異世界から勇者を呼んだら、とんでもない迷惑集団が来た件(前編)

ドラゴンフライ山口(トンボじゃねえか!?)

※5話











≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡


 ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦。
 東方大陸に存在するこの国家は、人族の5つの大陸に存在する10を超える国家と一線を隠した独特の政治形態を取っている。
 社会主義。
 赤旗国家と称される所以となっている、君主制を認めず国家の頂点に座る個人が存在しないこの独特の政治形態がこの国の最大の特徴とも言える。


 そんなジカートリヒッツ社会主義共和国連邦は、東方大陸の北東部に国土を有している。
 そして、海洋を隔てた先にある魔族大陸。人族の長年の天敵である魔族の脅威に最初にさらされるであろう地に国土を有していることから、ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦は異世界より勇者を召喚し魔族に対する切り札とした。


 ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦に召喚された勇者は、全部で12名。
 勇者の召喚に成功したことにより、ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦は魔族の脅威に対抗できる手段を手に入れた。
 …はずであった。


 ことの発端は、勇者の召喚が成功したその日に起きる。
 召喚の翌日、勇者の1人が見るも無残な事態となって発見された。
 その損傷はあまりにもひどく、衣服と行方不明となった勇者の存在からようやく身元が判定したほどである。
 殺された勇者の名前は井上 幹。
 ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦に召喚された6人ずつの2つのグループの1つ、加賀見 総馬がリーダーを務める方の班に所属している勇者の1人である。
 ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦に自国が召喚した勇者を殺すメリットもなく、しかし勇者たちの方にも社交的なムードメーカーであった井上を殺す動機を持つ者もおらず、事件の犯人は魔族かもしれないという仮説がたった。
 勇者たちはジカートリヒッツ社会主義共和国連邦と連携して事件の調査と犯人の捜索を行う傍ら、加賀見の主導により勇者を殺すことが目的であると推測されるその魔族を釣り出すための作戦が立案される。
 魔族の狙いが勇者の殺害ならば、井上だけで終わるはずがない。
 一対一で勇者を倒せる魔族の刺客に警戒するとともに、調査と作戦を行おうとしたのだが、そこに新たな訃報がもたらされた。
 また、加賀見の班の中から行方不明となった勇者が出たのである。
 2人目の犠牲者は、浅利 有佳子。加賀見の班の中では唯一の女子で、彼女もまた内向的で大人しい人に恨みを買うような生徒ではなかったことから、勇者でもジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の犯行でもないと、魔族の仕業であるという可能性が濃厚な線として出ている。
 死体は見つからなかったが、生きている可能性は低いと判断された。


 加賀見が魔族の刺客をつりだすために立案した作戦は、いわゆる囮作戦である。
 見るからに弱そうな浅利を使い、魔族をおびき出してから加賀見班の残りのメンバー全員でもって一気に叩くという内容はいたってシンプルな作戦だった。
 だが、唯一の女子メンバーである浅利をやられた以上、加賀見たちはこの作戦を断念せざるおえなかった。


 異世界召喚という事態にいきなり巻き込まれ混乱する中で、立て続けに仲間が殺されていくという事態は、一介の高校生に過ぎなかった彼らに大きな動揺を与える。
 井上に関しては死体が、それも見るのもできないほど凄惨なものとして発見されているのである。
 そのような残虐な行いができる刺客が存在し、その刺客が属している種族である魔族と戦うために召喚されている。異世界召喚と勇者補正の力に溺れ高揚していた勇者たちの士気は、それらの立て続けの事件によって大きく下がってしまっていた。


 そんな中、陰鬱とした雰囲気を盛り返すために、加賀見班の勇者の1人として召喚されていた千田 敦也は、加賀見班ともう1つジカートリヒッツ社会主義共和国連邦に召喚された勇者のグループである江山班の一員である香椎 彩子の誕生日会を企画する。
 香椎はクラス内でもその温和な人柄から多くの生徒に信頼され慕われていた存在でもあったため、陰鬱とした気分を紛らわし自身を奮い立たせるためにと参加した他の勇者たちもジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の参加者たちも、大いに彼女の誕生日を祝い盛り上げた。


 千田は香椎に対して想いを寄せており、かつて一度告白して振られた経験がある。それでも諦めきれずに千田は香椎に対して好意を寄せていた。
 当たって砕けろが信条の千田は、この誕生日会を機にもう一度香椎に告白する決意を固めていた。振られたとしても覚悟の上だし、受けてくれればこれ以上ない幸せであり、また勇者のみんなにさらなる朗報を届けみんなの絆を一層深められると張り切っていた。
 誕生日会は大成功を迎え、千田は意を決してみんなが後押しする中で香椎に告白する。
 その返答は、2人だけの秘密。
 陰鬱とした日々が過ぎる彼らにもたらされた嬉しいニュースとなる。


 –––––だが、その立ち直りかけていた彼らに、見えない刺客は容赦ない牙をむいた。




 それは、香椎の誕生日会が大いに盛り上がった翌日の夜だった。
 1日姿が見えなかった香椎と千田。彼らの雰囲気を察し介入を避けていたものの、さすがに江山は心配となり2人を探すために連邦首都ザンドベルクを歩いていた。
 夜の首都は冷える。ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦では夜に出歩くという習慣がないため、その人通りはまばらである。


「…っ」


 ポケットに手を突っ込みながら、江山は街中の冷える夜道を歩いた。


 会場に2人の姿は残っていなかった。
 どこか見晴らしのいい場所に行ったかもしれないが、加賀見が単独行動や離れた場所への移動を避けるように指示している。
 2人もの仲間をやられて犯人も見つかっていない現状で、しっかり者の香椎や千田が勝手な行動をとるとは思えない。少なくとも首都の中に入るだろうと、江山は考えている。
 一応、同じ班の仲間である六人部むとべにも協力してもらいながら、捜索をしている。
 ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の首都であるザンドベルクは比較的治安の良い街ではある。日本に比べれば確かにひどい治安ではあるが、これでもジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の中ではまともな方である。
 勇者補正により驚異的な身体能力を手にしている今、人族の悪漢程度にやられるはずはないと見ているが、不安はぬぐえない。
 なんとかしてはやく2人を見つけなければと、江山は歩調を早めて小走りで街中を探し回る。


 あまり接点がなかったためにほとんど立ち寄ったことがない、西側の広場に着いた。
 広場の中心には、以前も聞いた通り噴水があるが、水は張っていない。
 夏になれば水を流すというが、冷える季節では凍ってしまう可能性が高いという。


 聞いた話だと噴水がある程度ということだったが、暗闇の中、噴水の上には何やら十字架のオブジェがたっていた。
 それが何かは夜闇により江山の目には判別がつかなかったが、キリストの死刑に処されている際の様子を描いた絵のようだと漠然とそう感じた。


 〔見慣れないオブジェだな…〕


 十字架に人らしき者の姿がくくりつけられているように見えたが、シルエットのみしか判別できないので江山にはそれがなんであるかははっきりとは見えなかった。
 ただ、ごくわずかに往来を歩くジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の人たちはそれを一切気にもとめずに歩いて行っているので、江山はもとからあるオブジェなのだと思ってしまう。


 〔人が括られていたとしたら、相当悪趣味だな〕


 感心しないという感想を抱きながら、そんなことよりもと江山は香椎の捜索を再開する。
 江山にとって香椎はまたとない大切なパートナーでもある。
 高校時代から親友同士ということもあり、六人部に比べて探す脚に力が入っていた。


 〔彩子、どこにいるんだ…?〕


 焦りと周囲のオブジェに対する無関心さから、彼女はそのオブジェの正体を完全に見落としてしまっていた。










≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡


 江山が広場を走り去ってしばらくした頃、その広場にもう1人の勇者の姿があった。
 紫色を帯びた髪を左側に一括りにまとめたサイドテールと深みのある藍色の瞳が特徴の江山班に所属する勇者の1人である、六人部むとべ 箕梨みのりである。
 彼女の職種である『偵察兵』は念話という特定の相手やグループと遠距離から思念による会話が可能な魔法を扱える。そのことから江山の要請を受けて、一緒にまだ帰ってこない2人の仲間を探してザンドベルクの暗くなった街中を疾走していた。
 先ほどから六人部は香椎と千田に対して念話による呼びかけを行っているが、全く反応がない。


「あれ〜? おかしいっすね、これだけ呼びかけても反応がないなんて」


 一度足を止めた六人部は、広場で立ち止まり顎と腰に手を当てて考え込む。
 思念により会話を行う念話の魔法は、相手の意識が覚醒していれば必ず通じるはずなのだが、先ほどから呼びかけているものの全く反応がないのである。
 可能性としては、2人が完全に寝ているということなのだが、こちらに連絡もなく勝手に宿を取るというのは千田はともかくとして香椎の性格からしてありえない。少なくとも、六人部を通して江山に報告してからにするだろう。
 何しろ今は姿の見えない刺客に仲間である勇者たちが襲われているのである。
 いくら熱い間柄になったとしても、そのことを忘れるようなことはないはずだ。


「うーん、いったいどういうことやら…セッ◯ス中でもウチの念話は拒否れるような代物じゃないから、喘ぎ声とか聞こえるはずなんすけどね」


 何の脈絡もなく卑猥な単語を連発しているが、別に六人部はそういうのに慣れているとかいうわけではない。
 単に1人の時ならば口にしても気にしない奔放で気分屋な性格というだけである。


 六人部の職種である『偵察兵』は、索敵や感知、解呪、狙撃といった行動を得意とする戦闘というよりは支援に偏った魔法などを保持している。
 その中でも索敵魔法は一定の範囲内に探す対象の存在を感知することが可能な魔法である。
 ザンドベルク中央部にて使用した時は2人の反応がまるでなかったが、六人部はこの魔法の索敵範囲がそこまで広くはない。ましてやここは滅多にきたことがないザンドベルクの西側の広場である。


「このあたりでもう一回、索敵魔法使うっすかね」


 ここならば何かしら反応があるかもしれない。
 そう考えた六人部は、索敵魔法を発動させた。


 …すると、すぐ近くに千田の反応を見つけた。


「おっ! サッカー部のチャラ男発見。彩ちゃんは…この辺りにはいないみたいっすね。あれ? ひょっとしてバラバラに行動していたとかっすか?」


 六人部が確認できたのは、広場の中心にある千田の反応だけで、香椎の姿は見当たらなかった。
 このあたりにいないことは確実だろう。


「何はともあれ、千田っち発見すね」


 とにかく、目的の探し人の1人目は見つかった。
 索敵魔法によると、広場中心部の噴水の上である。
 そこには暗がりでシルエット程度しか見えないが、水のない噴水の上に巨大な十字架があり、そこに磔にされるように1つの人影があった。
 位置的に、あれが千田のはずである。


 まさかの十字架くくりつけに、思わず六人部は吹いた。


「プッ! ちょっ、千田っち何してんすか!? えっ? 磔? ひょっとしてイエスの真似とかっすか? 面白いこと考えるっすね」


 軽口を叩きながら、六人部は千田に近づいていく。
 念話を飛ばしても反応がないということは、ここで寝ていたのだろう。
 風邪をひいてはダメっすよ、と言いながら、六人部は噴水に近づいた。


 –––––千田が既に死んでいることには気づくこともなく。


 噴水によじ登る。


「よっこらせっと。何してんすか、千田っち。みんな探してるっすよ」


 噴水に登った六人部は、磔になっている千田を揺さぶる。
 すると、千田の方に触れた手に何か水分が付着した。


「…? 千田っち、ひょっとして噴水突っ切ったんすか?」


 噴水の水は一月以上前から停止しているが、六人部にはそのくらいしか千田が濡れている理由が思いつかなかった。
 とりあえず、千田を揺さぶりながら江山に念話を送る。


「…もしもし、リンリン? ウチっす、六人部っす」


 〔もう少しまともな言葉遣いはできないのか? チャラチャラし過ぎだ〕


 早速、本郷に並ぶ堅物として有名な江山から叱責が入る。
 それをスルーして、六人部は江山に用件を伝えた。


「まあまあ。それより、西の広場の噴水で、千田っちを見つけたっすよ。なんか十字架にくくりつけられてガッツリ寝てるみたいっすけど、何すか? これって、彩ちゃんの趣味なんすか?」


 〔そんなわけないだろう。わかった、今から行く。とりあえず千田を叩き起こしておいてくれ〕


 呆れたため息交じりで、江山は六人部に指示をする。
「ウィーっす」という気の抜ける返事とともに、六人部は一旦念話の魔法を解除した。


「とりあえず、千田っちを起こしますかね」


 肩を揺さぶるくらいでは起きない。
 千田は結構鈍感なので、ビンタでも起きないという話を聞いたことがあることを思い出した六人部は、顎に手を当てつつ少し手段を考えて、1つの案を思い浮かべた。


「…起きないんなら、これでどうっすかね? 男ならこれで大抵起きると思うんすけど」


 かがんで千田の腰のあたりに目線を下げる。
 そして、十字架にくくりつけられている千田の男子のシンボルにちょっかいを出そうとした時だった。
 六人部の伸ばした手に、一滴の何かがかかってきた。


「? あれ、千田っちもう◯ったんすか? ウチまだ◯えてすらいないんすけど」


 悪ふざけなセリフを吐きつつ、その何かを確かめる。
 匂いは何やら鉄臭い…いや、血の匂いがした。


「血? 何すか、これ? 世に言う(自主規制)ってヤツっすかね?」


 それは迷信である。
 ともかく、垂れてきたもとである千田の顔を見上げる。


「…え?」


 その時、六人部の目は丸くなった。
 見た光景があまりにも現実離れしていたため、それがどういったものなのか理解が追いつかなかったとも言える。


 見上げた先にあったのは千田の寝顔ではなく–––––


 –––––肉片や筋繊維をわずかに残している真っ赤な髑髏だった。




「…千田っち? 何すか、それ? 新手の特殊メイクっすか?」


 震える声で尋ねる六人部だが、千田は答える気配がない。
 というよりも、答えられない。
 彼の命はすでに尽きており、その顔から落ちる肉片が六人部に幾つかつくだけである。


 千田の状態を見て、六人部は顔が青ざめていく。
 認めたくなくても、その光景が千田が死んでいるという事実を突きつけていた。


「いや、千田っち…冗談キツイっすよ。何すか? 赤い髑髏っすか? こんな夜中に、そんな格好、さすがに風邪ひくっすよ…」


 六人部は目を離さなければと思うが、体はいうことを聞かずその目は千田の骸に釘付けとなっている。


「六人部? おい、何があった!?」


 そこに、江山の声が響いた。
 六人部の連絡を受け、広場に到着したのである。
 江山の声が聞こえ、六人部は千田の骸からは目を離せぬままに、震える声でそれでも受け入れられない事実を拒絶するように言う。


「あ、リンリン…遅いじゃないっすか。千田っち、風邪、ひいちゃいますよ…。ハハ、ねえ、千田っち…返事くらい、して、欲しいっすよ…」


「六人部? おい、何を…っ!?」


 近づいたところで、江山もその正体に気づいた。
 先ほど見逃していたオブジェにくくりつけられていたのが、千田の変わり果てた姿だということに。


「千田…」


 返事はない。
 あるはずもない。
 彼はもう、死んでいるのだから。


 そして、千田が死んでいるという事態が江山の脳裏にさらなる悪夢を連想させる。


「…彩子。彩子は? 彩子は、どこだ?」


 言い知れぬ不安が湧き上がる。


「彩子…。彩子!」


 千田の死。
 それが、直前まで一緒にいたであろう親友の身に何かが起きたかもしれないという最悪の想像につながる。
 江山は夢中でその場を飛び出し、ザンドベルクの街中を走り回った。


「彩子! 頼む…返事をしてくれ!」


 親友の名を叫び、ザンドベルクの中を駆け回る。


 …だが、その日は結局、香椎を見つけることができなかった。










≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡


 千田の死。そして香椎の行方不明。
 いっとき明るくなっていたジカートリヒッツ社会主義共和国連邦に召喚された勇者一行は、この訃報に再び沈んだ空気となってしまった。
 特に一晩中駆け回っても親友を見つけられなかった江山は過労で倒れてしまい、悪夢にうなされている。起きたとしても、正常でいられるかどうか怪しい。
 六人部も凄惨な死体を見てしまったショックから、うつ病のような状態となってしまっている。立ち直るには相当な時間が必要だった。
 異世界よりの勇者を取り繕うとも、彼女たちは結局のところ平和な国の高校生でしかない。こうなってしまうことも無理はなかった。
 江山が立ち直っていない以上、ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の勇者たちは加賀見が中心となってまとめている。


 千田の死体が見つかった広場にて、その死体の確認に来た加賀見と中井なかい 辰也たつや、加賀見班の一員である喜多村きたむら 裕翔ゆうと、江山班のメンバーの1人である東田ひがしだ 愛華あいかは、ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の社会党幹事長のグローツェンとジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の勇者召喚を指揮した書記局の首席である書記局長のヴォンシェルドらとともに皮と肉を剥ぎ取るという凄惨な殺され方をした千田の死体が下ろされたのを見届けた後、死体の確認とともに事件について再び話し合っていた。


「千田…恨むならば俺にしろ。全て俺の責任だ」


 所持品などから間違えなく千田の死体であることが確認できた。
 加賀見は、千田の生徒手帳を握りしめつつ、運ばれる死体にそう呟く。
 千田が香椎に告白するための舞台を整え、2人きりの時間を与えたのは加賀見と江山である。香椎は行方不明で、千田は殺されている。千田が殺された原因は彼に単独行動に近い事を勧め、許可した自分にあると、加賀見は責任を感じている。
 どうせ恨むのであれば、犯人に対する手を打てなかった俺を恨めと、そう加賀見は先に逝ってしまった仲間に告げた。
 同時に、何としてもこれ以上の被害を出すわけにはいかないという決意を新たにする。
 ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の面々は黙祷、勇者たちは合掌で仲間の骸を見送った後、加賀見は周囲の面々に声をかけた。


「全員、聞いてくれ。今回の事件について整理したい。これ以上、俺は仲間を殺させるわけにはいかない」


 加賀見の言葉に、喜多村、中井、そして東田が頷く。
 ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の面々も同様に、これ以上手をこまねいていることはできないという覚悟を瞳に宿して頷いた。
 それを受け取った加賀見は、面々に対して自らも決意を新たにという意思表示として頷き返してから、事件の概要について整理することから始めた。


「まず、事件を整理したい。俺と江山が最後に千田と香椎を見送ったのが、誕生日パーティーが終わった直後だ。二次会に皆を誘導して、千田と香椎を2人きりにした」


「ここまでは、他の皆も同じでしょうね」


 東田の言葉に、中井と喜多村も頷く。


「ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の皆さんも同じだったと思うよ。ルビンスキー党首、ウリヤノフ総裁、フランガニット書記長。少なくともこの3名は同席して、江山たちが探しに出るまでは、一緒に過ごした間違えない」


 そもそもジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の人たちを加賀見たちは疑っていない。
 彼らが知りたい事件の情報は目撃証言。別れた後の香椎と千田の行方を知る人物の存在にある。
 とはいえ、あのようなオブジェに千田の死体をくくりつけるなどという作業をするには相応の時間が必要となる。犯行に要する時間を確保するには、江山たちが探しに出る前には作業に取り掛かっているはずである。
 つまり、二次会参加メンバーは自然と犯人からは除外されるのである。


 ただし、その場合だと怪しい人物が浮上する。
 動機はともかくとして、二次会参加を拒んだ勇者が何人かいた。


 1人は六人部。彼女は死体の第一発見者でもあるし、状況的には犯行が可能である。
 ただし動機がない。それに、井上殺害時にはアリバイが六人部にはあった。
 同一犯と断定するのは早計かもしれないが、立て続けに勇者が次々に殺されたり行方不明となってしまったりしていては、同じ犯人という線を疑いたくなってしまうものである。


 犯人の可能性としては、魔族の存在がある。
 ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の南にあるネスティアント帝国という国がある。これも勇者を召喚した3つの国の1つに当たるのだが、そのネスティアント帝国の西方国境、ソラメク王国という国との国境にて魔族が出現し領地の一部を占領したという情報がこの国に入っていた。
 ソラメク王国はすでに討伐軍を派遣しているものの、未だに出兵した王国軍は誰1人として帰ってきていないのだという。


 つまり、人族の領域に既に秘密裏に魔族が侵入しているということになるのである。このジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の中に魔族が入っており、勇者の暗殺に動いていたとしても何も不思議もない。


 二次会に参加していないというのであれば喜多村もいるが、彼にはもちろん動機の類はない。日和見主義でトラブルと親密な人間関係を避けたがる彼は、千田に対して恨むような動機がなかった。
 なので喜多村が犯人という線も薄い。


 動機的にはいじめられていた過去のある中井の可能性が大きいが、本人には二次会に参加しているというアリバイがある。
 それに彼がいじめを受けていたのは加賀見と井上であり、千田や香椎、浅利は対象外のはずである。
 よって中井の線も薄かった。


 仲間を疑うわけではないが、やはり犯人は魔族の可能性が高い。
 加賀見は犯人を魔族と見ていた。


 ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の面々は首都の防衛を強化し、多くの警備兵に加えて軍隊までも巡回や護衛に立たせるなどして対応している。ルビンスキー党首をはじめとするジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の面々は、捜査や護衛など、事件の再発防止と解決に向け全面的な協力をしてくれている。


「これで4人…いや、まだ香椎は諦められない。希望を持って3人だ。3人の仲間がやられてしまっている」


 加賀見が言葉を紡ぐ。


「もう、これ以上は失うわけにはいかない。事件を解決し、犯人を叩き潰す! みんなの力と知恵を貸して欲しい」


 千田も井上も、加賀見にとっては仲間といえる存在である。
 特に井上は、自身の背負い続けている影の面を知る親友。
 それを殺されたことに対しての憤りは収まってなどおらず、未だに踏ん切りがつかずにいる。


 加賀見に対して、最初に返答したのは東田だった。


「大丈夫よ。私はもちろん、彩子を助けられる可能性にかけたいし。協力させてもらうわ」


「ぼ、僕も、いけますよ…」


 気弱なヲタク男子である中井も返事をする。
 加賀見から以前は暴力を受けていたものの、すでに2人の仲は改善されている。
 中井の参加表明を、加賀見は心強く感じた。


「すまない、中井。あの頃の事は…」


「いや、いいよ。僕はもう、許すって決めたから」


 中井の言葉は加賀見の胸にしっかりときた。
 もう、あの頃の傷付けて傷つけられるような関係ではない。
 今の加賀見にとって、中井は大切な班員であり、苦難を乗り越える仲間であり、この見えない敵から守るべき友となっていた。
 それが分かっただけでも、彼にとっては朗報だった。


「ああ…」


 加賀見の中で、その決意は固まりつつあった。
 守るべき仲間がいるのならば、リーダーとして加賀見が務める役割は決まる。


「聞いて欲しい。1つ、作戦がある」


 顔を上げた加賀見は、かつて断念した作戦を伝えることにした。


 それは、浅利を用いた囮作戦である。
 外見的に狙われやすそうだった浅利が行方不明となった以上、新たな囮を立てる必要がある。
 それを用いて魔族の刺客を釣り上げるというものである。


「なるほど、囮作戦ですか」


 ヴォンシェルド書記局長が頷く。


「犯行現場は首都に集中していますので、地理に関しては我々が協力いたしましょう」


「助かります。あなた方の協力は本当に心強い」


 ヴォンシェルドと加賀見が固い握手を交わす。
 一方で、加賀見は作戦の概要についてもまとめている。


「それで、どうするつもりだい? 釣りやすそうな囮は、江山さんの班から出す?」


「いや–––––」


 喜多村の問いに、加賀見は首を横に振る。


「刺客の犯行は千田の例をとると単独行動であれば狙う確率が非常に高い。獲物の様子など無視しての強襲だろう。一対一ならば絶対に勝てるという自信があるのかもしれない。そこで」


 加賀見は片手を自らの胸に当てた。


「今回の囮は俺がなる」


 最も危険な役割を自ら引き受ける。
 加賀見の言葉に面々が様々な反応を示すが、加賀見はその理由を口にした。


「俺の職種である『聖剣士』は人族や勇者の攻撃に極端に弱い反面、魔族と天族との戦闘時には爆発的に能力が上昇する『天魔駆逐てんまくちく人類守護じんるいしゅご』の聖術を授かっている。むしろ囮としては十分なはずだ」


 作戦の概要はこうである。
 決行は今夜。首都の街中を加賀見は1人で徘徊する。
 常に六人部を介した念話を用いて現状を確認しつつ、街に勇者たちを集めて待機させる。
 喜多村の『支援兵』が転移魔法を行使可能な職種なので、加賀見が襲撃を受けたら喜多村の転移魔法を用いて魔族の刺客を勇者のもとに加賀見ごと転送する。
 あとは、一網打尽とする。


「…というふうに、シンプルなものだ。六人部の念話と喜多村の転移魔法が鍵となる」


 喜多村の方を向くと、相変わらずの腹の底が読めない笑みを浮かべつつ、承諾したように頷いた。


「了解。頼ってもらって結構だね」


「私たちは?」


 東田の問いに、加賀見は襲撃犯に参加するよう伝える。


「江山の班も参加可能な面子を集めて襲撃に参加して欲しい。大丈夫だ、俺がいる限り、決して仲間に危害を加えさせたりはしない」


「六人部さんは…経由としての念話なら維持させるだけでいいですね」


「ああ。立ち直ってもらうまではいかなくていい。東田、頼めるか?」


「分かったわ」


「…よし」


 加賀見も決意も新たに宣言する。
 決して仲間を傷つけさせない。それが、井上たちに託された自分自身の役目だと、加賀見はそう感じていた。


 暴力依存。
 他者に暴力を加えることでしかストレスの発散ができない。
 加賀見の抱える裏の顔であり、自身の中で最も嫌悪している一面である。
 その嫌悪がストレスとなり、他者を殴る。加賀見の中に形成された悪循環は終わりを知らない。


 他者を傷つけることしか、仲間にさえ手を上げてしまう自分の裏の顔であり、本性。
 加賀見は自身に潜む闇の存在を肯定することができない。
 他者を傷つけるだけなのが、加賀見にとっては苦痛でもあった。
 緩和されないストレスの蓄積。
 中井に手を上げた時も、常に後悔に潰されそうになった。
 そのような後味を受けることなく殴れた浅利も、行方不明となっている。


 この暴力の塊の自身。
 せめて、加賀見は仲間を守るためにその暴力に彩られた体を使いたかった。
 そして、この囮作戦はその最大の好機とも言えた。


「必ず、残り全員で生還してみせる。みんな、力を貸してくれ」


 優等生として通し、リーダを任されている自分が暴力魔であることを悟られたくはない。
 だが、この仲間を守りたいという決意はまぎれもない加賀見の本物の意思である。
 頭を下げた加賀見に、反論するものなど1人もいなかった。




 –––––たった1人を除いて。


「…いいこと聞いた。それが、お前の職種の限界というわけか」


 底冷えするその声は、この場にいないものの声。
 さりとて、聞き覚えのある声。


 頭を下げたまま、加賀見の脳裏にその声の持ち主が選定される。


「…は?」


 なんでこの女の声が?
 そう疑問を抱いた時、加賀見の体を強い衝撃が貫いた。










≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡


 –––––虫唾が走る。


 加賀見の言葉を、瞳を、決意を感じるたびに、私の中の感情はその言葉を連発する。


 虫唾が走る。
 今更何を。
 お前が、仲間を?


 暴力を振るってきたその拳で、仲間を守る?だと。


 笑わせるもの大概にしろ。
 綺麗事を並べる貴様は、もうたくさんだ。


「…いいこと聞いた。それが、お前の職種の限界というわけか」


「…は?」


 突然の私の声に、加賀見が目を丸くする。
 顔を上げた時、私の今の姿を見て、疑問符を浮かべる。


 その加賀見の体を、私は力一杯蹴り飛ばした。


「ガ–––––!?」


 吹き飛ばされる加賀見。
 なるほど、あいつの言葉は本当のようである。
 人の攻撃には極端に弱くなる、か。
 強者の立場を常に崩さなかったあいつが落ちる様は、滑稽でもあり、虫唾が走るものでもあった。


「ちょっ!? な、何をするんだい!」


 中井が喚く。
 私につかみかかってきたその手を、容赦なく握りつぶした。


「黙れ、下衆。醜いデブオタが!」


「アギャアアああ!?」


 喚きながら、中井が折られた手を掴みつつ後退し、その場にみっともなく尻餅をついた。
 豚が転げるような様だった。似合良すぎるその様に思わず笑っちゃう。


「ヒヒヒ…アハハハハ! ダッサ! 気持ち悪いんだよ、このデブ!」


「ま、待っ–––––ウブッ!?」


 その顔面を蹴り上げると、汚い唾を飛ばしてデブが転がる。


 気持ち悪い…気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!
 汚らわしいデブ。私を地獄に引きずり込み、這い出て行ったデブ。
 今更許すとか、許されるとか。
 ふざけるのも大概にしろよ。


「な、何をしているの!?」


 状況に全くついていけてなかった江山の腰巾着が喚く。
 東田、とか言ったっけ? そんなやつ知らない。
 でも、踏みつけようとデブに近づく私の前にそいつは立ちふさがった。


「何考えているのよ、喜多村!」


 そして、わけのわからないことをわめいた。
 喜多村が、何?


 と、そこまで言われてようやく思い出した。
 そういえば、そうだった。
 中に忍び込んで加賀見を殺す場面を探すために、喜多村の皮をかぶっていたんだった。
 それなら喜多村に見えても仕方ないよね。


 フフ…あいつらしい最後だ。
 最後の最後まで、己という存在を知られぬままに、閉じ込められた部屋で餓死していく。孤独死していく。入れ替わられてもまるでわかってもらえない。
 存在を忘れられるという、死以上の残酷な孤独の中で、あいつは死んでいった。
 日和見主義の自業自得である。


「ああ、ごめんごめん。これじゃわからないか」


 喜多村の皮をかぶるもの、嫌気がさしてきた頃だし。
 ここでいっちょ大胆に脱いじゃおう。
 メリメリと、指を入れて皮を剥いでいく。


「ま、まさか…」


 あらわになった私の顔を見て、加賀見は驚いた表情を見せてくれた。


 加賀見だけじゃない。
 ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の面々も、東田とかいう奴も、クソデブなヲタクも、みんな目を丸くして驚いている。
 それもそうか。こんな早変わり、私の職種でなければ出来ないから。


「あ、あさ–––––ッ!?」


 ガタガタと震えながら私の名前を口にしようとしたデブに、喜多村の生首を蹴りつけて飛ばす。
 綺麗な線を描いて、クリーンヒットした。


「黙れデブ。その汚い口で言うな」


 興ざめ。
 苛立ちを隠すこともなく、私はデブを黙らせる。


 正体を現した私に、ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の連中は即座に反応した。


「書記局長、勇者様、お下がりください! 衛兵、書記局長と勇者様をお守りしろ! 詰め所に伝令し、増援を回せ! 他の者は戦闘態勢!」


 ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の社会党幹事長グローツェン。
 そいつの命令のもと、衛兵たちが混乱する勇者という名のクズどもを守るようにして動く。
 グローツェン自身も大斧を手に立ちふさがった。


「一体これは何のおつもりですか、勇者様?」


 斧を手に私と東田の間に立ち塞がったグローツェンが尋ねる。
 それを冷たい目で見下ろす。
 なんで、こんな関係ない奴が出しゃばるかな…?


 私の職種『復讐者』は、復讐対象に含まれない連中相手には本来の力を発揮できないという難点がある。
 私は別にグローツェンのことを嫌いとかいうわけでもないし、ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の人達も恨んでいるということはない。
 むしろ、こんな世界に連れてきてくれて、私に復讐の機会をくれて感謝しているくらいだ。


 中井が衛兵に支えられて運ばれようとしている。
 東田もグローツェンの背中に守られながら、混乱して動けない中を衛兵隊に連れて行かれる。


 そして、加賀見まで。


 …ダメだ。ここまできて逃がしてなんてやらない。


 最後の警告。
 グローツェンとこの国の人たちを巻き込みたくないっていう、私の情け。


「ねえ、グローツェン。どいて。さもないと…酷いことするよ?」


 私がかけた情けに、グローツェンは斧を向けて答えた。


「いいえ! 浅利様、申し訳ありませんが私めには勇者様を守る義務があります! それを害するというののであれば、あなたは敵だ!」


 情けを、グローツェンは拒絶した。


 …ヘェー。拒絶するんだ。
 今の私は中井の豚声を聞けて結構機嫌がよかったんだけどな。
 そんなに酷い目に会いたいって…なら、あわせてやるよ望み通り。


「フフフ…グローツェン、お前が邪魔しなきゃ、この国には手出ししなかったんだよ。それをくだらない意地みたいなので拒絶しやがって…」


「…御免!」 


 グローツェンが斧を振り上げて駆け出す。
 衛兵も一斉に銃器を構える。
 それに対して、私は動くことなく–––––


「従え。『隷属魔法』」


 そう、呟いた。
 魔法を発動させた瞬間、グローツェンたちジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の面々の足元から、無数の鎖が出てきた。
 それは魔法で構成された鎖。


「ムッ!?」


 次々に絡みついていき、グローツェンをはじめとするジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の面々の身動きを束縛していく。


「ひい!?」


「何だこれ!?」


「うわあ!?」


 衛兵たちは混乱する。
 だが、拘束しながら彼らの体をよじ登ってくる鎖に身動きが取れない。


「うっ! 何を、したのですか!?」


 グローツェンは自由を奪われながらも、私に向かって叫んできた。
 それに私は答える。


「何って…あなたたちの意思を剥奪して傀儡にする魔法だよ。安心して、死にはしないし体は乗っ取られるけどちゃんと自我も残るし、解除したときには副作用や後遺症は残らないから」


「れ、隷属魔法!?」


 別に殺す理由なんてないし。
 なのに、ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の人たちは大いに混乱した。


「た、たすけてくれ!」


「嫌だあ! 嫌だあ!」


「やめてくれ!」


「うわあああぁぁ!」


「お許し下さいぃ!」


「アアアぁぁぁ!」


 そんなに慌てなくてもいいのに。
 ただ、少しの間その身体を貸してもらうだけだよ。
 何をそんなに慌てるの? 死ぬわけでもないのに。


 そんな疑問符を浮かべる中で、1人、また1人と鎖が口の中に入り込んでいく。


「ぐぅうう!?」


「むぐう!?」 


「あがっ!?」


 そして、そうなった人から鎖が解けて静かになっていく。
 私をにらみ上げていたグローツェンも、すぐに静かになった。
 後は…ここに残されたクズ共3人だけだ。


「そんな…」


 東田が、デブヲタが、そして加賀見クズが。
 絶望しきった表情を浮かべている。


 その表情が、とてもとてもたまらなく…愉悦だ。
 復讐の美酒は、何といってもこれだろう。
 こいつらが絶望しきって膝を付く様。
 ああ…愉快だ。


「ハハ…アハハハハ!」


 笑いがこみ上げた。
堪らない、堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない堪らない…愉悦。
 最高の表情だ。
 殺すのが惜しくなってくる。


 私は東田に歩み寄る。


「ねえ?」


「ひいっ!?」


 東田が顔を引きつらせる。
 青ざめた表情を逸らそうとするが、私の傀儡となった衛兵によって顔の向きを戻される。
 目があった時、再度青ざめた顔には涙が浮かんでいた。


 愉快だ。
 こういう表情をこいつらにさせる日を夢見てきた。
 そして、それがようやく叶う。


「ねえ、今の気分、聞かせて」


 顎を掴み、問い詰める。
 それに東田はますます絶望しきった表情で言葉を詰まらせる。


「あ、あ…」


「…あ? あ、何?」


「嫌…」


 早く答えてくれないかな〜?
 食い込む爪が、東田の頰から血を垂らす。


楽しい。愉しい。愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい愉しい楽しい…甚振るのって、やっぱりどうしようもなく楽しい。
 東田の今の顔を永久保存しよう。
 すっぱりを頭を落として、千田みたいなオブジェにして飾れば人気が出ること間違えない。
 フフフ…想像が止まらないな〜。
 どんどん膨らんでいく。
 それを見た江山たちの顔が、どんなことになるか。


 そんな楽しい妄想に浸っていた時、突然横から変なのが突撃してきた。


「う、うおおおおお! 東田さんを、離してよ!」


「!?」


 私が愉快な妄想を広げてあるのを邪魔したのは、中井だった。
 今更出てきて、なんだ、このデブ?


「…おい」


「ひい–––––ウブッ!?」


 目障りなクソデブを蹴り飛ばす。
 蹴りがいがあるのはいいけど、こいつのおかげで楽しい思いが邪魔された。
 それは一蹴りで済むような話ではない。


「何してくれてんだよ、このクソデブが!」


「ウッ!? グエッ! アギッ!」


 蹴る。
 蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る蹴る…蹴って蹴って蹴りまくる。


「うガッ!? ごえっ! ブギッ! がッ!」


 デブの悲鳴はまんまブタである。
 こんなイライラしてないなら結構悲鳴を聞いて面白かったけど、今はそんな気分は全くない。


「おい! このクソデブが! ふざけんなよ、ゴミ野郎の分際で!」


「ブエリャァアッ!?」


 つま先が、勢い余ってデブの腹に突き刺さって脂肪に食い込に血を吹かせた。
 デブの口からも血が出る。


 ブチュリという気色悪い感覚と共に、つま先を抜き取る。


「チッ…んだよ、これ? きったねえな、ホントこのデブは」


「あ、あえ…え…」


 デブが何かをほざいているけど、聞く耳持たない。
 それよりも、さっきの続きをしないと、ね♪
 東田の方に向き直る。


 だが、いつの間にか東田の姿は消えていた。


「…は?」


 視線を移すと、広場から東田を抱えて逃げようとする加賀見の姿があった。


「…おい、加賀見。お前、何してくれてんだよ!」


いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも…醜い正義かざしている偽善野郎が!


「逃げんな、暴力魔!」


 雷撃魔法を放つ。
 直進した雷の槍は、加賀見を撃ち抜いた。


「ッ!?」


「加賀見くん!?」


「平気だ…この、くらい!」


 だが、加賀見の足は止まらない。
 広場からの脱出を許してしまう。
 それが、私の怒りの釜に油の雨を投下した。


「加賀見イイイイイィィィィィィィィィ!」


 私の大声がこだまする。


 ジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の衛兵たちはすぐさま2人を追いかける。


 行き場のない苛立ち。
 その発散の先は1つだ。
 中井の倒れているところに歩み寄る。


 …だが、中井のやつはすでに息を引き取っていた。


 その顔は、まるで仲間の逃げる時間を稼ぎ切って見せたと言わんばかりの、普段何の役にも立たなかった自身が初めて役に立ったことに満足するような、いじめられていた関係にあった仲間といつしか得られた絆を初めて認識できたような、いろいろな感情が混ざりつつも決して絶望などしていないとても満足げなものだった。


 その顔に、その死に、私の怒りは爆発した。


「この、クソデブが!」


 容赦なくその顔面を踏み潰す。
 熟れた果実が車にひかれて中身をぶちまけるように、中井の頭は踏み砕かれた。


「クソが!」


 違う。
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う! 私が望んだのはこんな結末じゃない!
 こんな、こんなデブだけが満足げに死ぬなんか、許せない!
 ユルサナイって、決めた。
 だというのに…。
なのに…なのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのにこのデブは…!


「アアアアアア!」


 行き場のない苛立ちを中井の死体にぶつける。


 蹴りまくった末、デブの死体は粉々に砕けちった。
 だが、加賀見を逃がされた私の気分は一切晴れない。


「…加賀見、お前だけは、絶対に逃さないからな!」


 加賀見を追うのをジカートリヒッツ社会主義共和国連邦の連中に任せて、私は他の勇者クズ共のたかる集会場へと向かった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品