エグザイル・ウォー 盈月の薔薇

ザクキャノン

story3 お尋ね者放浪

   水巻町
    中継基地となっていた野球場を占領した抵抗軍。彼らは地元住民に必要のなくなったジャンクパーツなどで少しずつ防御壁を作り高句麗軍から奪った医薬品や食料、武器をボックスの中に収納してスペースを空けることにした。武道館には住処の失った女子供が協力して生活できる環境を作り寝床も用意した。
    高句麗軍は抵抗軍の攻撃によってほとんどの拠点が陥落していく問題に直面したことに対して頭を抱えている。
   「そろそろ抵抗軍の主要メンバーを炙り出せ!」
   高句麗軍警察隊の指揮官であるジウ大尉は下士官に北九州遠賀郡の地図を出して命令した。
   「アルゲッスムニダ(分かりました!)」
  下士官は地図を受け取って詰所を退室して準備に取り掛かった。
    高句麗警察隊は北九州市と遠賀郡の役場や公共団体と連携して住民票や住民ナンバーなどの情報を元に抵抗軍の人物と思われる主要ターゲットを割り出す事にした。
   抵抗軍には階級や格に対する上下がなく誰がリーダーで誰が主要なのとか特定できない。
    住民コードには北九州出身の男が調査のデータに当てはまった。高句麗の工作員や軍隊が上陸して支配下に収めてから行方をくらましていた。名前は蛙永貴彦。元自衛隊の後方支援部隊員で挫折の為、3年半で何かと理由つけて除隊して今では警備会社で契約社員として就職したが高句麗軍の進駐に伴って行方をくらましていた。地元ではボーと呼ばれていて人種の血統も分からずじまいだった。
   「蛙永?変な名前だな。人間じゃ無くなってカエルになったのかもな。」
   九州占領前までは工作員のハッカーで今ではサイバー部隊として勤務するポー・スンウェイがふざけてデータを収集した。
   サイバー部隊の一部隊が北九州市八幡西区の折尾に派遣されて諜報戦の戦力として暗躍するようになった。
   「SNSのアカウントやブログも洗いざらい調べて我が祖国を批判している反逆者もついでに調べ出して住所も特定しろ!」
   ポー・スンウェイはサイバー部隊員に命令した。
   一日の出来事をつぶやくSNSには蛆虫が湧くように高句麗人民連邦に対する悪口が溢れておりさあサイバー部隊が高い集中力で全てのアカウントから位置情報、居場所
や住所、交友関係もくまなく探し出した。
   
   某SNS

  @admirao高句麗なんて所詮ザコ。日本を舐めんなよ!

  @boueinokuniあの黒パジャマの豚をどこかのアサシンが殺してくれればいいのに!

  @gangstarxxx高句麗の奴らは既成事実作らないと何もできないゴミ国家。地球から消えてれば良い!

   某SNSからは数え切れないほどの悪口が書き込まれており通信電気会社にも高句麗警察隊が乗り込んで協力を命令するほどに事態が深刻になりつつある。
  サイバー部隊はポー・スンウェイを指揮官として調べがつき次第住所特定して高句麗警察隊を向かわせた。
   住民コードや住民票を頼りにハンビーを向かわせて反逆者の住んでいる住居に向かった。
   「開けろ!こちらは警察隊だ!」
   高句麗軍警察隊の隊員はドアを蹴った。
   反逆者は裏口から逃げようとして屋根かパイプを伝って逃げようとするがあっけなく見つかってしまった。
   「奴ら逃げるぞ!いっそのこと殺してしまえ!」
   指揮官ジウ大尉が部下からM16自動小銃を奪ってパイプを降りようとしてる反逆者に向かって発砲した。
   反逆者は慌てて手を滑らかして車庫の屋根に落ちた。彼はうずくまり足を引きずりながら逃げていくが指揮官が連射で狙い撃ちにした。
    反逆者は身体中から血を流しながら転ぶようにして倒れた。
    「自分の撒いた種だ。行くぞ!」
   指揮官ジウ大尉は部下を連れて再びハンビーに乗った。
   一方、抵抗軍は奪取した野球場跡の近くにある高句麗軍の防護壁前に土嚢を積み上げて野球場のバックネットには迷彩の偽装網を設置していた。
   バックネットには高句麗軍の通信機器を移動させて防水性の袋などで被せるようにした。
   「奴の言葉も分からないことだらけだがいつでも聴き取れるようにすることには越したことない。中には翻訳できる仲間もいるからね。」
   若手の通信手がボーに言った。
   ボーはダテの元に向かった。
   ダテはボーのところに駆けつけて来て情報班から貰った一枚のプリントを差し出した。
   「おい、あんた。どうやら敵さんのお尋ね者になったようだな。指名手配にして殺してでも連れてこいと通達して回っているらしい。」
   ダテは血相をかいていた。
   「おそらく当局のハッカー部隊の仕業だな。俺と同じく反逆者を洗いざらい調べまわって逮捕しているようだしな。」
   ボーは溜息をついた。
   「お尋ね者とはいえここで引き下がるわけにもいかない。ここまで修羅場を掻いくぐって来たんだし戦況も良くなっている。逃げれば負けだ。」
   ボーはダテにプリントを渡した。
   「次は奴らが占領している廃工場を占領してほしい。そこを奪えば車両の整備や兵器の整備にも利用できる。」
   ダテはボーに地図を渡した。
   「メンバーを集結させたらすぐに向かう。」
   ボーは任務を引き受けた。
   「最近では対ゲリラ戦に長けた部隊を編成しているという噂もある。くれぐれも気をつけろ。今まで通りに行かない可能性が高いからな。」
   ダテはボーに注意を促した。
   選抜されたメンバーは回転式グレネードランチャーや消音器付きスナイパーライフルM40や高句麗軍から鹵獲したK1サブマシンガンを携行した。1人3つほど手榴弾を所持して忘れ物がないか確認して準備が終わるとボーの元に集まった。
    「これで準備できた。早いとこあの工場を奪おう!」
   メンバーの1人がボーに言った。
   「準備はできたな。行くとしよう!」
   ボーはずっと使っている古株のAK74を持って出発を開始した。
   自転車で移動を開始してパトロールが来ていないうちに地図に沿って進み工場である目的地に向かった。
   工場には市街地迷彩の戦闘服を着た高句麗兵が積まれた土嚢付近で歩哨をしており土嚢の上には小さな偽装網が設置されていた。歩哨は簡易椅子に座ってまったりとしており無警戒の状態だった。
   工兵が設営した矢倉には狙撃兵が立っており工場内には軍用トラックやハンビーが待機していた。周辺には非番の兵士がウロウロしている。
   「スナイパーライフル持ってるのはあそこの矢倉にはいる狙撃兵を始末しろ。そして次にあの土嚢の近くにいる無警戒を排除してくれ。」
    ボーは仲間に命令をして障害物となる警備を始末するようにした。
   スナイパーライフルM40からは放たれた
7.62×51弾が狙撃兵の額を貫いた。そして次弾が簡易椅子に座っている警備兵の眉間を貫いた。
   「突撃!行くぞー!」
   ボーの掛け声と同時にメンバーも立ち上がった。
   工場の入り口に行き分散した。近づいて着た兵士の後ろに回り込んで小型ナイフで首を掻っ切ってあくびをしている兵士をサブマシンガンで射殺して銃声に気づいた兵士が駆けつけて来た。
   兵士はM16A2アサルトライフルを腰撃ちで抵抗軍のメンバーの1人の体に数発撃って他の兵士も駆けつけて来た。
   抵抗軍の選抜メンバー達は分散してハンビーや軍用トラックの陰に隠れた。
   ボーはAK74を単発に切り替えて遮蔽物から出てきた兵士を狙って撃った。
   兵士はしゃがんで再度立ち上がって仲間の抵抗軍の戦闘員を狙撃した。
   「クソ!奴ら噂通りの凄腕か!射撃の腕が実にプロ並みの兵隊だ!気をつけろ。」
   ボーは叫んだ。
   仲間の戦闘員がK1サブマシンガンで牽制を開始した。
   兵士は隠れながら撃ち返して来る。
   ボーは他の標的に目が向いた兵士達に向かって手榴弾を投げた。兵士の足に手榴弾はバウンドして炸裂した。
   兵士は両足を吹き飛ばされて腹部から何かが爛れていた。肉片が飛び散って遮蔽物は赤く染まっていた。他の兵士が通信機材に手を伸ばし抵抗軍の戦闘員がサブマシンガンで兵士の腕を撃ち通信機材を破壊してから胸を撃ち抜いた。
   「工場地域制圧!」
   抵抗軍の戦闘員は報告をした。
   「危ない。危ない。危うく増援を呼ばれるところやったな。」
   ボーは安堵の息をついた。
   「こちら工場制圧組!なんとか制圧できました。しかし仲間は2人戦死してしまいました。」
   抵抗軍の戦闘員は報告を入れた。
  「了解。2人は気の毒やったな。しかしよくやった。これで車両整備などができる。もちろん鹵獲兵器もな。」
    ダテは無線機で報告を聞いた。
    「残りは整備部隊をこちらに向かわせるとするか。」
   ダテは制圧した工場の位置が記された地図を塗りつぶした。
   ボーは物資調達に無人化した民家を捜索して寝袋と頭痛薬、消毒液、風邪薬を雑嚢リュックサックに入れた。足音が聞こえて慌ててAK74自動小銃を構えて待ち伏せをした。高句麗警察隊のパトロールだった。
2人いて金品等を探していた。
   ボーは「アンニョンハセヨか你好のどの言葉を使えばいい?」と2人に声をかけて振り向いたところで連射で射殺した。
   「バカな奴だ。金に目が眩んだ末路だ。」
   ボーは死体に唾を吐いた。
   AK74自動小銃が錆びれたのを確認して民家の玄関に立てかけた。そしてパトロール兵の死体からM16A2を拾って弾倉も回収してその場を去った。
   錆びれたAK74自動小銃は寂しそうに見送るかのようにして風に吹かれて行った。
   M16A2は湾岸戦争辺りから使用され続け未だに各戦場でも使われている。アメリカ軍をはじめとして西側諸国でも採用されて今では西側の資本主義陣営を代表する銃器となっている。高句麗軍は米軍や旧韓国軍が破棄した物を鹵獲して使用している。
   試し撃ちにM16A2を撃ってみたがAK74よりだいぶ気楽に撃ちやすくて実用性が高い。
    ボーは無人民家で久しぶりのシャワーを浴びた。数日ぶりで気持ちもさっぱりしてシャンプーやボディーソープを使うのも久しぶりだった。身体のあかも落として思う存分にシャワーを浴びてから身体を拭き服を着てから抵抗軍のアジトに戻った。
   
   北九州市
   高句麗軍の支配下に置かれた町の掲示板には指名手配ポスターが貼られておりボーの免許証データから拾った顔写真と生年月日、血液型が記載されていた。見つけた際の懸賞金は500万円と高級車2台、高級住宅一軒が差し出されると言うものだった。
   元自衛官で少なからず銃の扱い方はもちろん徒手格闘の基礎が出来ることを考えて危険重要人物として高句麗警察隊も昼夜問わず捜査していた。
    親子が町を歩いており子供がボーの手配写真に指をさした。
   「ママ。この人誰〜?」
   子供は母親に聞いた。
   近くに山吹色の制服を着た警察隊員がおり迂闊な事を言うことはできない。
   「この人は悪い人なの。人に意地悪をする悪い人だからあなたもこんな人になったらダメよ。」
   母親は高句麗警察隊の視線を気にするように答えた。
    日本を取り返す為に戦っているなんて言えばテロリストに賛同したという罪で収容所に入れられかねないからだ。
    抵抗軍と医薬品を不法取引をしていた闇市の商人が数日前に逮捕されていた。その他、高句麗軍の動きに関する情報を流そうとして逮捕されて処刑されたという話まで出ている。アナキストと呼ばれる無法者も高句麗警察隊の粛清に遭ってほとんど姿を見せなくなった。

   福岡市
   ノーリは高句麗兵から奪ったM92Fハンドガンで警察隊員を射殺してM4自動小銃と弾薬を回収した。
    「やはりAK74よりM4の方が使いやすい。」
   ノーリは呟きながら弾倉を装填して中洲方面を目指した。
   都会の福岡市はゲリラ戦に有利な環境が多く爆薬で高句麗軍の装甲車やハンビーを20台は撃破している。まるでランボーみたいだった。
   「博多美人までも敵に回してでも奪われたものを取り戻す戦いをする運命になるなんて世も末だな。」
   ノーリは手榴弾を警察隊の詰所に転がした。
   詰所は爆発と同時に崩壊して中から警察隊員が血まみれになった状態に出てきて生き絶えた。
    ノーリ自身は指名手配されてはいないが税金問題から税務署にマークされ今では国家安全保衛部からマークされていた。黒い背広を着た男から何度も尾行されて逃げて追ってくる捜査官をペンで首を刺して殺して逃亡生活を送っていた。食料は市場でパック詰めの寿司やおにぎり、菓子パンを万引きして食い繋いでいた。
    落ちていた新聞を見るとボーの写真が載っていることに気づいて驚いた。
   「ちょっと…蛙永が北九州で指名手配されてるじゃん!」
   ノーリは笑いながら新聞を読んだ。
   「しかもテロリスト扱いされてる。相変わらずぶっ飛んでるな。」
   ノーリは笑いをこらえながらリュックに新聞を入れた。
    
  遠賀郡水巻町
    ボーは野球場跡の陣地に戻りダテに顔出しした。
    「俺はこの陣地と町からしばらくおさらばするよ。指名手配されてる身だし。」
   ボーはダテに別れの挨拶を遠回しにした。
   「いや、まだどっかに行くのはよせ。それにあんたにまだやってほしい任務がある。」
   ダテはボーを引き止めようとする。    
   「やってほしい任務とは?」
   ボーはダテに聞いた。
   「今から遠賀川沿いにあるパチンコ屋跡の使っている敵の守備隊を叩いてほしい。次こそ奴を倒せばしばらくは敵さんも腰が抜けて何も出来ないだろう。一時的な期間稼ぎというところかな。」
   ダテは地図と資料をボーに渡した。
   「今度はこの陣地の半分の面子が参戦する。守備隊にはコマンド兵や狙撃手がいるからな。」
   ダテは写真を渡した。
  写真を見る限りコマンド兵と思われる兵士は黒い出動服に迷彩のヘルメットに覆面とゴーグルをしていた。装具はロシア製と思われる防弾ベストやサバイバルバストを着ているものが多くいた。使っている銃はAKS74Uと呼ばれる銃身を短縮して銃床を折りたたみできるタイプの自動小銃だった。
   「こいつを倒せば珍しいカラシニコフ銃が手に入るな。俺も参戦するよ。」
   フォーも準備した。
   抵抗軍は高句麗軍の防弾ベストや県警の防弾ベストを着て捕獲した銃火器を装備して全員、準備を始めた。
   軍用車両で高句麗軍の守備隊がいる場所まで移動して人影がない場所でメンバーを下ろした。
    分散して廃棄されたクルマの陰に隠れて仲間の合図を待つ。建物の屋上に高句麗軍の狙撃兵が配置されており駐車場には軽武装の高句麗兵が巡回をしていた。
   「スナイパーライフルを持っている奴は屋上の狙撃兵を始末しろ。それと同時に奇襲をかける。」
   ダテは無線機で全員に伝えた。
   M40スナイパーライフルで狙撃兵の頭を撃ち抜いてそれと同時に抵抗軍の戦闘員が前進して油断している高句麗兵を後ろからマチェットで斬りつけて始末した。抵抗軍側に振り向いた高句麗兵を銃撃した。高句麗兵は胴体から血を流しながらもたれつくように後ろに倒れた。建物の陰から高句麗
軍の増援がRPG7ロケットランチャー撃っ
てきた。抵抗軍の戦闘員は宙に舞うように吹き飛ばされ足や腕を吹き飛ばされるものまで出てきた。
    「建物の陰にRPGーー!」
   フォーが叫んだ。
   ボーは隠れて建物の周りを見回した。死角になりやすい位置にRPG7ロケットランチャーを再装填しようとする高句麗兵の姿が見えた。ボーはM16A2の引き金を何度も引いて相手の胸部に2発当てた。ロケットランチャーを持った兵士は倒れて瀕死の重傷を負い手榴弾で自爆した。
   肉片が散らばりコンクリートにまで及んだ。
    軍用トラックの荷台から高句麗兵が重機関銃を乱射して抵抗軍の兵士をバタバタ倒していく。
   「あの機関銃手を倒さないと先へ進めん!」
   抵抗軍の1人がダテに言った。
   ボーは手榴弾を荷台に向かって投げた。近くにいた機関銃手は前に吹き飛ばされた。
   「機関銃手は倒した。前に進むぞ。」
   フォーは叫びながら銃剣付きのAK74を構えながら前に進んだ。
   弾切れになってナイフで襲ってくる高句麗兵を銃剣で刺し殺して近くから襲ってくる高句麗兵の胸を複数回刺した。刺された高句麗兵は血を吐きながら後ろに倒れる。
    建物内にいる高句麗軍の憲兵がハンドガンで待ち伏せしながら抵抗軍の戦闘員を射殺していき死んだ仲間の兵士の自動小銃を拾って戦おうとする。ダテはM240機関銃を乱射して憲兵達を蜂の巣状態にして残りの敵兵が籠城している場所へ向かった。
    残りの兵士は爆薬で自爆を試みるが不発になってしまった。
   「降伏しろ!お前らは制圧された。命は助ける。無駄弾を使いたくはない!」
   ダテは仲間と共に銃を向けながら投降を呼びかけた。
   「結束力の強い奴らめ!俺は人民の為に戦う兵士だ!義務を果たす!」
   日本語のできる高句麗兵が叫んで手榴弾のピンを抜いて抵抗軍に突進しようとした。
   抵抗軍は必死になって一斉射撃を始めた。手榴弾が炸裂して高句麗兵の身体が砕けると共に抵抗軍の戦闘員は弾き飛ばされダテの足に手榴弾の破片が足に刺さった。
   「クソ!破片が刺さった。衛生兵。この足をどうにかしてくれ。」
   ダテは苦痛の叫びを出しながら助けを求めた。
   衛生部隊の戦闘員が2人で搬送してトラ
ックの荷台に乗せて野球場跡の拠点に向かった。
   「ダテの奴、不覚にもやられたか…」
   ボーは弾の切れかけたM16A2を腰まで下ろして残骸にもたれかかった。
   「中の残置された物資を探して使えそうなものを見つけてくれ。」
   ボーは体勢を取り直して仲間に頼んだ。
   ドローンが上空をハエが飛ぶ回るように飛行しておりカメラレンズがパシャリと音を出して去ろうとした。ボーはM16A2自動小銃で撃ち落そうとするがあっけなく逃げられた。
   「あいつが蛙永か。写真は撮れた。少しの情報にはなるだろうよ。」
   ドローンを操作する高句麗軍特殊部隊がデータを保存して立ち去って行った。
   写真には上から斜めにぐらいの角度でM6
5ジャケットを着て下には緑色の迷彩服を着たボーが映し出されていた。
   高句麗軍側には抵抗軍によるゲリラ戦で被害が時間を重ねていくうちに被り続けており特殊訓練を受けた経験のある兵士を招集して対ゲリラ戦に長けた特殊部隊を編成した。特殊部隊は格闘、射撃、サバイバルや運動神経が抜群で軍部の幹部も彼らを頼ることにしている。
    
   福岡県 博多区
   福岡県のテレビ放送局では遠賀郡水巻町で高句麗軍と抵抗軍の間で大規模な戦闘があったことをニュースキャスターが伝えていた。
   <昨夜、高句麗人民連邦軍の守備隊がテロリストによって襲撃され拠点が占領された模様です。抵抗軍を名乗るテロリスト達は支配区域の人々に入団勧誘を行なっている可能性もあり規模も少しずつ大きくなっているようです。不審な人や物があればすぐに警察隊に連絡をするように心がけましょう。>
   <激しい戦闘の末、偵察用ドローンによる撮影と思われる画像からテロリストの容疑者蛙永貴彦の姿が映し出されております。現在、水巻町にいると思われますが地元の北九州に戻ってくる可能性もありますので充分に警戒をするようにお願い致します。>
   ニュースではボーの写真が公開され警察隊と軍部は監視カメラなどで抵抗軍の潜伏地域を割り出すことにして疑わしき者は徹底的に調査するよう情報機関に通達された。
   ノーリは民家のテレビを見ていると元同期のボーが映っていることにびっくりしている。
   「あいつ、ほんと期待を裏切らんな。イカれてるだけあってほんとやらかすよ。」
   笑ってカップ麺を食べながら言った。
   「そりゃ、至る所で高句麗を馬鹿にしたことをしまくるからな。」
   腹を抱えて笑う。
   ボウガンとスナイパーライフルM40をテーブルに置いてテレビの画面を眺めた。
   福岡市内の街を通る市民はほとんど生活水準の高い人が捕まったが中には財産の一部を賄賂として納めれば逮捕は免れる。ほとんどの住民は抵抗軍を疫病神として毛嫌いするようになった。反乱が激しくなるにつれて高句麗軍の報復を恐れているからである。
    
   福岡県遠賀郡 水巻町
   野球場跡の拠点では衛生部隊の戦闘員がダテの負傷した患部を応急処置をして大きなピンセットで破片などを抜き取ろうとした。衛生部隊はほとんど男性看護師で高句麗の進撃から逃れた者だった。病院勤務を途中で抜け出して偶然、抵抗軍と合流した人たちがほとんどである。
   フォーは調達した消毒液や包帯、ハサミを渡してダテを看病した。
   「しばらくは戦えそうにはないな。あと抗生物質は一応、飲んでおけ。」
   フォーはダテに錠剤を渡して言った。
   抵抗軍側は高句麗軍が侵略を開始してからゲリラ戦を持ち込んだが大規模な兵力を誇る軍隊相手に敵うはずもなく多数の戦死者が出ていた。
   一方、抵抗軍守備隊の拠点には即席爆弾を道路に設置して乗り捨てられた車の近くには糸と手榴弾でくくりつけたトラップを仕掛けていた。
    オートバイに乗って現れた情報班がカメラを持ってきてボーに写真を見せた。
   「先の場所にある遠賀グラウンドが収容所の役割となっているらしい。周囲は陣地構築されて憲兵があちらこちらに立っており中でもパトロールを行なっていた。」
   情報班員が軽く説明した。
   「その収容所を襲撃して捕虜を救出してから車両を強奪してズラかるのも悪くないな。」
   ボーは収容所に囚われているものを解放する事を考案した。
    「この場所は大人数で行かない方がいいだろう。収容所を混乱に陥れて救出できる分だけしよう。」
    ベテランの戦闘員が言った。
   「その方が良さそうです。下手に戦力を消耗させるわけには行きませんからね。」
   ボーはベテラン戦闘員の案を承諾した。
   それぞれ武器と弾薬の確認をしてナイフの刃の状態も確かめてからハンビーに乗り込んだ。
   
    八幡西区 折尾
   高句麗警察隊はデータを調べあげて抵抗軍の主要メンバーを割り出した。その中にボー以外の当てはまるものが見つかった。それは伊達辰馬という名前だった。ダテ本人であり経歴には現役の警察官という肩書きも警察隊は把握していた。
   「大人しく我が高句麗警察隊に加われば痛い目に遭う方向に進まずに済んだのに。馬鹿な奴だ。」
    ジウ大尉はパソコン画面を見ながら呟いた。
   「情報によると八幡西区黒崎辺りでテロ行為を行なっており現在は奪い返された野球場跡の陣地。水巻町にいると思われます。」
    オペレーターがジウ大尉に推測を伝えた。
   「あんたの言う通り。俺もそんな感じがした。何せ奴は日本の警官だ。それ相応の考えも知恵もある。油断はできない。今から対ゲリラ特殊部隊を派遣する。俺も現場に向かおう。後は頼んだぞ。」
   ジウ大尉はオペレーターの肩を軽く2回叩くようにしてその場を去った。
    
   遠賀郡遠賀町
   抵抗軍の救出部隊はハンビーから降りて駐車場の遮蔽物に身を隠した。ボーはホルスターからハンドガンを抜き取って弾倉の弾を確認する。
    姿勢を低くして移動したが駐車場に近づいてくる憲兵の姿が見えた。ボーはナイフを取り出して待ち構えた。
    憲兵はタバコをふかしており暗くなった夜空を眺めながらのんびりしていた。ボーの背中は冷や汗をかき心拍数を上昇させて立ち去るか背中を向けるかの行動を待っていた。しかしタバコを吸い終えた憲兵はボーがいるところに近づいてきた。ボーはとっさに憲兵の横腹ににナイフを刺して引き抜いてからもう一度刺した。
   ナイフでやられた憲兵は口から血を出しながら絶命して倒れた。サーチライトに注意して死体を隠して前に進んでいった。
    グラウンドの周りはバリケードなされていて上には有刺鉄線が敷かれている。出入り口には憲兵が1人、離れた場所に1人立ち小便をしている者がいた。
    数人でいっぺんに憲兵2人を集団リンチして殺した後、弾薬を奪ってゲートを突破した。
    囚人や捕虜を解放して逃げるように施し棒切れやシャベル、ハンマーなどを持たせて武器にさせた。周りにいる警備兵を集団でリンチして武器や装具を剥がしハンマーなどで殴ったりして絶命させた。ボーはサーチライトを破壊して警報が鳴った。
    「まずい、増援が来るかもしれん。」
   ボーは仲間に言って拡声器を拾った。
  「今から自由のために逃げてこれから戦おう。」
   拡声器で抵抗を呼びかけた。
   囚人や捕虜たちは殺した警備兵や憲兵の死体から拳銃や自動小銃を奪いグラウンドから出て行く。
   抵抗軍戦闘員らがトラックやハンビーに乗り込みボーはトラックの荷台に乗り込んだ。
   増援がジープで現れて抵抗軍戦闘員が車載されている重機関銃でジープに向かって乱射した。遠賀川の橋の上辺りまで激しいカーチェイスが行われジープの取り付けられた機関銃で高句麗警察隊員が撃ってきた。機関銃を使っている戦闘員は頭を撃ち抜かれて倒れてしまった。
   ボーは運転手を狙って自動小銃を乱射して見事に顔を狙い撃ちした。警察隊のジープはドリフトして横転した。
    「やったぜ!今からダテのところに戻るぞ。」
   ボーはトラックの運転手に告げた。
   無事、野球場跡の拠点に着いたが静けさに違和感が出てきた。
   「もう、みんな寝てるのかな?」
   若い戦闘員がボーに尋ねた。  
   「何かキナ臭いことが起こってそうやな。」
   ボーはトラックから降りて拠点に入った。
   「おい、嘘だろ…」
   ボーは絶句した。
  ダテが無残な姿で死んでおり防弾ベストを剥がされ弓かボウガンの矢が胸板に3本刺されていた。複数の銃傷がありトラックのボデーに張り付けられている。他の戦闘員も射殺されたり刺殺されダテと同じように矢が刺さった死体まであった。ベンチの近くに行くとクナイが足に刺さって肩も撃たれて瀕死になっている死体まで見つかる。
   後からフォーと戦闘員3人が来た。
   「派手にやられたな。隠密に処理するために矢まで使っているからおそらく特殊部隊に襲われた可能性が高いな。」
   フォーは襲撃してきたのが一般部隊でないことを悟った。
   「とうとう抵抗軍狩りが行われるか。流石にあの野蛮人どもにも犠牲が出てるからな。報復されたんだろうな。」
   ボーは絶句する気持ちを隠しきれず小声で言った。
    「しばらく住宅地で身を隠そう。この拠点は確実にターゲットにされる。積めるだけの武器と医薬品、食料を積み込んで遠くに避難しよう。」
   ボーは拠点を離れることを提案した。
   抵抗軍戦闘員達は協力してトラックに荷物を積んで山間部に移動した。移動を終えるとトラックの荷台と運転席で睡眠を取った。
  
   

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