異世界生活物語

花屋の息子

求めていたモノ

 翌日も早くから地域住民総出で木の乾燥作業だ、朝早くからご苦労様です、っと心の中でヤクザ映画の子分がやる挨拶をした。
 魔力が少ない人間でもやはり数が揃えば、その作業速度は格段に向上するもので、風を送って回復させてと飽きる作業を繰り返し、昼過ぎには切り出した木材がすべて乾燥させ終える。
 しかしこの簡易乾燥法の欠点は、この先に待っているのだ、生の木と違い乾燥を終わった木材と言うものは総じて固くなる、一般的に薪は割ってから乾燥させる完全に生でなくても少しくらいの乾燥は許容内だが、ここまで乾かすと作業のやりずらさは、一気に上がってしまうからだ。
「固ってえな」
「さすがにきついの」
「こりゃ刃がいかれちまうんじゃねえか」
 案の定あちらこちらから水分が抜けて密度が上がった木材に刃が立たない悲鳴が聞こえる。
「そうじゃ、ルヒノラの婆さま呼んで来い」
 えっ、誰?ルヒノラ?記憶に御座いませんけど?
 初めて聞く名前だ、その婆さん連れてきたら切れるの?
 斧にでも切れ味強化のエンチャントかけてくれる人なのかな?
 この世界に来てからいわゆる生活魔法に類する魔法はいくつか見てきたが、いまだエンチャント系はお目にかかっていない。
 一体どんな事をしてくれる人なのか、全く持って不明なだけに興味は尽きない。
 しばらくして若い衆が戸板を神輿のようにして一人の婆さまを連れてきた、見た目は百歳の双子で有名になった人のようだった。
「ルヒノラばあちゃん、この木なんだが硬くてどうにもならん、頼めるかい?」
「こんバカタレ共が~、いきなり連れてこられて何事かと思えば、この年寄りを殺すつもりか」
 うんわかる気がする、1本2本ならまだしもここには200を越える木がある訳で、どんな魔法を使うにしても絶対魔力量が足らんだろう。
「じゃから自分らでも出来るように覚えろと言うたに・・・・・・・・」
 10代から50代くらいまでの男衆が、それこそ正座でもさせられそうな勢いでお小言をくらう光景は、ただただ滑稽なものでしかない、俺としたら笑いをこらえる事に必死だ。
 30分くらいのお小言がようやく終わった、会った事も無い俺は巻き込まれただけでは?
「わし一人では、一日朝からやって10から12本と言た所じゃな」
「婆さまなんとかならないか?俺達もやってみたんだわ、でも婆さま見たいには出来ないんじゃわ」
「甘ったれた事ぬかすで無いわ!!わしとて昨日の今日で出来るようになった訳ではないんじゃ、毎日練習生とあれほど言うたに・・・」
 口答えなんかしたら余計に油に火を・・・じゃなかった、火に油を注いじゃうじゃないか。
「ねえ、このおばあちゃんは何しに来たの?」
 近くにいたおっちゃんに聞いてみた、現状無駄に説教が長いばあさんでしか無いのだ。
「エドは会ったこと無いのか?ルヒノラ婆さんは、硬いものを柔らかくする魔法が使えるんだ」
 ソフトキタ~

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