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魔王に連れられ異世界転移〜魔神になった俺の敵は神と元カノ〜

龍鬼

転生者 前編

「〜〜〜♪ やっと今日、仁様の修行ができます〜」


 鼻歌を歌いながら、上機嫌な様子で魔王の間へと続く梯子を雷華は降りていく。最初は修行の担当を最後に回されて不服を唱えていたものの、いざ自分の番が回ってくると、そんなことも忘れて機嫌良く仁の元へと向かって行く。


 四人の中で雷華が修行の担当を最後に回されたのにはちょっとした理由がある、それは力加減だ。雷華は他の三人に比べて力加減がかなり下手なため、悪魔に成って日の浅い仁では命を落としかねないのだ。


 なら今は大丈夫なのかと言われれば怪しいが、人を幾人も殺し、多少成長した今の仁であればきっと大丈夫、かもしれない。


「仁様~!」


 雷華の声が聞こえると、悪魔体で剣の素振りをしていた仁は、素振りをやめて雷華の方を見る。
 仁の修行につけるのが余程嬉しいのか、太陽のように眩しい笑顔を雷華は浮かべて、手に持った木製の棍をくるくると回している。


『来たか雷華。……随分と嬉しそうそうだな』
「えへへ~。やっと雷華の番が回ってきましたから、とても嬉しいんです~」
『そうかい、んじゃ早速修行と行こうか。雷華の獲物はその棍か?』


 仁の質問に雷華は首を横に振る。雷華の本来の武器は槍、けれども手加減が下手なため、威力を落とすためにとサタンに棍を渡されたのだ。


 雷華がそれを説明すると、仁は小さく溜息を吐いて内心呟く。ああ……今の自分では、この少女にすら本気を出させることができのか、と。


 だがそれはそれ。人間から悪魔に成った仁と違って、雷華達は生まれながらにしての悪魔。であれば、そこに力量差があるのは当たり前のこと。


 だからこそ仁は、その力量差を埋めるべく修行するのだ。今現在の力量差に嘆く暇などあるはずが無い。


「お話は終わりです~。さぁ、修行を始めましょう仁さま。雷華のスピードはサタンさまの次に早いですから、油断してるとあっと言う間に終わっちゃうですよ」
『アドバイスどーも、けどもそう容易くはやられ……』


 ドッゴォォォォォン!!!


 仁が台詞を言い終わるよりも早く、雷華はジャンプして高さを合わせ、仁の左胸を棍で思い切り突く。
 不意を突かれた仁に受け身や防御が出来るわけもなく、そのまま吹き飛ばされて轟音と共に壁に激突する。


『がはっ……あっ……!!? かはっ……!!』


 成る程、そりゃ槍は持たせたらんねぇわな……!


 肺から失われた酸素を求め、背中と左胸の痛みに耐えながら必死に呼吸しつつ、思う。
 もし仮に、今の一撃が棍ではなく槍によるものであったなら、今頃仁は死んでいた。


 この場所には不死結界が張ってある。だがそれは、結界内に居る者全てを完全な不死者にするわけではない。ここでの不死とは、即死しない限り、何度でも傷を完治させる疑似的な不死を指す。


 それでもこの結界が不死を謳うのは、四肢を失い、腹を裂かれ、首を切られようとも、心臓若しくは脳が無事であれば完治するからだ。


「仁さま仁さま~、今の、戦場だったらコンテニューはなかったですよ~」
『ふー……ふー……。んなこたぁ分かってるよ……、てか雷華、お前さん加減する気ねぇだろ……』
「う~……。ちゃんと手加減してますよ~、だって今仁さまの胸に穴が空いてないじゃないですか~」
『棍一本で胸に風穴空けられてたまるか……』


 大きく息を吸って、吐き出す。仁は痛む体を無理に起こしつつ両手に双剣を作り、右は逆手で、左は順手で握る。
 そして、右手を左胸の前に置き、左手は剣を突き出すようにすると、腰を低くして右半身に構えた。


「準備はできたですか~? 次はもう少しだけゆっくりいきます~」
『OK、来やがれ……!』


 二人の間に、張り詰めた空気が流れ始める。互いに睨み合い、隙を伺う時間はそう長くは続かなかった。
 先に動いたのは雷華だった。仁がギリギリ目視できるであろう速度で走り、距離を詰めて懐に入る。仁は一瞬で距離を詰めた雷華に驚くことなく左下段蹴りを放つ。


 雷華はそれ飛んで避けと、仁の軸足である右足を棍で払う。バランスを崩して倒れかける仁は、体を捻って右手の剣で雷華に斬りかかる。


 雷華はそれを容易く棍でいなし、そのまま棍を回転させて反対側で仁の顎を打ち上げた。そしてそのまま持ち手をずらして棍の尻を掴むと、真上から首を殴りつける。そこに首を折るかもしれないなどという迷いなど一切なく、折れたらそこまで、ぐらいの軽い気持ちしか雷華にはなかった。


『ごあ……!?』
「仁さま大丈夫です? まだやれるですか?」


 倒れる仁に近寄り、心配しているかのように声をかける。
 警戒して尚防げず、不意を突いて尚届かない。幼子のような姿のこにお悪魔との、指先すら掠らない程に遠い実力差に苛立ちながら、仁は一瞬歯噛みして叫ぶ。


『っ……! 創造バース!!』
「え?」


 消えた。一瞬で消えたのだ、雷華の前から。上級悪魔である雷華は、魔力探知能力も、動体視力も人間よりも遥かに優れている。そんな雷華が仁を見失うことなどありえない。だからこそ雷華は驚きを隠せないでいたのだ。


 だが見失ったのはほんの一瞬。仁が後ろに立っていることに気付くやいなや、その首筋に刃が触れる前に、仁の喉元に棍を突きつけた。


『残念、今はこれが限界か』
「落ち込む必要はないです~。たった数日で雷華の後ろを取れたその成長速度、誇るべきだと思うです~」


 雷華は仁の喉元に突き付けていた棍を引っ込めると、中段に構え直す。顔に浮かべる笑みは普段の太陽のような愛らしいそれではなく、子供らしい、幼い好奇心と興奮が混ざった輝かしい笑みだった。


 雷華は仁がどうやって自分の視界から消え、背後を奪ったのか分からなかった。だからこそ次はそれを見破りたい、見破って自身の糧にしたい。その思いが仁に伝わったのか、仁も双剣を構えて直して緊張の糸を張る。


 またお互いに睨み合ったまま、硬直した時間が訪れる。今度は雷華も後手に回るべく、仁の動きを待つ。雷華には自信があった、そして確信していた。後手に回ることになっても、仁より先に攻撃を当てられると。故に雷華は先手を仁に譲るのだ、自分の背後を取ったその魔法を知るために。


 完全に後手に回ろうとする雷華に対し、仁は先手に出るべきか迷っていた。さっき雷華の後ろを取った魔法、あの魔法を使えばもう一度雷華の背後を取れるかもしれない。けれどもそこが限界。背後を取れようとも攻撃速度で勝れないならば掠り傷すら負わせられない。


 移動における先を取る術を得た今、攻撃における先を取る一手が仁には必要だった。その一手をどうしたものかと悩んでいる時に、それは起こった……。


 ドォォォォォォン!!!


 響く爆音と、蹴破られ、宙を舞う扉。その奥から入ってくるのは、男一人女三人によって構成された冒険者のパーティーだった。
 パーティーの先頭に立つ、仁と歳の変わらないであろう青年が、仁を睨み口を開く。


「ようやく辿り着いた、ようやく見つけたぞ魔王。悪いけど、世界の平和のためにその首を貰うよ」

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