エグザイル・ウォー 盈月の薔薇

ザクキャノン

序章 異国の大地

 2021年

福岡県北九州市 港町

 雨が降り波が高くなりながら港は雨音に包まれていた。
 男2人は青色の雨ガッパを着て舟止め場を防水性のデジタルカメラで船が手軽に止められる場所、海上保安部の警備が緩いポイントを画像データに残した。  
 「ここらは港湾警備員が定期的に軽自動車で巡回してるからな。見つかれば最悪、警察に連絡される。船を止める場所を最初に選定しないとな。」
 男はパートナーにそう言い現場を立ち去る。
 近年、北九州市戸畑区の銀座付近の港付近で北からの不審船や工作員と思われる不審人物が目撃されていると情報があり必ず近場の建物には通報を奨励するポスターが貼られている。昔、戸畑区のショッピングモールでSATYと呼ばれていたイオンモールでは東南アジア、韓国、中国、ロシア、東欧系の外国人労働者が買い物に来るようになっており港町は外国人労働者の巣窟になっていた。
    夜宮の町に行けば6月になると菖蒲の花が綺麗に咲く夜宮公園と呼ばれるデートスポットが存在して浅生方面には新しく建てられたスポーツセンターと神社があり昔さながらの街並みも残っている。
   元自衛官のボーはテレビをつけたまま部屋で寝ていて目を覚ました。テレビには韓国のニュースが流れており明るいニュースではなかった。
   (韓国の各都市で同時多発的に爆弾テロが起きた模様です。現在、警察、消防、救急隊が出動して救助活動をしており多数の死傷者が出ました。)
   アナウンサーが韓国での状況を伝えると画面には迅速に対応しようとしている警察機動隊の姿がアップされた状態で映し出された。
   
   韓国 某所 軍事施設及び米軍関連施設

   1日前、韓国軍武器管理倉庫から大字K5ハンドガンとK2自動小銃がそれぞれ5丁ずつ紛失した事案が起きていた。当直、警備に当たっていた兵士が行方を眩まして発見されておらず軍内では処罰を恐れて逃げたと噂知れているが何が原因で紛失したかは未だに解明できていない。致命傷にも防弾チョッキも同じ数程無くなっていた。
   韓国では武器紛失、軍兵士が姿を消したことが問題になっているが米軍基地でも警備のアメリカ兵が殺害されて数え切れない数の銃弾と自動小銃、手榴弾、短機関銃が盗まれていた。施設内の敷地には米軍兵の死体が多数あり、銃弾を受けて死んだ兵士や後ろからナイフで斬られて死んだ兵士の死体まで見つかった。犯人は単独では無く多数で行動した殺しのプロの可能性が挙げられた。
   今回のテロの犯人は消息不明になった韓国軍兵士か米軍基地を襲撃した謎の集団の可能性が浮上してきた。
   各都市で起きたテロ事件に関しての不安が募り米軍基地が襲撃されて武器が盗まれた事件に対する抗議や暴動が起こった。
   「アメリカ共がちゃんとしてれば武器盗まれることなくテロも起きなかっただろうが!」
   拡声器を持った中年の男が叫んでいる。
   周りの人達も「そうだ!そうだ!」と叫び、米軍基地の警備員や兵士に生卵や石ころを投げつけていた。
   兵士達は動揺しながら銃を構えて警備員が抗議してきた住民を説得するようにしているが、住民達は聞く耳を持とうとしない。
   住民の1人が米軍兵士に飛びかかって行き、パニックに
なった兵士がM4アサルトライフルを連射で発砲して向かってきた住人を殺してしまった。
    「くそっ、何てことをしてくれたんだ!同じ同盟国の人間を撃つなんて!」
   30代ぐらいの人が怒り狂って叫び、他の住人も団結して兵士や警備員に集団で群がって押し倒して行った。まるでゾンビ映画みたいだった。銃を装備した兵士でもいくら弾があろうと集団で襲われたりすればひとたまりもない。兵士達は無残に殴られ銃や装備も奪われて殺されてしまった。
   米軍隊員家族の居住地区にも暴徒化した住人が来て官舎に手榴弾を投げたりベランダに向けて火炎瓶を投げたりしていた。
   
   北朝鮮  
 
    朝鮮人民軍兵舎で上官の「呼集!」と言う叫び声とともに兵士が叩き起こされ銃を持って広場に集合した。
   旧式のT72戦車とT55戦車が綺麗な配列で止まり、戦車兵も顔を出した。
  「とうとう、我が祖国統一の為、来るべきが来た。それは資本主義という汚い考え方にまみれた愚民どもを叩く時が来たのだ。もう何十年も我が祖国はこの時の為に待っていた。」
   司令官は大声で演説をして、人民軍兵士達は万歳三唱を開始した。
   兵士達の指揮は高くAK突撃銃を上に挙げて「朝鮮統一万歳!」と全員で叫ぶ声が広場全体に広がった。
   
  日本  北九州
   
   市内の住宅地は静けさが溢れかえり土木作業員やサラリーマンがたわいもなく何事もなかったように通勤から帰る姿が目立ち平穏さを表現しているような雰囲気に包まれた。
   北九州での犯罪事情は近年、広域指定暴力団の勢いもなくなり不法労働者や入国者による犯罪が多発している。特にベトナム系やインドネシア系の外国人による自転車窃盗や車上荒しが増えているが決定的証拠が見つからない為、現地警察も頭を抱えている。
    港湾の死角になる場所に男が2人タバコを吸いながら海を眺めていた。1人はカーキ色のM65ジャケットを羽織ってズボンはジーンズを履いていた。髪型は短髪で横と後ろは坊主に近い短さに刈っていて目は一重で純日本人とは思えない。もう1人は黒色のMA1ジャンパーに黒のカーゴパンツを履いており顔はおとなしそうな青年のようだった。
   カーキ色のM65ジャケットを着た男はジョン・カンファン。北の特殊8軍団出身の中佐で何年も前から日本に潜入している。
    黒のMA1を着ている男はター・チンコウは日本国内における暗殺活動を遂行する工作員ながら格闘戦のプロフェッショナルでいわば当局の殺し屋。東西のあらゆる銃火器を使いこなして将軍派と対立する組織の連中を始末してきた。祖国のナンバー2が粛清されて以降、北の財宝を着服していた工作員とその協力関係にある暴力団関係者を暗殺して実績を残してきた。
   夜空が暗く澄んできたところで船が到着した。船からは新しい面子となるポー・スンウェイが船から降りてきた。
   「この場でお会いできて光栄であります。ジョン中佐。」
   ポーはジョンに挨拶した。
   ポーはコンピューター解析に長けたハッカーで敵対国のインフラ破壊、データ盗用、情報分析に長けている。反逆者の情報を暴いてきたのも彼である。
   「同志よ。直々、南朝鮮も我が共和国人民の手元となる。待ち侘びた祖国統一まで目の前だ。勢力を伸ばす足場となる九州を落とす為にこうして集まってもらった。」
   ジョン中佐は2人にそう告げて船員に渡されたリュックを受け取った。
  「長居は無用だ。警察と港湾警備員に姿を見られたらバツが悪い。隠れ家に向かうぞ。」
   ジョン中佐はターとポーを先導して行った。
   アジトは古寂れた部落の跡地からできた廃墟で暮らすなっておりそこには人民軍御用達の寝袋が人数分ほど用意されており、定期的に調達される食料や日用品まである。
   アジトに到着すると中に待ち構えていた作業服の男が消音器付き拳銃を構えていた。男の名前はカン・ヴィンス。武器弾薬、生活用品、食料調達を行う調達要員。任務に必要になる物資をありとあらゆる場所から盗んだり警備が厳重な場所でも盗みを働く勇者と言うべき強者だった。
   「銃を下せ。カン・ヴィンス同志。」
   ジョン中佐は手で合図して言った。
   これで4人目になりあと1人、後日メンバーに加わる予定になっている。
   ポーは情報解析に必要なノートパソコンを取り出してラジコン型ドローンとパソコンタイプのコントローラーを取り出してチェックを始めた。それぞれのリュックやバッグには、いざという時に自身の身を守る為に支給されたFN社製のピストルであるブローニングハイパワーと呼ばれるサイレンサー付きとチェコ製のVz61スコーピオンのコピー生産仕様サブマシンガンが入っていた。
   北ではスコーピオンサブマシンガンを使うのは特殊部隊や航空機パイロットに多く狭い空間でも取り回しが良い事で知られている。
   翌日、あと1人の要員を迎えに行く為に4人は準備をして小倉にある民間の体育館に向かった。
   体育館の出入口付近に向かうと1人の要員と合流できた。彼はハン・マシュマー。北朝鮮武術の撃術とイスラエルのクラブマガに精通した戦士で空手黒帯等相手にもならないぐらい強靭な戦闘能力を誇る男だった。
   これで5人全員揃ってそれぞれ単独行動をするようになった。集団で行動となると返って怪しまれて通報されかねないからだ。
   ジョン中佐は連絡員と夜宮公園で会い菖蒲園のベンチに座った。
   「この戦争は傀儡軍は破れて共和国主導で統一されるだろう。後ろ柱として中国の瀋陽軍区が軍事顧問としてつくようになった。米帝の基地も我が同志と道化した民衆が人質に取ってるからな。」
   連絡員はジョン中佐に語りかけた。
   「傀儡軍は強そうに見えたがあれは世論が過大評価してるだけだ。資本主義の汚物に汚れた愚民どもは今そこにある危機と言う現実に目を背けようとするからな。」
   ジョン中佐はこの戦いは祖国が勝利すると確信しているかのように答えた。
   
   数ヶ月後 韓国
   
   朝鮮人民軍の圧倒的な兵力と巧妙な戦術に韓国軍は敗退していき朝鮮戦争初期みたいに釜山まで追い込まれてしまっていた。米軍基地も牙を向けてきた住人達に乗っ取られてしまい手出しできない状態にされ韓国政府は北朝鮮側に脅されて手が出せず青瓦台はあっけなく陥落して政治家は赤派が多くあっさり北朝鮮側に寝返ってしまい愛国心の強い韓国兵や武装警備員、警察官には必死になって戦うが勇猛果敢な北朝鮮兵の勢いにやられて多数の戦死者が出て生き残った者は北朝鮮側の捕虜になった。制圧して行った地域には朝鮮人民軍の検問所が設営されて天幕やプレハブが建てられていた。
   僅かな戦力しか残って無い韓国軍は無条件降伏をして北朝鮮主体として半島が統一される事に同意する事になった。
   
   
   

   
   
   

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