話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

魔王に連れられ異世界転移〜魔神になった俺の敵は神と元カノ〜

龍鬼

契約と帰宅

「んで、どうするよ? さっきも言ったように、俺の下につくなら俺はお前さん達の生活は保障する。去るなら去るで俺は止めない、好きなところに行けばいい」


 元奴隷の女性達は最初、戸惑いを見せながら小声で話し合う。傷だらけで、金も無く、身なりの汚い自分達が故郷に帰ろうとしても、また攫われる可能性が高いことは分かりきっていた。


 だがそれでも、仁の下につくことを即決出来ないのは、仁の得体の知れなさと、男性に対する恐怖心からだ。


 怯えた様子のまま答えを出せないでいた女性達に、仁が助け舟を出す。


 「サタン、こいつらの怪我を治してやってくれ。こんな怪我したままじゃ、なにも出来ないだろ。手足を失った者は、悪いが俺の実験に付き合ってもらう。それと、燈は外で見張りを頼む。遠出していた盗賊がいないとも限らないからな」


 仁の指示に燈とサタンは二つ返事で了承すると、燈は小屋の外に出て、サタンは近くの負傷者の傍に寄り回復魔法で治療を開始する。


 仁も実験を開始しようと部屋の奥にいる左腕を失った少女に近づく。


 仁に怯えるその少女は、隣の女性の手を握って、恐怖に耐えている。そんな少女の前まできた仁は、膝を着いて少女と目線を合わせた。


「その腕、治したいか?」


 少女の失われた左腕に視線を向け、問いかける。少女は震えたままゆっくりと頷く。


「よし分かった。少し痛いが、我慢しろよ」


 そう言うと仁は右手に一本の針を作る、長さ五センチ程度の短い針だ。それを少女の切断面にそっと突き刺す。


 痛みに顔を歪める少女の頭を撫でながら、仁は「部創再生リジェネレーション」と唱える。


 その瞬間、針が溶けるように断面に消えていき、腕が再生していく。骨、血管、神経、筋肉と再生していき、十秒もすれば腕は完全に再生した。


「どうだ、動くか?」


 治った腕を軽く触り、感触を確かめる。温度、脈、肌の感触、全てが本物。これで動かせることが出来たのなら、仁の実験は成功と言えるだろう。


 目の前で起きたことが信じられないのか、唖然とした表情の少女の手を握り、仁は別の質問を投げかける。分かるか、と。


 唖然としていた少女は徐々に状況を理解し、目に一杯の涙を浮かべながら仁の手を握り返す。それが、答え。


 仁は腕が完璧に治ったのを確かめると、再度少女の頭を撫でて、他の少女の治療に行く。手足を失っても再生させることが出来る、この事実は仁にとって大きな収穫となった。


 全員の治療が終わり、サタンと二人で再び女性達の前に立ち、問いかける。自分達の下につくか、去るかを。先の治療行為で、女性達の意志は固まった。


 代表と思しき女性が立ち上がり、前に出る。肩甲骨まで伸びた赤茶色の髪、優しそうな顔つきでありながら力強い目をした二十半ばの女性だ。


「私の名はマリア=ジルテスタと言います。私がこの中での年長者ですので、代表として返答させていただいてもよろしいですか?」


 仁は短く大丈夫だ、と答え、マリアは軽く礼をして続ける。


「まずはお礼を。私達を助けていただいたうえ、治療までしてくださりありがとうございました。このご恩は忘れません。ですので、私達一同、貴方様に心身を捧げて仕えたいと思います」


 そう言うとマリアは膝を折り、三つ指を着いて頭を下げる。土下座の姿勢だ。
 他の女性達もマリアに続き、次々と土下座して忠誠の意を示す。


 そこまでしなくていい……。それが仁の感想だった。女性達が自分に向かって、恐怖や不安を抱えて土下座する様は、人によっては気分のいいものだろう。だが仁にとってはそうではない。寧ろ気分の悪いものだった。


 土下座を早くやめさせようと、彼女達が自分に仕えることを了承して、頭を上げさせる。


「OK、受け入れよう。俺の名は桜舞仁だ、よろしく頼む。全員、頭を上げろ」


 言われ、マリア達は頭を上げて、正座の状態で次の指示を待つ。全員傷こそ治ったものの、長らく不衛生な環境で過ごしていたからか、顔色が悪いのがチラホラと見える。そこで仁はサタンに、彼女達を宿で療養させるよう頼む。


「こいつらに必要なのは休息だ。一旦宿に連れ帰って一週間ぐらい休ませたい、いいか?」
「それは構いませんが、転移門を何度も往復することになりますよ?」


 サタンの言う通り、直にサタの湯まで行く手段が無ければ、人気の多い転移門付近を何度も往復することになる。だが仁は宿との移動手段を既に考えていた。


「まあ一応策は考えてある」


 そう言って仁が小屋の中央に移動すると、膝を着いて床に手を当てる。周りの女性達は、邪魔にならないようにと場所を空ける。


「創造・不視不感の結界陣ファントム・サークル


 仁を中心に直径五メートルの魔法陣が展開する。そしてそれと同時に、中心にいた仁の姿が消えた
 否、正確には魔法陣の外からは見えなくなったのだ。


「仁様!?」


 仁の姿が消えたように見えたサタンは、慌てて魔法陣の中に入る。そしてその中に仁の姿を見つけたために、状況を理解して驚愕の色を浮かべる。


「驚きましたね、まさか魔王わたしの目すら騙す程の魔法を仁様が使えるとは……」
「見聞きしたものは仕組みの理解に関わらず創れる。んで、魔法は自分のイメージを魔力によって再現する。だったら、俺が元の世界で読んだことのある魔法は軒並み使えるんじゃないかって思ってな。試してみたら案の定ってわけだ」


 次だ。そう言って仁は結界の中心に手を置いて、また創造と唱える。


 今度は何を作るのか、そう思いながら見守るサタンの前に現れたのは、驚くべきものだった。


一回見て・・・・通ったんだ・・・・・。ならば作れないわけないよな」


 仁が作り出したもの、それはサイズを小さくした移界門。高さ二メートル、幅一メートル半にまで小さくなったそれは、門と言うよりも扉と呼ぶのが相応しいように思える。


「作るものによって魔力の消費量はやっぱ変わってくるんだな、結構持ってかれて少ししんどいわ……」


 疲労の色を滲ませながらも、どこか楽しそうな顔で仁は笑う。


 仁はこの創造魔法に、物しか作れないという固定概念を持っていた。だがどうだ、試してみれば仁が想像するよりも多くのものを創り出せた。


 武器武具の類はもとより、移動用のゲート、風や炎の気象、現象。果ては肉体や魔法すらも創ることが可能。


 多くの発見、多くの収穫に仁は心の底から湧いてくる幸福感に酔う。


 仁は、この創造魔法ちからをもっと知りたい、もっと上手く使えるようになりたい。心の底からそう思うようになった。


 たった一度、されど一度、彼は本当に守りたいものを守れなかった苦い過去がある。


 大事な彼女を失ったその時、彼は自分の力不足を嘆き、憎み、呪った。そして同時に、それまで以上に理不尽と不条理を嫌うようになる。


 だからこそ彼は力を求め、奴隷商やダンジョンで出くわした冒険者を手にかけた。悪が嫌いだからという、そんな理由で……。


「さてじゃあ、宿に戻るか。俺は燈を呼んでくるから、サタンはマリア達を連れて行ってくれ。転移門は宿の裏に繋がってるはずだ」


 仁はそれだけ言うと、外で見張りをしている燈を呼びに出る。


 仁が外に出るのを見届けて、残されたサタンは口元を隠し、邪悪な笑みを浮かべながら、小さく呟く。


 ああ、自分の選択は間違っていなかった、と。そして直ぐ様その笑みを消し、いつもの和やかな笑みを作ると、マリア達を連れてサタの湯へと一足先に帰るのだった。

「魔王に連れられ異世界転移〜魔神になった俺の敵は神と元カノ〜」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く