異世界生活物語

花屋の息子

粘土は見つかったけど・・・

 しかし掘ってみると、これでもかと言うほどNG土を掘り当ててくれるものだ、ただの土と砂だらけの土にと、陶土を知らない人が掘ったのだから仕方が無いとはいえ、そのほとんどが使い物にならない。
 川岸の土を掘り返している者などは砂だらけの土になるし、土手を掘っている物は土を集めている、知識として陶土を知っている方からすると、そんな所を掘ってもとは思うが、前世の知識をカミングアウトしていないので、注意も出来ないもどかしさがある。
 そんな中で中州に区切られた支流とでも言うのだろうか、足首までしか水深の無い川底を掘り起こしていた婆さんが、グニャリとした土を掘り当てた、少し粘土より荒い気もするが今までの中で、最も粘土らしい土だがあれでもまだ陶土にするには少し心もとない。
 大体の目星は付いた、支流の方で尚且つ流れがよどむ場所を探せば、それなりの物が取れそうかも。
「僕あの辺探して来るね」
 周囲に先ほどの婆さんを指差して、自分の探す場所を知らしておく、変に流されたのでは?と心配をかけない配慮だ。
 大人用の鋤は大きすぎて使い勝手が悪いが、何とか掘る事は出来る、こういう時は移植ゴテやリトルスコップのような小型の物が欲しいが、ガーデニングなどする訳でもないこの世界では、あまり用途が無くて普及しないだろうな、せいぜい子供のおもちゃにしかなりそうに無い。
 いらん事を考えていたせいか、柔らかかった土がいきなり固くなった事を見落とした、鋤が食い込んでびくともしない、縦にも横にも動かなくなってしまった。
「すいません~、抜いて貰って良いですか~」
 ここは無理せず大人に抜いてもらう事にする、と言っても婆さんなので腰やったらどうしようかとは思うが、鍛え方が違う事に期待しよう。
「くっちまったのかい、どれ」
 片手でヒョイと鋤をひっこ抜く、この人本当に婆さんなのか?、見た目は白髪混じりで、シワやシミも多いし、間違いないだりろうけど、俺ではビクともしなかったんだぜ。
 鍛え方の問題です。と言われたら、そうですかとしか言えないが、驚愕だ。
 抜いて貰った鋤を見れば、食い込んだ理由が解った、粘土だ。
 灰色に青が射したような色合いの、空気に触れないと内部の酸素を消費しきった細菌が、酸化物からも酸素を取り込む事でこんな色になるらしい、たしか還元反応とか言ったかな、手触りも、ヌッとした感じで間違いが無い。
 見当違いな所を掘っている皆さんには申し訳ないが、一人浮かれる訳にもいかないので、見つけた粘土をせっせとザルに詰めて、一人で休憩させてもらう。
 こんなんで良いのか???異世界チートの恩恵が、休憩だけなんて可笑しくねっ?



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