おじさん→女子高生=?

キー坊

暖かいのは陽だまりだけじゃなかった

「か、風見くん!?」
慌てた様子の永瀬がこちらを驚愕の表情で見た。そりゃそうだろう記憶喪失ということにしようとしたのに俺は真実を話そうとしてるのだから。

「実は心臓を提供したドナーの本橋なんです」
風見夫婦は訳が分からないのか驚きこちらの言葉を待った。

「俺は事故で死にかけて奇跡的に生き延びました。ですが長くは持たないと言われ、その時に風見 栞のドナーになって欲しいと頼まれました。俺は誰かの為にこのあと少しの命を使えるならとこれを受けて俺の人生は終えたはずでした」
そこで一呼吸入れさらに続ける。

「ですが、目覚めてしまいました。この風見 栞という人として、彼女の代わりの意識として...本当にごめんなさい...」
娘の中身が知らないおっさんになってしまったのだ。そんなこと本人の口からでなきゃ信じられないだろう。

「永瀬さん...本当ですか...?」
父である透さんが、永瀬さんに確認する。永瀬さんが本当だと伝えると透さんは考え込むような仕草をして、

「本橋さん...正直信じられないし信じたくない。でもあなたは娘を、娘の体を助けてくれた。あなたも被害者でもあるんだこの事に1人も悪い人なんていないんだ。だからありがとう...」
そう言って頭を下げた透さんに否定の言葉を口にしたかったが、その言葉が出ることはなかった。彼は辛いはずなのに俺を責めずにそんなことを言ったのだ。この人の決意を蔑ろに出来るはずが無かった。

「本橋さん...娘は、娘は最後まで幸せだったでしょうか...?」
遥さんが目に涙を浮かべ聞いてきた。
それを聞いて突然胸が苦しくなってうずくまってしまって皆が心配して助けようとするが、手で制して伝えたいことを伝えた。


「お母さん、お父さん。2人の子供に産まれて良かった...!心臓が弱くて運動もあまりできない私を大切にしてくれて、親不孝者な娘でごめんなさい。もう一緒にいることは出来ないけど私はこの体で見てるよ?だからお母さんお父さん、今までありがとう...!大好きです!」
この時俺は確かに風見 栞の意識があった。
みんなもそれを感じたのか全員涙して彼女の名前を何度も何度も口にした...
俺の目から流れる涙はどちらが流したものなのか分からなかった。





しばらくして落ち着いてから遥さんが優しい口調で言った。

「本橋さんにお願いがあるの」
この優しい喋り方が彼女の普段なのだろう。不思議と聞いてると暖かい気持ちになる。

「私達の娘になってくれませんか?」
それは俺を受け入れる言葉だった。やはりこの人達は優しくて暖かい。俺はこの人たちを幸せにしたいと心から思えたのだった。

「よろしくお願いします...お、お母さん、お父さん」
気はずかしさと共に俺は笑顔で2人を呼んだ。
俺の親は優しい笑顔で迎え入れてくれた。
頭に乗せられた2人の手は不思議と胸を暖かくしてくれた

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