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魔王に連れられ異世界転移〜魔神になった俺の敵は神と元カノ〜

龍鬼

少女が神に喚ばれた日、その物語は始まった

 桜舞仁が異世界転移する一年半程前、一人の少女が神によって、この世界に転生しようとしていた。


 少女が目を覚ましたそこは、何も無い白い空間。右を見ても、左を見ても、ただひたすらに白い空間が広がるのみ。壁も天井も、床すらもないこの空間に、なぜか少女は立っていた。


「こんにちは、お嬢さん」


 突然後ろから声かけられる。そちらに振り向けば、そこには金髪碧眼の美青年が、玉座らしきものに足を組んで座っている。
 その青年の美貌は誰もが息を呑む程のもので、切れ長の瞳とすぅと通る鼻筋、自信に満ち溢れたその表情。それらが調和し、見事な美貌となっていた。


「えっと、あなたは……?」
「僕は聖神」
「変、人……?」
「はは、よく言われるけど違うよ。聖神、字の通り聖なる神様さ。ちなみに名前はディクフル、よろしくね梅木うめき優香ゆかさん」
「あ、はいよろしくお願いします」


 思わずお辞儀して挨拶を返してしまう。優香にとって、この男は胡散臭いことこの上無かった。科学の進んだ世界で生きていた優香は、神様というのは偶像で存在しないものだと思っていた。


「単刀直入に言うけど、キミ、異世界に転生してみない?」
「転生?」
「そう、転生だ。魔法の存在する世界で剣を片手に冒険したり、魔法を極めるべく学園に通ったりと、物語でしか見たことないような人生を送れるよ」
「えっと、なんで私なんですか? それに転生ってことは私、死んだんですか……?」


 優香は戸惑いの声をあげ、顔を青くする。この空間も、聖神と名乗るこの男も現実味が無かったが、自分が死んだという事の方が、ずっと現実味がなかった。


 戸惑う優香を見て、ディクフルはクスクスと楽しそうに笑う。そして戸惑う優香を気遣うでもなく、そのまま話を進める。


「おや、覚えてないのかい? ならまぁ死んだ経緯は思い出さないことをおススメするよ、あまりいい死に方ではなかったからね。何故かって質問に答えると、はっきり言って同情心みたいなものかな? 年若い乙女の悲惨な死を哀れんだ別世界の神が、第二の青春を与えようとしている、とそう思ってくれ。それにこれはキミにとって悪い話じゃないだろう?」


 優香は告げられた自分の死を、そんな簡単には受け入れられない。けれどもここで足掻いても、泣いても、元の世界に生き返れる訳では無い。


 そう考えれると少しだけ、気分が楽になる。もうあの世界には戻れない、愛した恋人にも会えない。そしてそれによって空く心の穴は、別世界に転生してもきっと埋まることは無い。


 そこまで考えて、優香はこの誘いを断ることにした。


「確かに悪い話ではないかもしれません。けどごめんなさい、私は辞退します」


 優香の返事にディクフルは驚いた。今までにも何人か転生させようと誘ってきたが、一人として断る者はおらず、全員が喜び勇んで異世界転生に胸を躍らせていた。


 だからこそ、優香がこの誘いを断ったことはディクフルにとって、面食らう程に意外だったのだ。


「……意外だね、キミ達の歳ならこういうのは喜んで受けるかと思ったんだけど、何が気に入らないんだい?」
「あ、いえ……、そういうのじゃないんですただ私には、元の世界に凄く好きな人がいました……。私は彼が好きで、彼も私が好きでした。でも死んでしまった今、別世界に行っても彼には会えません。なら、私には転生は必要ないと思ったんです」


 先の青々とした表情から一転、安堵と幸福で胸を埋めたような、温かな表情となる。その表情を見たディクフルは感心しながらも、一瞬詰まらなさそうな顔をし、すぐさま元の笑顔に直す。


「成程ね、人の愛情には驚かされるよ。でも出来るよ、生きていた頃の恋人に再会すること」
「え……?」


 ディクフルのその言葉に、優香は一筋の希望を見出す。
 優香が転生を断るのは、元いた世界での恋人に会えないからという理由のみ。それが解消されると言うのなら、多少の不安はあるものの、絶対に断るという程の理由はなくなる。


「これは一つの特典みたいなものでね、知らない世界に一人で放り込まれるのはやはり不安だろう? だから付き添いを一人、転移もしくは転生させるんだ。だから既に死んだ人でも、まだ生きている人でも、誰か一人なら一緒に異世界に連れて行けるよ。キミの場合は恋人かなって思ったんだけど、どうする?」


 暫しの沈黙の後、優香は転生を決めたのかディクフルにいくつかの質問を投げかける。言語や魔法、衣食住や通貨、その世界における必要知識についてだ。


「大丈夫、僕が生活に必要なものは最低限与えるよ。言語や常識等の知識、衣食住や魔法他全てだ。勿論二人共にね」
「そうですか、ならそのお誘い、受けさせてもらいます。付き添いは、恋人の桜舞仁君でお願いします」


 承ったよ。ディクフルがそう言うと、人差し指を右から左へスライドする。すると優香の隣にベッドが突然現れた。


「そこに横になってくれるかい? 今からキミに、向こうでの知識や魔法を与えるよ。情報量が多過ぎて気を失うけど、大丈夫、起きたらキミを待つのは楽しい異世界生活だから、ゆっくり眠っててほしい」


 言われた通り優香がベッドに横になると、ディクフルはすぐさま魔法で深い眠りにつかせる。


「うんうん、いいね。第一段階は無事終わりそうだ。後は記憶と肉体を弄って、魔法を与えて、生活環境の準備をすれば終わりかな? あ、記憶変える時に名前も変えておかなきゃいけないね」


 そんなこと呟きながら優香の身体を魔法で常人以上の身体能力に作り替えていく。次に記憶を操作し、生前の記憶をリセットして別の記憶を植え付ける。最後は魔法、魔属性以外の魔力と魔法知識を与える。


「よし終わり。我ながらいい出来だ、きっと僕達の切り札になる、そんな気がするね。さぁ、今日からキミの名前はユースティア=カーナベル・ディクフルだ。思う存分、悪魔共を殺してくるといい」


 ディクフルが手をかざすと、足下に魔法陣が広がり、ユースティアをベルセレムという国に送り込む。
 ルフェルグスを見送るディクフルの笑顔は、後光が差しそうな程の神聖さと、ペテン師のような邪悪さを帯びていた。


 ──────


 ジリリリリリリリリ!!


 けたたましく鳴り響く目覚まし時計、それに叩き起こされたユースティアは、それを止めて不機嫌そうに起き上る。
 眠たい目を擦りながら、登校の身支度を整えていく。淡い水色の長髪を三つ編みにし、今日から通うセラフィムアカデミアの制服の袖に手を通した。二年生の半ばと言う中途半端な時期の転入に、期待と不安が胸を襲う。


「オッドアイ、引かれたりしないかな……」


 鏡に映る、黒と金のオッドアイを見て思う。何を切っ掛けにこの目になったのか、はたまた生まれつきだったのか、ユースティアは覚えていない。
 金の右目を撫でれば生まれつきだったようにも思うし、黒の左目を撫でれば、自分の目は元々両方黒だったようにも思う。


 小さく溜息を吐くと、気にしても仕方ないと気持ちを切り替えて、鞄を手に取り寮を出る。
 登校して直ぐに職員室に行き、担任の教師に案内されて教室へと向かう。生徒には既に自分についての噂が流れているのか、教室内は騒がしい。
 先に担任が入り生徒達を静かにさせると、入るように促される。


 失礼しますの一言と共に教室に入ると、一旦静かになっていた生徒達にざわめきが戻る。それを気にすることなく教卓の横まで歩き、クラスメイト達に一礼して自己紹介する。


「おはようございます皆さん、私の名前はルユースティア=カーナベル・ディクフル。親しみを込めて、ユカ・・とお呼びください」


 心の内に使命感を抱え、悪魔殲滅を旨とする殲滅の熾天使セラフィム・ナイツを目指す学園生活が、今始まる。

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