異世界生活物語

花屋の息子

天然資源の問題

「お静かにお願いします。火急との事ですが、魔物がたくさん出たのですか?」
「そうだ、スクイールが大量に出て、怪我人も多いのだ。こちらが優先してもらっても良いだろう」


 事情的には優先事項になりそうだが、南門の人の判断次第だな、結構な時間待たせる事にはなるから、割引とかで納得して貰えれば良いのだけど。
 そうすると俺が損か?


「新たに作るとなると、昼過ぎまでかかってしまいますが、待つ事は出来そうでしょうか?」
「スクイールか、それであればやむをえないな、南門にも肉を回してくれるよう隊長殿に口ぞえを頼むぞ」
「感謝する、それでは」


 嵐のような人が枡を引っつかんで走り去っていった、落ち着いて事情説明すれば、問題に成らなかったんじゃ無いだろうか?
 なにやら大騒ぎした人で終わりそうな、多分父の同僚さんは、出世出来ないタイプの人だな、大事の時こそ慌てたらいけないんだろうけど、あんな風にドタバタしていたら、現場を混乱させるだけだからな。
(だから、軟膏を貰いに行って来いって、現場から外されたのか)


「スクイールというのを聞いた事が無いのですが?」
「雑食の魔獣なのだが、すばやく歯での攻撃がなかなかキツイ、頬に食べた物を貯めるのは滑稽なのだが、その姿に騙されると、手痛い一撃を貰ってしまうのだ。肉は美味いのだがな」
「そうなんですか、それは食べてみたいですね。オッと申し訳ありません、急いで仕度致しますので、そちらでお待ち頂くか、あとでお届けにあがりますが?」
「待たせてもらおう。しかし、キミは歳を誤魔化していないかい?」
「5歳です!」


 まったく失礼な人だ。転生者ではあるが、生まれてからは正真正銘5年しか経っていない、このピチピチのお肌が目に入らぬと言うのか、どれだけ日を浴びてもシワ1つ出来無いモチ肌だぞ。
 明日用と潰してあった脂身を慌てて火に掛ける、余裕をもって増産しておく事の重要性を、脇に置いていた自分の業を回収しているだけなので、人のせいには出来ないのだが・・・・忙しかったんだ~、と言うのが俺の言い訳なのだ。
 軟膏に使っている油は、そのままでは三日しか柔らかさが持たないが、硬くなる前であれば、何度かは溶かしなおせば品質は同じものが作る事ができるのだが、香草が手に入らなければ意味がないと、油の増産はしていなかった。
(これは本格的に在庫の事も視野に入れなければダメかな)
 野草である香草は、採取してくる事が基本で栽培される事は無い、態々そんな事をしなくとも、取って来れば良いという考え方なのだが、俺が使うとなると採取では、時間と確率的にも栽培をしなければ、資源枯渇の問題が出てきそうなのだ。
 ミントは地球でも難防除雑草扱いされる事があるが、そんなものでも集中的に採り続けては、無くなってしまうのだ。
 魔素の力で、生命力がUPしているとは言え、いつかはなくなる事もありえるし、庭先で作ってさえいれば、いつでも緊急依頼に応える事も出来るようになる。


「楽をするために、楽は出来そうに無いな」納屋に向かいながら、そう一人ごちるのだった。

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