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魔王に連れられ異世界転移〜魔神になった俺の敵は神と元カノ〜

龍鬼

転生者 中編

「ようやく辿り着いた、ようやく見つけたぞ魔王。悪いけど、世界の平和のためにその首を貰う」


 パーティーの先頭に立つ青年の言葉に、仁は身震いする。が、それは恐怖によるものではなく、おぞましいものを見たような、嫌悪感からくる震えだった。


『平和のため、ねぇ……。随分寒いこと言うじゃねぇか、総毛立つぜ』


 悪魔体故に傍目からは分からないが、仁は今、忌々しいものを見るかのような険しい顔をしている。
 仁は正義と言う言葉が嫌いでならなかった。正義のためと言い暴力を肯定する偽善者、正義だから勝ったと笑う民衆。
 そんな奴等をごまんと見てきた仁にとって、正義とは虚構であり、たちの悪い偽善者が掲げる免罪符でしかなかった。


『にしてもまぁ、随分と華やかなパーティーだことで。男一人に女三人……お前さんが知らないだけで、女三人の仲は平和じゃないかもしれんよなぁ』


 先頭の男は黒髪黒目の日本人。中の上程のやや整った顔立ちで、身長は一七〇といったところか。
 溢れ返ったラノベの一主人公と言われば納得しそうな程、彼の見た目平凡だった。


 連れている女性三人は髪色から察するに、この世界の者だろう。
 この三人、全員が見た目だけでも一長一短の魅力があり、全員が美小女だった。


 猫のような吊り目の、赤髪ショートカットの少女。武器らしきものが見えないところから、近接格闘特化、照れ隠しに拳が飛ぶ系のヒロインなのだろう。


 次いで、紫の長髪を纏めることなく後ろに垂らした女性。スタイルが良く糸目で、普段はこのパーティーの纏め役をするお姉さん的存在なのかもしれない。纏っている髪と同色のローブと魔丈から、役職は遠距離特化の魔法使いと予想される。


 最後は男と同じ黒髪黒目の少女。この少女、見た目は普通の少女なのだが、パーティーがこの部屋に入って来た時、彼女にだけ違和感があった。
 仁はそれを感じはしたものの、その正体がなにかは分からない。


 仁が彼女の違和感について思考を巡らせていると、紫髪の魔法使いが口を開いた。


「下衆の勘繰りと言うやつですね。一人の男を取り合うのは女のさがでしょう。ですが、その性に振り回されて連携を鈍らせる程私達は愚かではありませんわ」
「あらあら、随分と面白いことをほざくのですね。女の性など、そう簡単には捨てられないでしょうに。貴女、奥手を装い、お姉さん振るなか、裏で虎視眈々と狙うタイプと見ました」


 冒険者達の驚きの表情を他所に、サタンは仁の後ろから、笑顔と共にひょっこりと姿を表す。その服装は普段の浴衣ではなく、黒く簡素なドレスだった。


 そして、その飄々とした態度とは裏腹に、鋭い視線を一人の少女に向かって投げかける。


『お前さん、いつからいた……』
「今しがた転移してきたところです。ところで仁様、この四人の相手、私に任せてはいただけませんか?」


 サタンが出てきた時点で、こうなることは予想していた。
 今の自分ではあの四人に勝てない、そう判断したからこそ、サタンは降りてきたのだろう、と。


 そしてそれを理解したうえで、仁はサタンに問いかける。


『何故だ?』
「御察しの通り、実力不足だからです。なので申し訳ありませんが、仁様は雷華と共に私の戦いを見ていてください。あまり時間はかかりませんので」


 そう答えるサタンは笑顔を浮かべていた。だがその目は、寒気する程に冷たい。
 まるで、心の内に静かな怒りを秘めているような、そんな目だった。


『そうかい。まぁ、他にどんな理由があるかは知らねぇが、今回はお前さんに任せるとするか』
「雷華も仁さまと応援してます! 頑張ってくださいサタンさま・・・・・!」


 サタンの名を雷華が口にすると、冒険者達全員が驚愕に顔を染め、目を見開いてサタンの方を見る。


「あらあらもうバレてしまいました、面白くありませんね。どうせなら戦闘の最中に教えた方が面白かったでしょうに」


 溜め息と共に、心の底から残念そうな顔をするサタン。そして対照的に、冒険者達は気を引き締めて戦闘体制に入る。


「身構える前に、するべきことがあるのではないですか? そこの娘!」


 腹底に響くような、力強い声。その声を向けられたのは、仁に違和感を与えた黒髪の少女だった。
 少女は、サタンからの威圧を受けて尚、サタンを睨み付ける。その背に汗を滲ませながら……。


「短時間でここに来たことを不思議に思っていましたが……。成る程、貴女を見て納得しました。貴女、悪魔どうぞくですね」


 サタンの一言に少女は顔を歪ませ、仁は納得したような顔をする。
 冒険者達が入ってきた時に仁が感じた違和感の正体、それは魔力だ。魔力感知は厳しい訓練を経るか、その才能がなければ出来ない。


 仁にも冒険者達の魔力がきちんと感知出来ている訳ではない。だが、普段から複数の上級悪魔達に囲まれつつ、人類種である時雨とも接することで、本人も気づかぬうちにその違いを感じ取っていたのだ。


『他の三人とは違うとは思っていたが、成る程悪魔だったのか』
「仁さまも、魔力感じる修行しなきゃですね~」
『雷華は気付いていたのか?』
「勿論です~。だからこそ、サタンさまが怒ってるの、直ぐわかりました~」


 サタンが怒っているのは仁にも分かっていた、だがその理由が分からない。人間に味方していることか、はたまた魔王に戦いを挑みにきたからか、それ以外の理由なのか……。
 いくつか適当な予想を立てながら、仁はサタン達の成り行きを見守る。


「何故人類種の味方をしているかは問いません。別段、咎めるべきことでもないですから。ですが、魔王わたしに挑むその愚行の理由は聞いておきましょうか」


 サタンからの威圧を受ける中、黒髪の少女は震える声で、引き攣った笑顔を浮かべながら言葉を返す。


「あ、貴女に言う必要は、ない……。そう言ったら……?」
「あぁ、じゃあいいです。死んでください」


 瞬間、仁の前からサタンの姿が消える。そこから秒と空かずに、甲高い金属音が鳴り響く。


 音源を見れば、サタンが少女の心臓を穿たんと放った手刀の突きを、青年が剣の腹で防いだところだった。


「あら、この程度の速さには着いてこられるんですね」
「舐めるなよ、魔……王……!!」


 青年がサタンを押し返そうと力を込めるも、剣はピクリとも動かない。
 青年が苦々しい表情で、サタンを押し返そうとする最中さなか、動きを止めてる今が好機と、赤髪の少女がサタンの背に回り、頭めがけてハイキックを放つ。
 サタンはそれを避けることをしない、避ける必要が無い。ただ魔法を放てば、それでいい。


風斬ブルム・スライス


 少々の蹴りがサタンの頭にヒットするその直前、少々の足を風の魔法が切り刻む。


「ぎっ……ぎゃあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!?」


 風の刃は少女の右膝から下を細切れにし、血飛沫と共に吹き飛ばす。
 飛ばされた少女は三メートル程先で転がるように落ちると、多量の血を流す足を抑え、呻きながら蹲る。


「ルルカ!」


 青年の意識がルルカと呼ばれた少女に向くと同時、サタンは剣を弾き青年の襟を掴む。


「戦闘中のよそ見は、死を招きますよ」


 襟を掴んだサタンは一回転し、軽々と青年を黒髪の少女へと投げ付ける。


「うぐ!! 誠、大丈夫!?」
「ぐっ……!! ごめんリオナ、大丈夫だよ。フォドラ、ルルカに治癒魔法をお願い! リオナ、悪いけど僕と二人で魔王の足止めをするよ!」


 リオナとフォドラは誠からの指示を受け、それぞれ行動に移す。
 リオナは誠の援護の為に魔法の発動準備をし、フォドラは転移でルルカの元へと飛ぶ。


 そして誠は剣を握り直し、精一杯の勇気を持って、サタン向かって一直線に走り出した。

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