御手洗 兎

しゃぼん玉の

「コレ」
男の子が乱暴になにかを差し出す。
「え?」
私は驚いて、つい受け取ってしまった。

「ごめん」
そう言って男の子は走って行ってしまった。

「え、ちょっとこれ!」
声を出した時にはもう男の子は居なくなってしまっていて、受け取った物だけ残った。

その子は、私にいつも意地悪をしてくる子で、学校も違うから名前も知らなかった。

「あけていいんだよね…?」
恐る恐る、中身を取り出してみる。

「わぁ…綺麗…」
私の手の中にあったのは、しゃぼん玉の耳飾りだった。
全てが透明で、光にかざすと虹色に光った。

-----20年後
「ママのお耳のしゃぼん玉かわいいね!」

「ありがとう」

「みーちゃんもほしい〜!買ってよ〜!」

「いいでしょ〜、これはね、パパがくれた特別なものなのよ」

「えー!」

しゃぼん玉の耳飾りが優しくひかり、揺れた。

コメント

コメントを書く

「その他」の人気作品

書籍化作品