農民ライフのお約束

一宮 カエデ

緊急クエスト

あの絶望からまた一週間たちました。


俺のレベル? 上がっていると思うか?


それでもあれからも頑張ったんだよ? 本当だよ?


「俺は一体誰に言い訳をしているんだろうか……」


もう嫌になってきた……。


俺の全財産はこのゲームに全てつぎ込んでる以上、止めたくても、勿体なさすぎて止めようにも止められない……。


今の現状を言うと始まりの街でスライムを倒したお金で飲み食いしている。


それしか出来ないんだから仕方がないだろ!?


あ、あれ旨そうだな……。


そのなこんなで色々買っているうちに、手には大量の食べ物が……


え? そんな食べていたら太るぞ?


べ、別に太らないからいいんだよ!


このゲームの食事は現実の食事ではないのだ。


このゲームには仮想満腹度を満たせるようになっていて、このゲームでも何か食べたらお腹が満たされる。


っと、言っても別に現実世界ではエネルギー不足にはなるので、栄養失調にならないよう、ゲーム外では、ちゃんとお腹が空くようになっている。


「ありがとう御座いました!」


俺は店員さんからタイ焼きみたいな食べ物を貰って一口で食べていく。


「こりゃ上手いな!」


外はサクサクのモナカに小豆のような甘さだけど、それでいてヨーグルトのようなサッパリとしている。


最高……です…………。


何だよこれ! 旨すぎるだろ!


俺は追加で10個ほどそのお菓子『クロッケ焼き』を買った。


クロッケって何だろうか?


そんなのはどうだっていいか、旨ければ何だっていい。











自分の農地で食べるお菓子は……虚しいな…………。


何の草も映えてないし……。


虚しい……。


俺は一人、前に買った小さい畑の中でお菓子を食べていた。


【『緊急クエスト トロールの群れを撃退せよ』が開始されました。】


は!?


え…………?


ちょっ! ちょっと待て!


ゴブリンすら倒せない俺がどうやってトロールを倒すって言うんだよ……。


確か攻略Wikiには戦闘系ジョブがレベル15で適正と書いてあった。


いや、無理だろ!


俺、生産系のレベル7だよ? しかもトロールの群れ? ふざけるなよ!


そもそも緊急クエストって本当に急だな!?


アナウンスさんよ、久々に出てきたと思ったらまさかの死亡通知ですか、そうですか、さいですか……。


それで?


どう対応するんだ? と、言うかそもそも肝心のトロールは何処にいるんだ?


【トロールの到着まであと、10分です。】


「あぁ、一応準備時間はくれるのね……」


ならダメ元で作戦を考えてみるか……。


まず大前提に俺には攻撃力しかない。


クワで殴るにしても近接戦闘になるため、披ダメージが多くなる。


レベル差から言っても一撃で相当なダメージを喰らってしまう。


近接戦闘は無理だとすると、後は……遠距離攻撃……魔法しかないよな……。


だが俺にはその魔法が使えないときた。


詰みゲーだろこれ。


いや、もうひとつ遠距離攻撃が出来ないでもない。


超物理的な原始的武器、パチンコがあるが────


【残り5分です。】


「ヤバイな……迷っている暇はないようだ…………」


適当なY字型の木を枝を見つけ、それにスライムを倒したときに手に入れたらしい【ブヨブヨの繊維】を使う。


一応レアドロップ品らしいがこの際致し方ない。


「一応できた……後は、玉だな…………」


しかし都合良くパチンコ玉は無いので、実際にはそこら辺に転がっている石ころを使っての攻撃となるだろう。


大きさも形もバラバラな石ころで正確に急所に当てることは無理でもダメージを与えることはできるだろう。


多分…………。


【残り時間一分です。】


「あと一分か……もう準備終わったし、あれ食っとくか……」


そう言ってストレージから取り出したのは【魔草】である。


あのあと魔草の中身が気になって球根部分を切り開いたら、ニンニクの様な形の種があった。


俺はなぜかその種を口に含んでしまった。


すると────


「魔力の最大値が上昇したんだよな……一時的にだけど……」


しかも超旨い。


桃の様な甘さと梨のようなサッパリ感、ミカンのような食べやすさである。


その日のうちに持っていた魔草を全て食べてしまった。


それでも食べ足りず、魔草を求めて草原を走り回った。


「俺はゲームで何をしているやら…………」


【トロールがスポーンします】


「ついに来たか!」


大きな声を出し、気合いを入れる。


「殺ってやるぞオラ──ァァアアアア!!!」


50メートル前方にトロールが見えてきた。


で、デケェ~。


見た感じ身長は3メートル位だろうか?


そんな奴がドンドン最初に出てきたトロールの後から現れる。


そのままトロール達はどんどん俺に近付いてくる。


何か農園にトロールの集団がいるって結構シュールだな……。


どうでもいいか……そんな事……。


残り十メートルとなったところで俺は動き出した。


「喰らえ!」


勢い良く飛ぶ石はトロールの顔面にクリティカルヒットした。


「よし、ダメージが入ったか!」


俺はトロールのHPを確認する。


【トロール HP 1500】


減っていなかった。


1ダメージでも減っていたら1499/1500などの表示になるはずなのに一切減っていない。


1ダメージは絶対はいるこの世界で一切のダメージも入らないのはおかしい……。


いや、1つだけダメージが入らない理由。


それはおれが農民だから…………。


流石にここまでとは思ってもみなかった。


今になって通知が来たよ……【この武器では攻撃できません】、だってさ。


マジで詰んだな……。


クソゲーか……このゲーム。


俺はポケットの中の入れていた魔草の種を八つ当たりの様にトロールにぶつける。


「ふざけんな! 何が『フリーライフ』だ! 全然自由なんてないじゃないか!」


トロールに言っても変わらないことは分かっている。


でもこの怒りを何処にぶつければいいといいのだ。


「何も出来ない! クワや鎌でしかダメージを与えられない!こんなクソゲーやめてやる!」


遂に言ってしまった。


約一ヶ月間絶対に言わない様に頑張っていたのに……。


だからだろう、だから


「俺も『魔法・・』使いたかったよ!」


と言ってしまった。


「GUHAAAAAA!!!」


俺はビックリしてその音がした方をみる。


しかしそこにはトロールだったものに大量の魔草が生えた肉の塊しかなかった。


「こ、これは……?」


【エクストラスキル 農業魔法:魔草育成を覚えました。】


「ま、魔法!?」


農民は魔法が覚えることが出来なかったんじゃ……。


でもこの魔法さえあれば……!


「喰らえ!」


自分が持っていた。魔草の種を他のトロールに蒔いて、魔力を注ぐ。


「GUHUAAAAAA!!!」


さっきの様な声を上げ、トロールが倒れる。


農業魔法強すぎるだろ……。


他のもう一体にも種を蒔き散らし、魔力を流す。


「俺TUEEEEE!!!」


農民って最弱職だったような……(笑)


これは強すぎるだろ運営さんよ!


俺の時代が遂に来てしまった。


この調子で3体目も────


「な、なんで発動しないんだ?」


さっきまでのが嘘だったかのように魔法が使えない。


「おい、どうして使えないんだ────」


一瞬にして俺の体が中に浮く。


「がぁぁあアアア!」


そして俺は野獣の様な呻き声をあげて地面に落ちた。


理由は簡単だ。


トロールが殴った。


たったそれだけで俺はボロボロになった。


「やっぱり最弱職じゃねーか……」


自分の残りHPとMPステータスを表示させる。


【nama:inokawasan HP:7/86 MP:0/88】


なるほどな流石にあれだけの高威力の魔法が連発できるはずないか……。


考えれば分かることだな……。


俺は初めてこのゲームの世界で死ぬのか……?


「見てらんないわね……」


そう聞こえたかと思うと、目の前に女性が出て来てちょうど俺とトロールの間に割ってはいるように進むと一瞬にしてトロールの上半身と下半身が離れた。


それでも攻撃は終わらずどんどんトロールを屠っていく。


【『トロールの群れを撃退せよ』がクリアされました。】


そんなアナウンスが聞こえると彼女は俺の方へ近付いてき、緑色の液体が瓶に入っているものを放り投げてきた。


「これでも飲んでください」


「これは?」


「え? あなた回復ポーションを知らないんですか? バカなんですか?」


「あ、えっと……すいません? ありがとう」


俺は貰った回復ポーション?を飲み干した。


【nama:inokawasan HP:67/86 MP:0/88】


本当にHPが回復していた。


俺が落ち着いたのを確認して少女は喋りだした。


「それで? さっきの魔法は一体何なの?」


「俺にもサッパリ……」


「そう、無能ね」


バッサリ言うなこいつ……!


「あの助けて貰ってありがとう、君の名前を教えて貰ってもいいかな?」


「私のアバターネームをなぜ貴方に教えなきゃいけないの?」


「え? あ、ごめんなさい……」


「その無能な頭でも分かれば良いわ、さよなら、いのかわさん・・・・・・」


「あ、さよなら?」


そう言ってその少女は立ち去っていった。


あれ? 俺、自分の名前言ったっけ?


彼女はすでに見えない。


まぁ、いいか次会った時にでも聞けばいいか。


これが俺と彼女の初めての会話だった。

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