異世界生活物語

花屋の息子

隊長は海賊?

 父に無理を言い連れてて来て貰った北の詰め所は南と変わりは無く、詰め所と門があるだけの代わり映えはしないところ、北の魔物は強い物が多いと聞いていたので、もっと要塞化されていたり城門張りの守備力があるのかと思っていた。
 そこに詰める兵達も見たところは南と変わりは無いが、聞いていた話し通りなら大丈夫かと心配になる。
 それに対して大きく違ったのは守備隊の隊長である、南門の隊長は将校感が感じられたが、この北面の隊長は揉み上げからつながるヒゲを生やした、ゴリゴリの海賊顔をした大男だった。
 このおっさんとお話が出来るのかな?最低限の文官能力の事など頭から抜けるほどの、インパクトしかない顔を目の前に、俺の決意は揺らぎ始めていた。
(イカンイカン、ここで気圧されたらここまで来た意味がなくなる)


「はじめまして、グラハムの息子でエドワードと言います」
「うんうん、小さいのにちゃんと挨拶が出来るなんて偉いな~、僕はこの隊の隊長をしているハワードです、宜しくね」
「よ、よろしくお願いします」


 顔と中身が違うのでは?そんな失礼な事を思ってしまうほど、その話し方は穏やかなもので声も若々しい、好青年武官がゴリラの皮を纏っているような印象を受ける、あまりのギャップに少し噛んでしまった。


「それで、君は今日はどうしたのかな?」
「はい、昨日さくじつこちらの隊の方が、私のところに緊急だと軟膏を取りに来られまして」
「スクイールが大量に出たときの話だね。それは迷惑を掛けた、すまない」
「いえ、それは仕方の無い事ですから」


 スッと頭を下げる辺り、本当に良い人の印象を崩さない、これで顔がもしイケメンであったら、さぞ若い女性にモテモテなのだろうな。
 もしかしたらヒゲを剃ったら中身はそうなのか?


「そうすると君は文句を言いに来たと言う事では無いのかい?」
「はい、スクイール自体はこの隊であれば、それほどの被害を出す事無く倒せる魔獣だとか?」
「そうだね、彼らの暴走が無ければ、問題は無かったかもしれないね」
「若い戦士団が、手柄欲しさに突っ込んだと聞きました」
「君は本当に子供なのかい?まあそうだ、この北門は魔物や獣の襲撃が激しいので、戦力を補うために戦士団を入れているのだけれども、その中の一つが勝手な事をしたのだよ、死人こそ出さなかったものの被害は大きいものだった。君に迷惑を掛けたのもそのせいだ」
「その戦士団は絞首刑になるとか?」
「当然だね。最初にも彼らには言ってある事だからね、仲間に被害を与える事は許されない」


 魔物に利する事、仲間に対して害を与える行為=ヒトへの反逆だと言われてしまえば、それまでの行為という事なのだろう、死を持ってそれを償わせるのも、ユルイ規律ではそれが保てないのだろうから仕方の無いことだ。
 だがしかし、まだ若い労働力をここで失うには惜しすぎるではないか。


「そこでお願いなのですが、死で償わせるよりも、彼らを僕にくれませんか?」


 こいつは何を言い出だすんだ?と言う顔をされたが、大丈夫。説明は聞いていたよ。

















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