異世界生活物語

花屋の息子

ソース

 深手の者は居なかったので治療講習会も、ぱっぱと終わらす事が出来た、どこぞの大学病院の医大生でもあるまいし、深手を負った者を講習教材などには出来ないので、その辺りはチキンハートな俺としては助かった話だ。
 そして俺の腹は、時間経過なのか、はたまた講習会で声を張ったためなのか、ガッツリ空いていた。
 今日の昼食はいつもより少しだけ豪華だ、サラダにオートミール辺りは普段と変わらないが、肉がステーキ状の物から、ケバブのように削ぎ落とされそこにフルーツソース改的な物を絡めた料理に変わったのだ。
 何日か前から女性陣・・・井戸端会の皆様が集まって開発したもので、いくつかの果汁とハーブに塩とシンプルな材料で作られたソース、しかしその味は肉のくどさを口の中から吹き飛ばしてくれ、この夏の暑さの中でもガンガン食える魔法のソースに仕上がっていた。
 肉の方はブロック肉を棍棒?ポイ何かで叩いて、冷めても柔らかさが維持できるように下処理をほどこしてあるので、ケバブと言うより丸焼肉になった肉の表面だけ削いで焼くを繰り替えす中で、冷えてしまう事への対処という画期的な調理法も伝授済だ。普段のステーキも叩いたら霜降り並みに柔らかくなるのかな?
 そんな料理を受け取った男衆は、小さな肉片にしか見えなくなった肉を前に少し困惑していたが、明らかにいつもより手の込んだ料理になっている事、ウチの祖母が居る事で味に不足の無いであろう事、さらにはさあお食べと自信満々で盛り付けてくれた女性陣に文句の言える度胸が無い事から、不満を燻らせたまま受け取った料理を持って、各々地面に腰を下ろして食べ始める。そして・・・
「なんじゃこりゃ」
「うめー」「うめー」
「ちっさくなってるからケチケチしやがってと思ったが」
「ああ、こりゃぁ食いやすい、少し酸っぱいのが良いな」
「これならガンガン食える」
「あああれだ、オクトランこのタレからはオクトランの香りがする」
「何言っとる、フランソワーじゃろ」
「トロイじゃないんか?」
 全員正解っちゃあ正解だよ、オクトランとはオレンジみたいな果実で、フランソワーは安っぽいマンゴー甘みの薄いマンゴーと言った果実だ、トロイは野菜感の強い甘みの無いパイナップルだ。
 結構サラダにも使われる”野菜”で、他にも酸味の強いギムベリーと言うブラックベリーの青い版の果汁なんかも混ぜてある。
 この世界に夏バテなんてものに掛かる繊細な人は居ないが、それでも夏はさっぱりとした物が、美味しいじゃないかと祖母にこんな料理はどうかと話だけして丸投げしたものが、こんなにも早く帰ってくるとは思わなかったのだけど。
 さあしっかり食べてビシバシ働こう。byピッ○ロ社長

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