異世界生活物語

花屋の息子

スープ復活

 木っ端恥ずかしい宣言をしてみたものの、俺のやってることって完全有機栽培じゃね???、これって有機栽培のオヤジになっちゃう感じか?。
 黒いスープと骨粉ペーストは、分けて取って置く事にした、勝手に使う事にはなるが納屋にあった桶にスープを入れて、ロウソク用の枡にはペーストを入れておく。
 油の時のスープを捨ててしまったのは、少し勿体無い事をしたのかも知れない、あれもカイバクを育てるときに使えば、実験データを取る事が出来たのだから。
 鍋や匙を洗いながらそんな事を思った、汲み置きの水でざっと洗ったら、どんな成分が含まれているのか解らないので、もう一度井戸に行って洗い直す。
 外に出ると日は、ほぼ真上まで来ていてもう少しでお昼になるだろう、太陽がジリジリと照らして、夏の暑さもひとしおだ。
 周囲の畑に広がるカイバクも、順調に日の光を浴びて大きくなっている、そろそろ肥を撒く頃合だろう、平年の今頃なら子供達も総出で草取りに励む頃だが、毎日のように三角ホーで地面をカリカリカリカリ掻き起しているお陰で、株の間に生えた草を取るだけで済んでいる。
 畑のカイバクも平年に比べると青く大きい気がする、雑草に養分が吸われていないからだろう。
 井戸に着き水をガブ飲みする、この暑い中熱気の篭る納屋の中で、鍋を煮立たせていたのだ、喉が渇いていて当然だった、前世の知識がある俺が、熱中症の一歩手前だったのだ、あれほど夏のニュースでやっていたのに、水を飲むことすら忘れていた、反省のポーズで井戸の淵に手を置いてしまう。
「こんなポーズを取るのも小学校ぶりだな」
 あらかた汚れを落としてきたので、洗うと言ってもすすぐに近いかもしれない。
「よし綺麗になった」
 これなら母に小言を言われる事も無いだろう、ついでなので、持てる量ではあるが水も汲んで帰る。
 エッチラオッチラ、汲んで来なければ良かった、家から井戸までの距離自体は100mの無いのだが、いくら持てる量とは言ってもやはり重かった。
「ママ、お鍋ありがとう」
「もう良いのね、あらお水も汲んで来てくれたの、ありがとう」
「早くママのスープが飲みたかったの」
 腹黒いと言われようが、ゴマすりは忘れないさ、只でさえ慎ましい食事が慎ましさを、増してしまったのだからな。
 生まれてこの方、大飢饉に当たっていないのか、食事の量に不満が残る事は無かった。
 まあ異世界知識があろうが、俺は別段天才とかではないのだ、起きてしまったら飢饉を解除する手段なんてものは、そうポンポン思いつくものでもない、その辺りは起こらない事を祈るばかりだ。
「じゃあ、早速お昼からスープを作るわね」
「やった~」
「エドは、畑に行ってパパ達を呼んできてくれる」
「は~い」

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