異世界生活物語

花屋の息子

宴の席で

 宴が始まると子供達は子供達で集まるようになる、酒の入った大人のそばにいても楽しく無いからだ。
 この世界に来てから、俺が知っている酒はカイバクから造られる酒だけで、麦で作ったどぶろくのような見た目で、強めの酸味があり薄いアルコール感しかないバージョンの、なんとも美味しくいない酒だ。
 年齢制限などは無く、子供でも呑む事は出来るが、大人ぶりたい者意外は口にする事は無いのだ。
 作り方はいたって単純で、樽の中にオートミールを9割ほど入れて冷暗所で数日保管するだけ、もう少し長期醗酵させればと思わなくも無いが、糖化があまり良くないのだろうと思う。
 甘みと言えばバイネル王の実だが、これで作られる酒は存在しない。
 生食する果実系もあるのだが果実系の酒は見た事が無いのだ、バイネル王の実には敵わなくとも甘味がある果実は、それなりの量が存在し果実酒を作れる土台は十分にある、それにもかかわらず作られるのは、あのマズイ酒だけなのだから理由が気になるものだ。
 前にも話したが、宗教的なものは存在ぜず神を神としてみているのは、エルフ族の会社で言う役付きクラスのみ、この事から農作物の収穫を神に感謝するためなどの理由は排除できる。
 醗酵そのものを理解してはいないのだろうが、そういったモノがある事ぐらいは解かっているのだから、何か理由があるのだろう。
 研究したいとは思うが、前世でもそこまで酒は好きな方ではなかったし、その記憶のせいか、あのどぶろくもどきを飲んだ時も美味しいとは思えなかった、自分が好きでも無い物を研究するのは、やる気の問題で食指が動きが悪いが試してみたい心もウズウズとする訳で、なんとも気持ちが悪いものだ。
 現状ある酒に対して試してみたい物は、糖化が上手くいっていないのであれば、糖化反応を促進させる物を、入れてあげれば良いだけなので話は単純なのだが、果実酒は結局また森に入らなければならなくなる訳で、少しの間は異世界ビールを作って、大人コントローラーに出来ないかの研究に勤しむ事にしよう。
 脳内妄想は、にやける事も無く子供同士の雑談の中で出来る様になっていた、我ながら器用なものだと思う、ガヤガヤと喋りながら料理を突くのだから騒がしい事この上ないのだ。
「ウェイン兄さん、食べてる?」
「食べてるよ、エドはまた何か悪巧みかな?」
「義兄さん、何てこと言うんだよ、人聞きが悪いよ」
「そんな事を言う義弟を持つ僕は、苦労が絶えない事にならないんじゃないかい?」
「そ、ソンナコトハナイヨ、ホントウダヨ」
「それで何を頼みに来たのかな?」
 俺の正確をよくご存知の義兄である、頼み事以外でも話しかける事はあるのにな。
「鍋を作ったのは良いんだけど、その後は僕一人だと大変なんだよね~、手伝って欲しいなと思って」
「それは無理なんじゃないか、そっちの畑を広げるまでなら良いのかも知れないけど、俺の場合はもう決まっているから、来年くらいには畑作業に加わるようになるし」
「大丈夫、畑の事なら問題ないさ~」
 ミュージカル調に言ったものだから、周りの子供達にも受けが良かった。
 ライオンのミュージカルはこっちで上演してもやっていけそうな気がする。俺はそこしか覚えていないけど。

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