、それを能力と呼び、その神を神と呼んだ。


 二つ目の力、十数種類ある唯一無二の強大な力、それを特異能力と呼び、その神を特異神と呼んだ。


 三つ目の力、数百種類あるが普通の力よりも劣る力、だが中には使う場合によっては強大な力を発生さいるものもあった、それを変異能力と呼び、その神を変異神と呼んだ。


 神々は自分の力を自覚したときから、力を完璧に使いこなせると解っていた。だが、自分達の力を試すことにした。何もなくただただ、さ迷っているよりも、力を使っている方が良いと考えたのだ。長い間能力を使っていると神々は、一人だけで能力を使うよりも、複数の能力を合わせて使うことで、さらに強力な能力なり、効果の幅が拡がるという事に気がついた。それから、神々は単独出はなく、気が合うもの同士でチームを組むようになった・・・


 ある時、眼の変異神、写の変異神が他の神々の目の前に、薄い長方形の膜のようなものを出現させた。そこには、此処とは違う別の次元の様子が写っていた。
 そこは、暗い暗い空間が広がり、その空間に数百億という様々な玉が浮いていた。玉の中には、所々に光輝くものが有り、それを中心にいくつかの玉が回っていた。そうして回っている玉の中の幾つかに、それはあった。神々はその時初めて、自分達以外存在に興味を持った。


 それは、人と呼ばれる生命であった。そしてその中に、数人だけ自分達と同じような存在がいることに気がついた。神々はその存在達こそが、その空間を創ったことが何となくわかった。それと同時に、自分達の力の源と思われる、不思議なエネルギーが別の空間へと流れていることに気がついた。それは自分達とは別の神々のもとへ流れているのだろうと、不思議とそう思った。そしてなによりも神々は、人の築いた文明を見て、そこにいる自分達と同じような存在を見て、とても興味を引かれた。みんな美味しいものを食べ、仲の良い者同士で笑い会う等、とても楽しそうな時間を過ごしていた。そして神々は皆等しく思った・・・




     あのような世界を創りたい・・・
     そして、自分もあの様に過ごしたいと・・・




 それからの神々の行動は、早かった。まず神々は、玉・・・あの世界では星と呼ばれているものを創った。そして、生命・・・人や動物、植物を創った。さらにあの場所では、宇宙と呼ばれている空間を幾つかの世界に創り、宇宙を創らなかった世界には、太陽と月のみを創り夜になると星を写し出す仕掛けを創った。


 そうして神々は、時間をかけ無数の世界を創った。そして、世界に生命を放った。人が文明を築くまでの間、神々は自分の姿を整える事にした。神々の姿はとても不安定であった。神々は各々好きな姿になった。元々神々には性別というものがなかったため、自分が近いと思う方の性別にした。ある者は、獣の姿、幾何学的な姿。またある者は、獣の耳と尾を持つ人の姿、あの世界ではエルフ、ダークエルフと呼ばれている姿等、人から獣、また、人とはかけ離れた異型の等、神々はそれぞれ思い思いの姿で己を固定した。


 神々がそうこうしているうちに、それぞれの世界に文明が産まれ、発達していった。神々は、ようやく姿が決まり、降りようとしたときに、それは見つかった。
 数十の世界で人々が、冥府や地獄、と呼ぶものができていたのだ。そこから出てくる者達は、人を殺し、その文明を破壊していた。さらに、動物達を魔物という強力な生物に変え、人々を襲わせた。その者を神々は魔族と呼び、その者達が出てくる場所を魔界と呼び、急遽その対応に追われた。神々は焦っていた。神々の内何人かは、文明が滅びてしまうため、しかし、神々の大部分は人の成長を見続けて、人々を守りたい...その思いの方が強かった。


 魔界の現れた世界には、神々が自ら降り魔族と魔界に封印した。だが、魔物を封印することはできなかった。それと同時に、神々が創った世界のすべてに異常が起きた、動物から魔物へと変わるものが出てきたり、魔物がさらに強い個体へと進化し、中には人並の知能を有する者も現れた。さらに、獣人、エルフ、ダークエルフ、妖精、魔人・・・様々な種族が産まれていたのだ。それらの種族は、人にはない特殊な力を持っていた。神々はそれに対応するために、すべての種族に信託を下し、協力するように促した。さらには、天界と呼ばれる場所を創り、天使という種族を神の使いとして、力を使って産み出し、それぞれの世界の管理を任せた。また、すべての種族に等しく力を与えた。まずそれぞれの世界の国に、神器と呼ばれる、神の力で創り出した強力な武器を与えた。さらに自らの力の一部を分け与えた。それを人々は、恩恵と呼んだ。神々は世界に干渉し、レベルとステータスというものを創りだした。


 名前:
 種族:
 年齢:
 職業:
 Lv:
 HP:
 MP:
 攻撃:
 防御:
 速度:
 魔力:
 魔防:
 知力:
 スキル:
 ユニークスキル:
 エクストラスキル:
 固有スキル:
 称号:


 この様に、世界のシステムを安定させた。神々は、魔族の封印が解ける可能性を考え、それぞれの世界に、自らを生み出した存在である神樹を再現した。さらに、神々の許可なく立ち入ることのできない、空間を創り出しその中にそれを入れた。その、再現されたものを神木と呼び、それがある空間を神域と呼んだ。その神域は、神々が過ごしやすいようにだんだんと改良を重ねられていった。


 それから神々は、それぞれの気に入った世界にすみ始めた。そして、平和に長い長い時間を過ごした。なかには、結婚をする神も現れ、はじめよりも遥かに充実した時間を過ごした・・・






 このとき、神々は気がついていなかった・・・
なぜ、自分達の創った世界に魔界というものが現れたのか・・・
 なぜ、自分達の創った人以外の種族が現れたのか・・・






 気がついたときには・・・
 もう、すべてが遅すぎた・・・

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