異世界生活物語

花屋の息子

ひたすらに熱い、世界地図よ再び

 燃え盛る炎に向けてさらに燃えよと薪をくべる、熱に耐えながらの作業は過酷なものだ。
 これが焼き物窯であれば直接の熱は、窯に遮られて薪を投入する時だけにもなろうが、野焼きはそうは行かない。火から発する熱が直接回りのモノを焼くのだ。
「こりゃたまらんな」
「なんちゅう熱さだ」
 泣き言を言いながらも薪を投入するおっちゃん達には、耐えて下さいとしか言えないのが心苦しいが、この熱が粘土を焼き固めるのだ。
 縄文土器程度で済ませるならば、これほどの高温は必要は無いのだろうが、俺が目指すは最低限須恵器のレベルで、狙えるならさらに上を目指したいと思っている。
 薪の大量投入もそのためで、少量ずつの薪では1000度の大台には到達しないからだ、野焼きでその温度を狙う事自体が無謀なのだろうが、大量の薪を入れる事で薪同士が不完全燃焼を起こして、炭化いわゆる炭へと変わる事で、その中心温度を上げる狙いだ。
 安定して燃やすと言うなら木炭ですら1000度は厳しい熱量だが、量を投入して内部温度の上昇させる事で、それに近い温度を達成でき、ふいごまでは出来なかったが燃焼中心までは、土中に吸気穴を作ってもらったので、酸素供給もぬかってはいないはずだ。
 吸気穴には魔物の抜け殻?として見つかった、蓋無しの土樽をリユースした。
 魔物の抜け殻らしい土樽は、水道管として使うには無理としても、子供ならなんとかくぐる事が出来るサイズの樽なので、空気の通り道を作るためには持って来いだったのだ。
 そのお陰か火力はグングン上がっているようで、少し離れた場所である俺のところにも、高熱を届けてくれている。うん熱い。
 チリチリと肌を焼く熱は、男達から容赦なく水分と塩分を奪ってく、水分と塩分の補給に岩塩と水というなんとも原始的な方法で対処するのだが、それでも倒れる者は出てくる。
 日陰に運んでは定期的に頭に水をかけて、熱中症に陥ったおっちゃんの看病も追加される、これがブラックな職場と言うやつか。
 こうして倒れた者の穴を埋めつつ、過酷な焼き上げは暗くなるまで続けられた。
 高温で焼かれているため、同量の薪から出る灰の量はカマドの半分程度だが、それでも焼き物が見えなくなるには、十分足りる量となったところで薪の投入は終り、このまま一晩かけて冷却して取り出しは明日の夕方となった。まだ熱いからね。
 この倒れ具合を見ての判断だろうが、灰の中での冷却には十分そのくらいの時間は必要だろう、下手に出してパリンなどという音がしたら、泣いてしまう。
 気を張っていたためか、赤ちゃんのように食事をしながらウトウトバタン、祖父と父のファインプレイで、盛大なダイブだけは回避できたものの、俺は寝落ちしてしまったのだ。
 当然トイレに行く事も無かった俺は、寝床に世界地図を描く事になる。
『これはあれか、はるか未来に焼き物の中興の祖エドワードは初釜出しの日、オネショしたとかトリビアにされるやつなのか』
 折角の晴れの日にもかかわらず、俺の心は晴れ渡らない、なんて日だ。

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