高句麗人民連邦

  半島有事勃発後  朝鮮半島  10月半ば
 
   韓国が北朝鮮に敗れ北朝鮮主体の国家として半島が統一され米軍の在韓米海軍のほとんどは黄海をたどって南方に逃げざる負えなくなったが陸上勤務の部隊の隊員ほとんどが北朝鮮側の捕虜になった。北朝鮮の最高軍事委員長でかつ総書記である金豚骨は朝鮮民主主義人民共和国から改めて「高句麗人民連邦」と国名を変えた。
    
   日本  福岡県

   メグはマンホール内の壁を修復する作業を終えて今住んでいるアパートに戻った。
   「うわっ、作業着うんこ臭っ！」
    作業着の匂いに驚いてすぐに脱いで洗濯機に入れ込んだ。
   洗濯機に電源をいれて作動させた後、すぐに風呂に入り明日に備えて睡眠を取った。
   翌日の朝9時頃に起きてスマートフォンのネット記事を見ると「北朝鮮、韓国を併合して統一。国名を高句麗人民連邦と改名」と書き込まれた見出しに目をつけた。
   メグはすぐに通話アプリでボーに電話した。
   「もしもし、どうしたと？」
   ボーは寝ぼけたような口調で対応した。
   「韓国が北朝鮮に戦争負けたってよ。朝鮮が一つになった。」
   メグは驚いたように言った。
   「俺もニュースで見たよ。やはり予想通り北朝鮮が勝ったか…これからどうなるんだろう？おそらく難民とかが日本に流れ込んで来るかもよ。」
   ボーは先を見据えたように答えた。
   
   
北九州 小倉北区 日明海岸

   北の工作員ジョン中佐は上陸ポイントの確認をしていた。その時、連絡員からメールが来て「共和国が高句麗人民連邦に変わった」とメッセージが送られてきたのに目を通した。すぐさまメンバー達にメールで伝達して引き続き、残りのポイントを押さえた。
   朝鮮海峡を過ぎた先の日本海に2隻ほどの漁船が波に揺らぎながら前進しており中には古くなったジャケットやコート、デニム、カーゴパンツを履いた人達が乗り込んでおり船員は海上保安部の目を避けるために辺りを見渡して船長に異常が無いことの報告をした。
   一方、日本の情勢はあまり良い報告は聞かなくなってきた。最近は中国の実業家や旧韓国の人々が身近にある土地を買収していき経済も赤字続きになっていきつつあった。地方によっては国民健康保険や年金保険の納税額が高くて生活に支障が出て負担がかかったり生活保護受給者も増え政治家の税金横領も問題になっていた。
    最近の政治家は市民の納めた税金で海外旅行したり好きなものを買ったりして納税された金銭を着服したり無駄な事業に予算をかけて日本の役に立てていたと言えるものが何もない状態が続いてる。いっその事、他の国に買収されるか滅びるかした方がマシに思えるかもしれない。国民からすればいつも金持ちや公務員だけが良い思いをしてるようにしか感じない。役所の職員もほとんどゆったりしてるだけで仕事をしない。今時の日本には国民の不満が溜まるに溜まっていた。
   国会では内閣総理大臣の足立総理は頭を抱えていた。今の日本の現状、近隣国による土地買収など。特に一番並んでいるのが土地を他の口から買収されることで外国による土地買収を規制しようにも野党がうるさくてできないのが現状であった。
   「半島が統一されて赤い国会になるなんて最悪想定のシナリオだ。それに半島に駐留している北派の住人や武装集団に占拠されている。アメリカ政府も人質に取られて奴に脅されている…」
   足立総理は頭を両手で抱えて掻きむしった。
   
   高句麗人民連邦 某所
   
    高句麗が過去の歴史上、唐によって滅ばされたこととは反対に現在の中国と結託をして血の同盟を再開させようとしていた。数年前までは中国と北朝鮮の関係が悪化していたものの朝鮮半島が北派主導の国家として統一され残っている中国企業の身の安全を保障する条件で経済や軍事の支援をすることにしていた。中国が高句麗人民連邦を支援をするのはもし半島が韓国主導で統一されれば近隣に米軍が駐留することになり何かあればその近隣にいる存在が危険になってくると察したからだった。近年では朝鮮半島に冷たくなっていたロシア政府も半島に米軍が駐留することになることを恐れて石油や衣類、交通支援を行なっている。元々、日本の新潟県に来航する客船「玄武門」号も元山から航海していたが今ではロシア沿海部のウラジオストクから航海することを認められるようになった。
   朝鮮人民軍がかつて使っていた駐屯基地にはロシア軍と中国人民解放軍が駐留することになり高句麗人民連邦軍に軍事訓練のノウハウを共有するようにして新たな国家の為の軍隊を作ろうとしている。
   現在、ロシアは国家主義が台頭していて前政権の勢力が衰退していき軍隊や警察内部にも国家主義者の思想が台頭していき内乱が至る所で起きていた。高句麗人民連邦を支援しているのは国家主義に抱き込まれた軍隊や政治家でアメリカ合衆国と対等する準備を着々と進めていった。
    中国政府の本音としては南主導で統一さらて北派の大量難民が国境を越え溢れかえって来ることを嫌がっていた。その他ロシアと同じで大国のライバルであるアメリカの軍隊が近隣に来ることを嫌っている。
   
   日本 福岡県 北九州市

   現地工作員が設定した上陸ポイントに上陸を開始した工作員達は待ち合わせ場所に停めてあった車を波止場まで来させて武器の入った木箱を開けてAK47や戦地からの鹵獲品と思われるアメリカ製のM16自動小銃、ソ連製の代表的なロケットランチャーRPG7を車に詰め込んだ。
    「異国の地での活躍と健闘を祈る。」
   船長は上陸した工作員に敬礼をした。
   二つのバンに乗った工作員は皿倉山に向かい人がいない場所でカーキ色のアウトドアベストにリュックサックを背負って降りた。その後、リュックサックの中身を確認して異常が無いことを指揮官に報告をした。
    リュックサックの中身には特殊部隊向けのAKS74Uと呼ばれる消音器が取り付けられるように工夫され床尾を折りたためるように改良された自動小銃に9ミリ口径のマカロフピストルが入っており指揮官は白頭山拳銃と呼ばれるチェコ製のCZ75ハンドガンを改良した代物を装備している。
   一方、ジョン中佐達は指定暴力団の事務所で組長と武器取引のアポを取っており、スポーツバッグから日本円相当の1000万円を出した。
   「親方殿、これしきの物かもしれないが9ミリ口径の短機関銃と9ミリ弾、それと手榴弾を売れる範囲、分けて欲しいんですがどうですか？」
    ジョン中佐はお辞儀をして武器を分けてもらうことをお願いした。
   「あぁ！鉄砲が欲しい？この程度で分けれるはずねえだろ！ボケ。誰かこいつを摘み出せ。」
   組長は高笑いしながら残留してる組員に命令した。
   組員がハンとターの腕を掴もうとするとハンが振り払って前蹴りを入れてターが組員の顔をドリルパンチして弾き飛ばした。
   「このカトンボめ！」
   組員はダガーナイフでハンに立ち向かうがハンはダガーナイフを持った組員の手を掴んで護身術で振り払ってブローニングハイパワーの銃口を向けた。そしてターもナイフの矛先をもう1人の組員の目を刺すように向けて脅した。
   ジョン中佐は顔色一つ変えずマカロフピストルを組長の顔に向けて突っ立ている。
   「あなたにとっては、はした金ですが我が人民にとってはすごい大金です。それぐらいのお金のためならあなたをその場で殺しても良いんですが考えはまだ変わりませんか？」
   ジョン中佐は冷静な口調で組長を脅した。
   「分かった！分かったて！使えそうな者とりあえず持っていけ！」
   組長は冷汗を流しながらジョン中佐に従い、隠しケースから武器を出した。
   隠しケースにはイタリア製のハンドガンの代表格であるベレッタM92Fとイスラエル製のサブマシンガンUZIを出した。
   ターは巾着袋にベレッタとUZIを入れてジョン中佐とハンはターにアイコンタクトをしてそのまま事務所を出た。
   「あいつら、日本ででかいことをやらかしそうだな。」
   組長は相変わらず挙動不審になっている。
   相手は隣の国の工作員。工作員になるまでは特殊な訓練にやる厳しい洗礼を受けそれを乗り越え数多くの戦地に赴いた戦士も同然だった。さすがにいくらヤクザの組長でも歯向かえないのは当たり前である。
    日本の九州は半島に近く北九州の町は半島が二つに分かれていた頃は韓国の仁川の姉妹都市となっており多くの韓国人と日本人の交流が深まっており帰化した韓国人も多く住んでいる地域も増えていった。裏社会事情でも日本の暴力団の幹部クラスが在日朝鮮人が多く暴対法でヤクザの勢いが衰退し始めた頃にコリアンマフィアが暗躍するようになってきた。
    裏社会にはびこる工作員達は普段はヤクザの下っ端として働く者、幹部として金銭を扱う者、武器商人や違法薬物売人として働いている。その他、夜の世界ではクラブの従業員として働きながら工作活動を行い潜伏していた。
   
   日本 福岡県 芦屋市

   朝鮮半島が高句麗人民連邦と呼ばれる北朝鮮主体の国家として統一されて１ヶ月後、古ぼけた人民服と思われる服装をした30代男性が難破船を操縦して上陸したところを福岡県警察に発見された。男性は半島から逃れて来て日本に亡命希望をしているようだった。
   男性は芦屋警察署に保護をされて尋問を受けていた。
   「名前、生年月日を答えてもらいたい。私達の言うとおりにすれば身の安全は保障する。」
   署の刑事は男性に安全を確保することを条件に質問をした。
   「私の名前はキム・スジン…」
   男はくたびれて口が開けずになりながらも頑張って答えようとしている。
   高句麗人民連邦から脱北してきた男性がニュースになってから世間では男性の正体は脱北者を装ったスパイではないのかという疑惑が出てきて朝鮮系移民に対する不信感が出てきて日本人による反発心が強まっていた。
    ネットでは「生活保護を不正受給する外国人は殺処分するべき」「シナチョンの人間が増えてきてるからこそ自衛隊が出動した方がいい。自衛隊は役立たずの高給取り」「市の役人はシナチョンにビビってるから何もできやしない。」など半島からの移民に対してだけでなく国に対しての不満などがスレッドに書き込まれていた。
   
   福岡県 北九州市  各地域

   山間部にある旧部落跡のある住宅地では差別主義団体の大学生達が低所得の朝鮮人宅や生活保護で生活している朝鮮、中国人の住処に石を投げたり愛国魂と書かれた安全ヘルメットをかぶった集団達が通りすがりの朝鮮人を集団でリンチする事件まで起きていた。
   八幡西区折尾方面では朝鮮学校にデモ隊が押し寄せたり物を投げられたり、体育会系のスポーツ学科の大学生が悪戯に朝鮮学校生徒に喧嘩をふっかけたり虐めたりしているところも散見されるようになり最悪な場合、怪我まで負わされる事件まで起きている。
    戸畑区では駅前で日本政府が難民保護政策を行うというデマを流して反対活動を行う市民団体までも増えた。

   北九州市八幡東区
   
   八幡東区に来ていたター・チンコンとカン・ヴィンスは団体に虐げられている同胞に蜂起する事を通達するために山間部の山道にある公園のベンチで座っていて休憩をしていた。
   ター・チンコンは緑色の迷彩ジャケットにジーパンを履いており靴は登山靴という丈夫そうな格好をしていた。カン・ヴィンスはチェック柄の長袖シャツにカーキ色のカーゴパンツにコンバットブーツを履いていてどこかの土木作業員に見える。
    ベンチを座っているとジャージ姿のカップル4人2組がこっちに向かって来た。
    「よお、お前もチョンのカスか？日本に移り住む寄生虫のくせにのうのうと出来る根性が羨ましいよ。」
   がっしりした体育会系の彼氏が腕を組みながら言った。
   １組カップルのジャージやスポーツシャツには棒高跳びをするイラストや陸上部のロゴがあり地元の大学の陸上部である事が伺える。
   「別に悪いことなんてしてませんよ。僕に言われましても困りますしそんな事は総連に文句を言ったらどうですか？」
   カンは冷静に彼氏の方に笑顔で言った。
   「お前、なめとんか？ヘラヘラした面でもの言いやがって」
   彼氏の男は頼もしい二の腕でカンを押した。
   その瞬間、その男の顔に強烈なパンチが飛びそのあとに腹部の方向に前蹴りが飛んできた。ターがカンに喰ってかかった男に飛びかかったのである。
   男は鼻血をダラダラ流しうずくまっていた。その男に交際相手の彼女が駆けつけた。
   もう1人の男が高い跳躍力でカンに襲いかかったがカンはパプキドーの技で振り払って撃術技で袋叩きにした。恋人と思われる男らの彼女2人は怖じ気付いて体が震えていた。目の前で斬新に男が半殺しにされたのを目にしたからだった。
   「もうこれで懲りただろ？俺らを見下して舐めた事をしたらどうなるか分かったはずだ。このゴミ虫君を連れてとっとと失せろ。警察に被害届だしたり通報したりはお好きに。ただそのあとの事を考えるんだ。」
    ターは冷静な口調で2人の女子に脅すように言った。
    女子2人は袋叩きにされた彼氏を介抱してそのまま去っていった。
   「ふう、あの野郎も肝の据わった野郎だ。雑魚には変わりないが…」
   カンは相変わらず笑っていた。
   「そろそろ同志達の居住地区に行くとするか。」
    ターはリュックサックを持って移動する準備をした。
    
    北九州市若松区  

   ジョン中佐はグリーンパーク付近の山間部に集まった同志達と共に戦闘部隊を結成して空き瓶で火炎瓶を作っていた。
   「ひとまず、銃が必要になる。通りすがりの警察官を殺して拳銃を奪おう。一つや二つあれば心強い。」
   戦闘員の1人がそう言った。
   「警官殺害はよせ。騒ぎになる。銃は後日、ヤクザを襲って奪えばいい。」
   ジョン中佐は戦闘員達に言い聞かせた。
   戦闘員のメンバーは差別されてきた日韓混血、クオーター、帰化人が多く純朝鮮人が指揮官や班長を務める事になっていた。
   響灘で広い海を眺める夫婦が会話をしていた。
   「もう、朝鮮半島が北朝鮮主導国家になったからそこの国の人は高句麗人というのかな？それとも朝鮮人というのかな？」
   夫が妻に問いかけた。
   「昔、ロシアがソ連やった頃でもそこの人をロシア人と言ってたぐらいだから朝鮮人でいいんやない？ほとんど一般的には高句麗人と言ってる人も多いからね。」
   妻は朝鮮半島について得意げに話した。
   現在、朝鮮半島での事件以来、北朝鮮主導で統一された時の国名が高句麗人民連邦となって日本国内では高句麗と呼ばれ諸外国では相変わらずKoreaと呼ばれてる。日本、外国問わず共通に呼称されるのが「北」「朝鮮」「コグリョ」「Korea」と呼ばれ曖昧な位置付けになっている。
   
    北九州市 八幡東区

   外国人低所得者居住地域に移動したターとカンは連絡員の元へ向かった。
   「例の2人か！入れ」
   連絡員は周囲を見渡しながら2人を入れた。
   「祖国統一により高句麗人民連邦に国名が改名されたのはご存知だと思うが俺たちはその高句麗人民連邦の配下として引き続き工作活動を行うことになっている。暴動決起の中核となった同志たちの活躍により日本占領計画は順調に進んでいる。」
   連絡員は近況報告を始めた。
   「南の奴らも俺らにビビって降参して支配下になった訳だな。そもそも南のお偉いもこっち寄りだったのが何よりも助かる。」
   ターはニヤけながら呟く。
   「米軍基地を乗っ取った民衆の団結力もなかなかだ。」
   カンは嬉しそうに言った。
   連絡員の隠れ家にはかつて西側を代表していたと言われるM16自動小銃に旧ソ連圏のAKコピーやユーゴスラビア製のスナイパーライフルであるツァスタバM76が保管されていた。ツァスタバM76はユーゴスラビア製でソ連製のAK突撃銃をベースに設計されメカニズムもAKに似ている部分がある。ユーゴスラビアでの紛争でも活躍をしており現在は各国のテロ組織に流通していたり反政府軍にも愛用者が出ている。アジアでは高句麗人民連邦に改名される前の朝鮮人民軍の狙撃部隊に採用され現在でも北朝鮮軍から高句麗軍に移籍した兵士も扱っている
    拳銃は日本の暴力団から買収した回転式拳銃コルトパイソンやイスラエル製のデザートイーグル、イタリア製ベレッタのコピーであるメキシコ製のハンドガンがメインとなっていた。
   「これはデザートイーグル、口径50AEで45口径や44オートマグより威力は高いやつか。」
   カンは物珍しそうにデートイーグルを持って見物している。
   「ほとんど中東のイランマフィアと結託したヤクザがこれらを日本に持ち込んでくる。」
   連絡員はデザートイーグルの説明をした。
   日本の反社会勢力は暴力団だけではなく赤派と呼ばれる共産主義で構成された左翼系や宗教団体の「赤の党」と呼ばれる大学生で集められたグループも存在しておりこれらはかつて北朝鮮に多額の金額を流し込んだ事でも知られていた。
   
   北九州市  小倉北区

   夜のネオン街となる居酒屋街で勤務時間帯にトイレで男は携帯電話のメールを確認していた。
   (同志よ、最近の潜入先情報の近況について報告せよ。)
   メールにはそう送られている。
   (現在のところ、繁華街だけあって警察の巡回が多い。暴力団対策やトラブル対策だと思われる。)
   男は送信した。
   男の名前はパク・ゴッサム。日本名は白山豪太。パクは普段はキャバクラの従業員として勤務しており飲み物の在庫を準備したりしていた。大人しくて地味な容姿からキャバクラ嬢からはバカにされやすい人間だが裏の顔は朝鮮人民軍の軽歩指導局出身で破壊工作のスペシャリスト。日本国内における破壊工作を担当していた。
   パクは普段通り、背広を着て酒出しをしておりわき下にマカロフピストルを装備していた。マカロフピストルには消音器がつけられており、ここぞというときに使えるようになっていた。
   今日の勤務時間は長くはなくいつもより早く帰ることが出来た。帰り時間まで時間があったのか通りの公園でタバコをふかし休憩をする。
   「おい、兄さん、暇そうにしてんな。」
   厳つい顔した男2人と派手な女1人がパクのところに来た。
   「どうかされました？何もなければ声をかけないでください。」
   パクは冷静に言う。
   「ぼっちのお前に声かけてやったのにその態度は何だ？
喧嘩売ってんのか？」
   男の1人が強気になった。
   「だから何もないと言ってるでしょう」
   相変わらずパクは反抗した。
   「なめてんのか？こら！」
   男はパクの胸ぐらを掴もうとした。
   その時、男の片目にパクの指が連打で直撃して男は手を離しその隙にパクは男の頭に手刀を3発お見舞いした。男は倒れてうずくまりもう1人が蹴りかかった。
   パクは飛んできた蹴りを受け止めて立っているもう片方の足を払って倒し最後に腹部と顔を踏みつけた。女の方は動揺している。
   「これだから単細胞は困るんだよ。」
   パクは唾を吐き捨ててその場を去った。
   幸い、わき下に隠されたホルスターとマカロフはバレてなかった。あと一歩抵抗が遅れればバレて大変なことになっていたかもしれない。
   ヤクザの世界にある女を風俗で働かせたり人身売買をしたりしてお金儲けしてるのは漫画だけの話だと思われていた。しかし実際に行っている組織がありパクはそいつらから金と武器を奪うことを目論んでいた。
    ヤクザは大抵、警察に泣きつけば今までの悪事も明るみに出ることを恐れ、何よりも面子が潰れることを嫌っている。しかしその点を突いていけば攻略できる。
   パクは自身の悪知恵を活用して考えていた。パートナーはコリアンマフィア構成員のサウ・ボミンを引き入れて構成員メンバーを用意して行動を実行することにした。
   サウ・ボミンは表向きはマフィア構成員ながら実は工作員の要員で極新空手チャンピオンだった。ほとんどの業務はボディガードと新人構成員の教育係だった。そしてパク達に情報を与える連絡員も務めている。
   
   八幡東区
    ターとカン、連絡員は外国人迫害主義や敵対している団体に不満を覚え高句麗の人民と同じ思想を持つ中核を集め回転式拳銃のマグナムリボルバーや中南米産のベレッタを渡した。
    連絡員は暗殺対象リストを集まったメンバー全員に配布を始める。
   「今、配布したのは同志諸君が粛清しなければならない愚民共だ。祖国からの使者が居所や出没区域を突き止めている。」
   連絡員はリストの説明を簡単にした。
   暗殺リストには高句麗情勢に首を突っ込もうとする北九州在住ジャーナリスト、鋼将軍の財宝の一部である金塊と贈り物である武器を海外組織に売り飛ばした地元純日本人の暴力団組長、警察庁官僚の息子で元暴走族の男など何かと社会的に都合の悪そうな人間が対象になっていた。
    「必ず気をつけてほしいことは人間違いで殺すのはよせ！確実に厄介なことになる。」
   ターは念を押して言った。  
   「高句麗人民連邦万歳！高句麗人民連邦万歳！」
   武装した中核派達は歓喜の声をあげた。
   中核派達は拳銃などをバッグなどに入れて盗難車に乗り込んだ後、エンジンをかけ始めた。
   集まったメンバー達は乗って行き士気を上げて出撃する。まず向かうは高句麗人民連邦の鋼将軍の財宝を着服した暴力団組長の自宅と支配下の事務所に向かった。自宅に向かう側と事務所に向かう側で分散して任務の実行に移す。盗難車とは言っても外国人追放を唱える団体メンバーを襲撃して奪った車であり持ち主は殺害して帆柱山に証拠隠滅部隊が隠した。
   事務所に到着した中核派はレンガブロックを組事務所の窓ガラスに投げてカチコミを仕掛けた。ガラスは見事に割れてびっくりした組員達が階段を急いで降りた。
   「おい、誰や！うちん所に喧嘩ふっかけたんわ！フクロにしてやる！」
   いかにもチンピラって感じの男が怒鳴り散らしていた。
   中核派の戦闘員はバタフライナイフで男の首を刺してさらに出てきたチンピラを背後から襲って取り押さえた。
   「若頭か組長はどこにいる？」
   戦闘員の1人が片言の日本語で質問した。
   「組長は今は自宅にいるが若頭なら中に待ち伏せしているはずだ！」
   チンピラは戦意喪失していた。
   「こいつを人質に中に入ろう！」
   つなぎの作業服着た男が提案した。
    「そいつは名案だ！」
    上下にカーキ色の軍用戦闘服を着て片手にデザートイーグルを持った男が笑顔で言った。
    若頭はドスを持って待ち構えていた。
    「シナチョン共め。小癪な」
    若頭はドスを持ちながら頭を抱えている。
    つなぎ作業服を着た男は人質にとったチンピラに拳銃を突きつけて若頭に近づいた。
    「将軍様の財宝をどこに売り飛ばした。」
    カーキの戦闘服を着た男は質問した。
    「そんなの組長に直接言えや！その方が確実だろう！」
    若頭は強気になって言った。
    カーキの戦闘服の男はデザートイーグルで若頭の顔を狙い撃ちして若頭の顔面は砕けた。
   若頭は顔を砕けさせてから後ろに倒れる。
   
    高句麗人民連邦
    高句麗人民連邦政府は旧北朝鮮の時代に問題視されていた食料不足による人民の栄養失調問題を見直し半島統一後に今まで朝鮮半島での文明をいかにどのように築き挙げていたのかを鋼将軍主体として見直され食物の源となる農業、水産業が盛んになり科学者も人民が安心して生活できるように食料開発の研究も繰り返されていた。
   主にキャベツやレタス、大根、高麗人参が盛んになり朝鮮の数多くの歴史を渡り歩いたキムチが売れロシアや中国、国交を築いている各国にも品の良いキムチとして知られていた。
   数日前にラオスに輸入した高句麗産キムチにバッタが入っていた劣悪品が出てきたという問題が起き東南アジア担当の商品検査員が粛清されている。粛清された理由は「我が統一祖国、高句麗人民連邦の品位を汚し世界に恥をかかせた。」ということだった。
    人民の暮らしは半島分断の時代では殺伐としていたのが今では遠慮することなく気楽に暮らせるようにはなった。しかし、国家の意思に背いた者は秘密警察によって逮捕され収容所に入れられるか公開処刑されるか二つに一つの罰がある。最近は鋼豚骨将軍こと労働党委員長が統一後の政策を変えたことにより人民の自由は認められることとなった。しかし、国家への不満を公的に口にしたり将軍の悪口、ネットへの書き込みをした者はほとんどが収容所に入れられている。日本との国交は文化的には認められているが政治や軍事的には認められておらず今でも緊迫している。なんにせよ韓国がなくなったことでお隣の国になったからだった。
   軍事力は国家が統一されて地上軍兵力が103万人だったのが500万人に増え、栄養失調問題が見直されてから人口も増え、男子を徴兵すればさらに跳ね上がるようにまでなっていた。海軍力も20万に増え、空軍力も海軍と変わらず20万をキープしている。農作物や食物を守る役割となる労農赤衛隊の人数が高句麗全国で450万に増加した。そして予備役は1000万人となっていた。その他、警察や保安部隊よ数は30万人、特殊部隊が40万人となっている。
   ヨーロッパではNATO(北大西洋条約機構)に加盟している国のほとんどがロシアの脅威に晒されていた。アメリカが主体となっているもののほとんどの加盟国が軍事的な財政赤字を抱え国防費を滞納している。中東ではイスラム過激派によるテロが頻繁に起きており西ヨーロッパでは国家主義テロリストや親露派勢力による暴動やテロが起きており世界的に緊張が高まっていた。
    北朝鮮は韓国を併合したことに関して国連から非難を受けるが非難をしている国連加盟国のほとんどがテロや近隣国との紛争、民族争い、資源争奪戦争に対して躍起になっており北朝鮮を相手にするほどの余裕がなくなっていた。まさに21世紀の世界大恐慌の幕開けとも言われていた。