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魔王に連れられ異世界転移〜魔神になった俺の敵は神と元カノ〜

龍鬼

買い出しと調査 中編

「ここがクトゥリアですか、なかなかに賑わっていますねお嬢様・・・

 現在仁は燈、マリアと共にクトゥリアという国を訪れていた。人類種の国ということもあり、悪魔だとバレないよう貴族のお嬢様と従者という設定で入国している。

 入国の手段としては、以前マリア達を助けた村まで仁の創った転移門を使って移動し、そこから燈が転移を使い待機している馬車と合流した後、堂々と国門から入るというもの。

 理由としては、無用な争いを避けるため。クトゥリアの周辺には結界が張ってあり、門を通過せず転移によって入国した者を衛兵の詰所が感知する仕組みになっているため、無断入国した場合は衛兵との戦闘になる。いらぬ戦闘によって仁の存在が明るみに出ることを避けるため、今回の方法に至ったのだ。

 ちなみにその馬車は、サタンが同じ七大魔王のバアルに連絡を取り用意してもらったものである。

 バアルは悪魔にしては珍しい人間好きで、様々な国様々な職の人間達と交流を持っている。そのため、今回のように人類種の国や街、施設等に侵入する際には必要なもの用立ててもらうことが多いのだと言う。

「ありがとうございましたエルクさん、すみませんがお買い物が終わるまで待っていてくださいね」
「勿論ですとも、どうぞ楽しんできてください」

 彼の名はエルク、七大魔王の一人であるバアルからの遣い。普段は商人として人間の世界で暮らしており、時折こうして悪魔の潜入を手伝っている。

 調査のため入っているとはいえ、買い出しも目的の一つ。そのせいか燈と仁の心は、少しばかり浮わついていた。

 そしてその二人とは対象に、青い顔をしキョロキョロ、オドオドと落ち着かない様子を見せるのはマリアだ。

 元奴隷ということもあって人混みが落ち着かないのか、冒険者であろう強面の通りすがりの男性に盗賊の影を重ねて恐怖しているのか、はたまたその両方か。

 ともかくマリアは恐怖した様子で震え、メイド服のスカートを強く握っている。そんな様子を見かねてか、仁はマリアの耳元に顔を寄せ、出来る限り優しい声を作って囁く。

「安心しろ、約束通りお前さんの安全は保証する。怯える気持ちも分かるが、今は平静を保て」

 仁の言葉を聞いて尚不安が拭えないのか、色暗い瞳で彼を見上げる。

 見上げられ、どうしたものかと思い仁が燈を見れば、ただただニッコリと笑うのみ。仁様なら分かりますよね? という心の声が聞こえてきそうな笑顔だ。

 深呼吸一つ、仁はマリアの瞳を見つめてそっと抱きしめた。

 人通りの多い街中で何故こんな事を……。そう思いながらも口には出さず、マリアの不安を癒す為のセリフを選び、伝える。

「俺が守るから、安心して買い物を楽しめ。お前さんはもう奴隷じゃない、俺が守るべき仲間だ。誰にも傷つけさせやしねぇよ」

 仁がそう言うと、マリアは少しだけ安心したのだろう。仁の服の端を摘んで、

「はい、お願いします……桜舞様……」

 と弱々しく言った。その様子を見てもう大丈夫と思ったのか、燈が手を叩いて行動を促す。

「さ、マリアさんももう大丈夫なようですし行きましょうか」
「す、すみません燈さ……」

 謝るマリアの口を、燈は人差し指で抑えて静止する。

「今は演技中なんですから、お嬢様、とお呼びください」
「は、はい! すみません、お嬢様!」
「よろしい、では参りましょうか。楽しいお買い物に」

 燈を先頭にし、仁とマリアはその三、四歩後ろを歩く形で街を見て回る。

 石造りの街並みに、ヨーロッパやフランスの町並みとはこういうものなのだろうか、と感想を抱きながら、仁が物珍しそうに街の様子を見ていると、隣を歩くマリアがポツリポツリと話し始めた。

「すみません……。私、沢山の人がいたり、沢山の目を向けられたりするのが怖いんです……」
「奴隷だった際、晒し者にでもされましたか?」

 仁の言葉にマリアは当時のことを思い出したのか、彼女は肩を抱き唇を噛む、身を震わせる。

「まぁ、そんなところです……。私はあの盗賊達に攫われたのではなく、買われた奴隷なんです。他所で攫われ、売買所に連れられる際は鎖に繋がれ、街を歩かされます……」
「成程、それはそれは場所によっては随分と好奇の目を向けられた事でしょう」

 ただの村娘であったマリアが、突然奴隷に成り下がり物珍しいもの、穢れたものを見るような目で周囲に見られたのは相当の苦痛だっただろう。
 仁がちらりとマリアの方を向けば、彼女はその瞳の縁に涙を貯め、今にも零れそうになっていた。

 それを見た仁が立ち止まると、マリアもそれにつられ立ち止り仁を見る。
 どうしたのかと見上げるマリアの目に浮かぶ涙を、仁は指で優しく拭う。

「お前さんがどんな苦痛を受け、恐怖に震えたかは知らない、他人である俺には理解できない。心の傷を癒すことも、残念ながら出来ない」

 けれど、と言葉を繋ぐと共に真っ直ぐにマリアを見つめる。

「これからのお前さんが、笑っていられるような世界を俺は創ろう。過去を超えられるような、悲しみで泣かなくてもいいような、そんな世界を」

 言い切ってから、少しくさいセリフだったと後悔する。そんな彼はまた歩き始め、照れ混じりにさっさと行きますよ、と言って燈を追いかける。

「あ、待ってください桜舞様……!」

 マリアの心が、少し、ほんの少しだけ軽くなる。仁の言葉が暖かかった、力強かった。
 真っ直ぐで優しいその言葉が、根深く心に蔓延っていた不安と恐怖を拭ってくれた、そんな気がした……。

 三人が最初に買うのは当初の予定通り、元奴隷だった女の子達の服である。そのため婦人服の店に入ったのだが、どうにも仁には居心地が悪い。

 慣れない場所を訪れたからというのも勿論あるのだが、それ以上に他の客や店員からの視線を一身に受けているからだ。

 視線の理由は気になるものの、ここできょろきょろと周りを見渡してはそれこそ怪しまれる。それ故に、仁は燈とマリアが服を選ぶ様子を見つめつつ、視線の理由について考える。

 ざっと思いつく理由は三つ。一つは婦人服店に男性がいることが珍しいから、二つ目は身分的な場違い感、最後は仁の容姿に惹かれているから。

 一つ目の理由は即座に抹消する。婦人服を買いに来る客であれば、男性の付き添いを連れて来店する者も多いと考えたからだ。
 三つ目も早々に消し去る。今回の仁の服装はサタンが選んだもの、多少目立ちはするものの突出して目立つようなものではない、はず……。そして仁自身、自分の容姿が特別目を引くものとは思っていない。そのために三つ目も除外した。

 となれば最後に残るのは二つ目の理由、身分的な場違い感。仮にこの店が一般市民御用達の店で、貴族連中があまり来店しない店であれば、従者を連れた貴族はなんとも珍しく、酷く場違いなものであろう。

 そう考えた仁は燈の傍に寄り、小声で耳打ちする。

(お嬢様、この店は貴族達も利用するのですか? 先程から、嫌に目立っている気がするのですが……)
(ここは私達の目的を知ったうえで紹介された店ですから、きっと利用するんじゃないですか? それと、目立っているのは『私達』ではなく仁様だけですよ?)

 やはり婦人服店で男性は目立ちますか……。仁がそう呟くと、燈はおかしそうにクスクスと笑う。

「ふふ、仁様に視線が集中してるでしょう? それは仁様の容姿に惹かれてるからなんですよ。仁様はその可能性を切り捨てたんでしょうけど、今の仁様は周りの目を引く程にかっこいいんです」

 かっこいいと言われ、仁は面食らう。誰かに容姿を褒められるなど滅多に無かったこと、記憶を辿っても彼女に褒められたことがある程度。
 そんな仁にとって、容姿を褒められたこと自体も意外だったが、その容姿が周りから視線を集めていると言われ、尚のこと戸惑う。

「そうか……」

 思わず素の口調に戻り、愛想の無い返答をしてしまう。それほどまでに、褒め言葉とは仁にとって衝撃的なものなのだ。

 目立ちすぎるのは避けるべきことなのかもしれないが、荷物持ちとしてついてきている設定の今、側を離れることもまた怪しい行動。そう思い仁は集まる視線にむず痒さを感じながら、この場に留まることを決めて、燈達から一歩距離を取る。

 一歩離れた場所から女の子二人の買い物風景を見て、少し昔のことを思い出す。高校生になって初めてできた彼女、優香。それまで彼女などできなった仁に、女の子が喜ぶデートプランが作れるはずもなく、いつも優香の買い物に付き合ってばかりだった。

 服や靴、小物等。そういうのに頓着しない仁にとって、あれやこれやと選び悩むことの楽しさは分からなったが、優香が楽しんでいるのを見ているのは好きだった。自分と共に過ごす時間を楽しんでくれる優香が好きだった。

 だがそんな彼女とは死別した、仁が嫌う悪によって殺された。自分を慕う人達を、二度と悪になんか殺させない。迫る悪は全て殺す、脅威となるなら神でも、勇者でも殺す。自分は、『悪(クズ)』を殺す『悪(クズ)』であり続けよう。仁は再び、そう誓う。

 それから一時間ほどして、燈達が服を選び終わると、会計を済ませて三人は店を出る。勿論、その買った服は全て仁の手の中だ。

 紙袋に入れられた、決して少なくはない量の服を抱えながら仁は燈の後ろを歩く。

 少し歩くと、仁は燈の隣に寄ってマリアに聞こえない声量で話す。

「後続三人、俺は離れる。居場所がわかるものを」
「ではこれを、届け終わったら握って魔力を込めてください。タイミングを見て逆転移させます」

 あの短い言葉で仁の意図を汲み取ったのか、燈は髪を一本抜いて鱗に変えると、仁の上着のポケットに入れる。鱗を受け取った仁は、直ぐ様行動に移る。

「マリアさん、私はこの服を一度エルクさんの所に持っていきますので、暫くお嬢様とお二人で街を見て回ってください。届け終わったら直ぐに合流しますので」
「分かりました、すみませんがお願いします」

 会話を終えて、仁はエルクの元へと向かう。仁の読みが当たれば、入国後から後をつけていたであろう三人が、この隙に二人に手を出してくる。
 元の世界で、夜道で付け狙われることが多々あった仁は、人の視線、特に悪意のある視線には敏感だった。

 そしてその視線を、国門前からと、店を出てから三人分、ずっと感じている。それ故に、このタイミングなら自然に自分が離れ、二人が襲われる隙をつくれると考えたのだ。
 燈がいれば予期する中での最悪(・・)にはならないだろう、そう信頼していたからこその、この行動。

 来た道を帰り、エルクの元に辿り着いた仁は荷物を馬車へと乗せる。店からここまでは、体感で約二十分。仁の意図を汲み取ったであろう燈であれば、きっと路地裏へと入り尾行していた三人を迎え討ってるだろうと考え、燈に渡された鱗を握って魔力を込める。

 すると数秒後、鱗が発熱し目の前の景色が一転する。そこはどこかの路地裏。幅三メートル程のその路地には、燈とマリア、そして男が五人。

 燈を捕らえているのが一人。その側に二人、まるで順番待ちのように笑って立っている。そして残る二人は、今まさに仁の予期した最悪を現実にしようとしていた。

 マリアを地面に倒し一人が手を、一人が足を抑えている様を見て、理解した瞬間に仁の血は沸騰する。

 ──殺す……──

 そう思うよりも早く仁は前に飛び足を抑える男と距離を詰めつつ、刀を創造し左下に構える。そして一メートルを切るほどに距離を詰めた仁は、その刀に怒りを込めて振り抜いた。

 ずぶっ……と刀の刃が首の肉に食い込むと、肌を裂き、肉を切り、骨を断って首を飛ばす。

 振り抜いた刀を左に下ろしながら、今度は逆手に持って三日月を描くように振り、マリアの手を抑える男の左目に突き刺し貫いた。

 約二秒、たった二秒。それは仁が転移し、人間二人を殺害するのにかかった時間。
 そいつらの仲間三人とマリアは事態の理解が追いつかず、切り飛ばした首が地面を二、三バウンドしてやっと現状を理解する。

 素人の一閃で刃こぼれした刀を仁は捨て、上着を脱いで血濡れ姿で涙を零すマリアに投げつける。

 それを被って踞れ、それだけ言うと、仁は怒声を発する三人に向かっていく。

 燈の側に立っていた男二人が、カットラスとナイフを持って仁を襲う。左右から迫る刃に仁は怯まず、ただ創造とだけ呟いた。それだけで、迫る二人の心臓に一本づつ五寸釘が作られる。

 心臓を貫かれ絶命した二人は足元をおぼつかせ、緩やかに倒れ込む。

「なん……あ、なん、だよ……! なんなんだよ、お前! 一体なんなんだよ、お前はァァァァァ!?」

 たった数秒で味方が全滅し、混乱と恐怖で叫びながら、捕らえた燈と共に後ずさる。

 その叫びを無視して、一歩、また一歩と近付く仁に、男はナイフを取り出し燈に突きつけて来るなと脅す。

「創造(バース)」

 その一言で仁は直径五センチ、幅二センチ程の鉄板を作る。場所は燈を捉える男の右前腕内部、骨を切断するように鉄板が作られため、その右腕からは激痛が発生する。

 痛みに叫び、燈を離した彼は右手を抑え蹲る。そんな彼に、仁はゆっくり近づいて行く。

「俺は化け物だよ。ただの、化け物。お前さんみたいな屑を見つけては、痛めつけて殺す。そんな化け物だよ」
「ひっ……! ひぃぃぃ!?」

 仁の殺意に圧され、情けない声を上げながら男は背を向け逃げ出した。勿論その逃走を仁が許す訳もなく、仁は狙いを定め、足を貫くべく鉄パイプを創造する。

 ズブリ……と、水気のある肉を貫く音が男の足から鳴る、次いで響く絶叫。苦悶の表情を浮かべ、男は仰向けに転がり足に刺さる鉄パイプを引き抜いた。

 吹き出す血を気にも止めず走り出そうとした瞬間、ズボンのベルトを捕まれ民家の壁へと投げつけられる。
 新しく痛む背中と、吐き出される肺の空気。酸素を求め激しく呼吸しながら上を見ると、冷たい表情で仁が仁王立ちしていた。

「逃げられると思うなよ、俺はお前さんをいつでも殺せる。そうしないのはしてもらうことがあるからだ。ちゃんと役目を真っ当すりゃ、生かすことも考えてやるよ」
「ごほっ……ふはっ……! ほ、本当か……!? する! なんでもするから、命だけは……命だけは……!!」

 見るに堪えない必死な表情で、頭を地面に擦り付けながら懇願する彼に、仁は自分の要求を告げる。

「してもらうのは道案内だ、お前さんにはガクシュネイ区十二番街にある娼館へ案内してもらおうか」
「……っ……! わ、分かった……。案内する……!」

 ガクシュネイ区十二番街の娼館、その場所を口にした途端彼の顔が青ざめる。どうやら人攫いの間柄においても、そこは相当異質なのだろう。苦渋の決断といった様子で、仁の要求を飲み込んだ。

「OK、んじゃ逃げないように拘束させてもらう」

 そう言うと仁は鎖と南京錠を作り、彼を拘束する。その後仁は彼を置いて、マリアを介抱する燈の元へと近づいた。

 燈、彼女の名を呼ぶ仁の声は、仲間を呼ぶものとは思えないほどに重く、怒りに満ちている。

「どうかなさいましたか仁様、お顔がとても険しいですよ?」
「お前さんどういうつもりだ!? 何でこんなことになってやがる!?」

 掴みかからんばかりの仁の剣幕に、側にいたマリアはビクリと肩を震わせる。だが言われた当の本人である燈は、ぱちくりと目を瞬かせ呆気にとられた表情をしている。

「何をお怒りになっているのですか? 私は仁様の要望を汲み取り、彼らを人気の無い場所へと誘導致しました。お仲間が二人潜んではいましたが、予想の範疇を超えないものと思います」
「あぁ、確かにお前さんはよくやった。あの短い言葉から俺の考えを察して、望むように行動してくれたんだからな。だがな、俺が言ってんのはそこじゃねぇ! 俺が言ってんのは何故マリアが襲われているのを黙って見てたんだってことだ!」

 そう、今仁が抱える怒りは二つ。一つはマリアに暴行を加えようとした悪漢への怒り、二つ目はその状況を傍観していた燈への怒り。

 燈がいれば想定しうる最悪は起きない。その信頼をあっさりと裏切り、あまつさえその事に気づいていないことに仁は激しい怒りを表す。

 だが仁の叫びを受けても、尚燈は表情を崩すでもなく、謝罪する様子も見せない。

「あぁ、そんなことですか」

 そんなこと、その言葉が耳をついた瞬間、仁の手が燈の胸ぐらを掴もうと伸びる。
 だがその手は難なく燈に捕まれ、折れんばかりの力が込められた。

 手首の痛みに一瞬怯み、怒りの熱に水が差される。僅かながら頭が冷えた仁に向かって、燈は淡々と告げる。

「仁様は、なにか勘違いをされていませんか?」
「なに……?」

 いつもと変わらぬ笑みを浮かべながらも、放たれる威圧感は凄まじい。怒りに頭を煮えさせていた仁も、その圧に思わず気圧される。

「私が仕えているのは仁様ではなく、サタン様なのです。ですので今回のように仁様のお遊び・・・に付き合っているのも、私の気まぐれでしかありません。それを理解できましたら、私より弱い身で、私の機嫌を損ねるような真似はお控えくださいね」

 ギリギリと、歯が折れんばかりに食いしばる仁は無言で燈の手を振りほどく。

「……俺はあいつの案内で例の娼館に向かう、燈はエルクの元にマリアを連れて行ってくれ。勿論、マリアの安全を確保しながらだ。頼めるか……?」

 怒りの灯火は消えずとも、取り戻した冷静さは損なわない。そのため命令ではなく、懇願の形をとって燈に指示を出す。

 マリアを守らなかったこと、自分の行動をお遊びと言われたことに腹が立たない訳ではない。だが、今それを言い争うことは不毛でしかなく、燈に頼らざりを得ない状況は変わらない。

 それを理解してるからこそ、仁は下手に出る。今度こそマリアの安全を考慮するよう、燈に頼むのだ。

「承りました。では、マリアさんをお連れしましたら私もすぐ、仁様の元へ合流致しますね。あぁそれと、マリアさんの服は先の悪漢に破かれてしまいましたから、同じものを作っていただけますか?」

 仁の態度に気を良くしたのか、燈からは先程迄の威圧感は消え去り、普段通りの恭しくも慕うような態度へと変わる。

 その変わりようをつつく事はせず、黙ってマリアが着ていたものと同じメイド服一式を創造し、燈手渡す。

「俺は行く、マリアのことは頼んだ……」

 そう言い残して、仁は拘束した男を連れてその場を離れる。
 仁の姿が見えなくなった頃、燈は静かに悲しげな表情を浮かべ、苦い声音で呟く。

「命令されての演技とは言え、少々心苦しいものですね……」

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