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魔王に連れられ異世界転移〜魔神になった俺の敵は神と元カノ〜

龍鬼

敗北

 変身後サタンに案内されたのは宿の地下だった。
 スタッフルームの奥の床にある扉、それを開くと地下へと続く梯子があった。


『これが下への入り口か』
「はい、この梯子を降りれば、面白いものが見られますよ」


 怪しく微笑見ながら降りるサタンに着いて行こうとする、が……。


『サタン、俺が通るにはこの入り口は狭いわ……』


 サタンが仁をキョトンとした表情で見上げる。


「マジですか……?」
『マジだ。変身を解くにはどうしたらいい?』
「解除と唱えれば変身は解けますよ」
『解除』


 仁が唱えると体は人間体に戻り鍵型の短剣は心臓から排出される。
 仁はその短剣を腰の後ろにしまい今度こそサタンの後に続いて梯子を降りて行く。


「ほう、これは凄いな」


 梯子を降りた仁は感嘆の声を上げる。
 そこは地下室ではなく地下施設と呼べる程の広大な空間。仁が降りたのは王の間と呼ばれる巨大な部屋、そこの玉座の後ろだった。


「んで、ここはどういった場所なんだ?」
「ダンジョンです。魔物と宝を配置して冒険者を迎え撃つ施設。私も魔王の一人ですから、人間種にとっての討伐対象なんです」
「成る程ねぇ……」


 部屋の中央を見ると燈達四人が集まっていた。


「さて、では今から仁様には戦っていただきます。大丈夫ですか?」
「勿論。それじゃあまぁ実力の程お見せしますか」


 腰の短剣を抜いて心臓に突き刺して悪魔体になる。その姿を見た四人の少女は口々に感嘆の声を漏らす。


「私が、出る……」


 白亜が前に出て紫色の小手と具足を換装する。


『悪い、少し待ってくれるか?』


 いざ戦闘、というときになって仁が待ったをかける。白亜が小さく首をかしげた。


『ブースト・ワン』


 そう唱えた瞬間仁以外の全員が目を剥く程に驚いた。
 仁の後ろに魔法陣が広がり、直ぐに消えた。そして体の調子を確かめるべくその場で二度ジャンプする。


『ブースト・ツー』


 また仁の後ろに魔法陣が広がり、消える。また二度ジャンプすると仁は一人満足する。


『よし、じゃあ始めるか』
「あ、あの仁様……? 今のは……」
『強化魔法』


 即答である。


「私はまだ教えてないはずなんですが……?」
『魔神の魂が教えてくれた、と言えばいいのか? こう、直接頭に入ってきた』


 仁は自分でも理解しきってはいなかった。だが魔力が体を変化させ悪魔体となったとき、魔法の知識が頭に流れ込んできたのだ。


『さて、とりあえず体を普段通りに動かせるぐらいには強化できたし。始めようぜ、白亜』
「仁様、一応言っておきますが、この部屋には悪魔を対象とした不死結界が張ってあります。この結界内で死ぬことはありませんので存分に戦ってください」
『OK。準備はいいか白亜!』


 白亜は静かに頷き、構えた。右足を前に半身となり、右手を前に左手は腰の位置に、そして腰を下げて戦闘態勢に入る。


 ドン! と仁は思い切り床を蹴り白亜との距離を一瞬で詰め、胴を薙ぐ様に右足で蹴りを放つ。


 下に屈むか後ろに飛ぶか、はたまた白亜の体格であれば飛び越えると仁は予想していた。だがそれは容易く裏切られる。


「せい……!」


 可愛らしい掛け声と共に白亜は左に体を捻り、仁の脛に右拳を叩きつけた。


『ッ……!?』


 まるで金属バットに殴られたかの様な強烈な痛みが走る。


 思わぬ激痛に仁が怯む。そしてその隙を狙っていた白亜は、一歩距離を詰めて軸足である左足を蹴った。


 バランスを崩し前に倒れこむ仁の腹を左足で蹴り上げ、浮いた瞬間に今度は一歩下がって飛び、体を左回転させて右足で蹴りを打ち込む。


 蹴り飛ばされた仁は、十メートルを超えたところで止まる。


『ってぇ……』


 痛む体を起こす。右足は軸に使えず、気を抜けば胃の内容物を吐き出しそうで思考も纏まらない。


──あぁ、俺あいつを舐めてたわ……──


 内心小さな溜息を吐きながら首を鳴らし、腕を回して動けるか確かめる。


『悪いな白亜』
「何故、謝りますか……?」
『白亜が女の子だからって舐めてた』
「大丈夫です、初対面の人……殆ど見た目に騙されます……」


 感情の読めない顔のまま、隙を見せずに仁に近づいて行く。


『だからこっからは本気だ。それこそ殺す気で行く』


 そう言うと仁はその手に黒い球を作り出して床に放る。
 その球が床を跳ねた瞬間、強烈な光と爆音が響いた。


 光が部屋を覆う中、動きを封じたであろう白亜に向かって、今度は手榴弾を二個投げつける。


「まだ甘いです……」
『なに!?』


 人間であれば数十秒動きを封じれるスタングレネードを食らったはずの白亜は仁が気づかぬ内に懐に潜り込んでいた。
 一瞬の風切り音の後腹を三度殴打され、トドメと言わんばかりに右の後ろ回し蹴りを食らわされる。


『ぐふぉ……』


 吐血せんばかりの呻き声を上げ、倒れる。


「人間の常識は、悪魔には通じません……」


 意識が遠のく中、その言葉だけが耳に残った。


 ────────


 仁が目を覚ましたのは、あれから丸一日経ってからだった。


「困ったな……動けん……」


 目を覚ましたものの、白亜から受けたダメージと、身体強化魔法の反動であろう筋肉痛が酷く動けないでいた。


「失礼します」


 襖を開ける音と共にサタンが入ってくる。


「サタンか……」
「はいサタンです、体は大丈夫ですか?」
「大丈夫そうに見えるか?」
「見えないですね」


 苦笑いを浮かべながらサタンは仁の枕元に座る。


「仁様、失礼しますね」
「?」


 サタンは仁の頭を優しく持ち上げて枕を退けると、空いたスペースに自分の膝を入れる。そしてその上に仁の頭を乗せた。


「おいサタン……」
「はいサタンです」
「これはなんだ……」
「膝枕です」
「いやそれぐらいは分かる。なぜ膝枕してんのか聞きたいんだが?」


 後頭部の柔らかく温かな感触を味わいながら、見上げたサタンの顔はとても優しいものだった。


「白亜に負けて落ち込んでいるのではと思いまして、こうして慰めに来た次第です」
「おい頭を撫でるな。いや違う頬を撫でろとは言って……喉を撫でるな俺は猫か!」
「なら頭で我慢してください」


 何を言っても無駄だろうと諦め、素直に頭を撫でられる。


──あー、ヤバイな。泣きそうだ……──


 痛みで泣く程やわではない。悔しさで泣く程プライドは高くない。


 だが、慣れない優しさを与えられれば泣いてしまう程には、仁の心は脆いものだった。
 瞳の端から落ちる涙をサタンはそっと拭う。


「いやー、思ったより弱いな俺」
「弱くてもいいじゃないですか。今は弱くとも、これから強くなってくれればなんの問題もありません。早く強くなって、私達を守ってくださいね」
「……頑張るよ」


 それだけ告げると、仁は静かに眠りについた。


 その翌日、すっかり体の痛みは消え調子の戻った仁は、昨日のことを思い出し一人顔を赤くする。


「はー……柔らかかった……」


 サタンの柔らかく温かい、着物越しの太ももを思い出していると、襖を開ける音がした。


「おはようございます仁様、よく眠れましたか?」
「おかげさまで……」


 昨日のことなどなかったかのように振る舞うサタンに、意識していた自分がバカらしく思えてくる。


「俺は今日からなにをすればいい。強くなるための特訓でもすればいいのか?」
「はい、仁様には強くなってもらうため魔王である私と、上級悪魔である燈達四人が指導します。厳しくいきますから、覚悟してくださいね」

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