異世界生活物語

花屋の息子

油は出来た、姉を起こそう

 白濁した油を煮立たせると鍋底がくきっきりと見えた、どうやら余計な成分は昨日のスープのほうにすべて溶け出ていてくれたようだ、これならやらなくても良かったかもしれないが確認は重要なので無駄とは思わない、肉汁を手に塗るのは御免だからな。
 それに透明と言っても視覚認知できない物もあるだろうから、それが溶けていると思えば良いのだ。
 とりあえずの完成となった油を冷やすとして朝食だ、やっと夜が明けるくらいに起きたためお腹がすいた。
「ママおはよう~」
「エ、エドおはよう早いのね」
「うんお鍋使っちゃったから早く返さなきゃと思って、それにママにも贈り物も作ってるから待っててね」
 この辺りのご機嫌取りは重要だ、何と言っても鍋使用権が剥奪されるかどうかの瀬戸際なのだ、俺の油作りが市民権を得るには、何としてもこの関門を突破しなければ。
「贈り物って何貰えるのかしら」
「それはまだヒミツ、明後日には渡せると思うんだ、それまで待っててね」
 油は完成と言って良いだろう、しかしもう一つの小骨の方はまだ手付かずなのだ、少なくてもあれの処理が終わるまでは、母から鍋を借りている必要がある。
「それでお鍋は明日の朝には返せそうだから、もう少し貸して欲しいの」
「もぉ仕方が無いわね、明日必ず返すのよ」
「ありがとうママ」
 油は冷えたら木枠に移すだけで完成する、後は小骨さえ煮てしまえば、とりあえずの実験は終わるので、明日の朝までと言わず今日の内に返せるのだが、余裕は見ておいた方が何かと便利なので、明日までの確約を取り付けた。
「ママへの贈り物忘れないようにね、朝食にするからリースを起こして来て」
「は~い」
 ウチのキャラ立ちの悪いお姉様は朝が苦手である、極端な寝坊助という訳ではないのだが、そもそも朝の早いこの世界においては少し起床が遅いのだ、日本の一般家庭に生まれていたら体感で6時で、寝坊助扱いなんてされなかっただろうに。
 前にも話したが、この世界は6時21時のサイクルで動いている、あくまでこの6時は食卓に付く時間であって起床時間ではないのだ、21時は完全就寝時間なのだけど。
 トットット、廊下を小走りしながら子供部屋へと向かう、立て付けの悪い扉を開けても、ウチのお姉様は寝床で蓑虫になったままだ、ワラの寝床に毛皮のシーツ掛け布団にムシロとは、モノの見事に蓑虫姿であった。
「リース朝だよ、起きて」
「えど、おはよう~」
 キャラ立ちの悪いお姉様は、後5分とか言わないのだ、起こしに来れば起きてくれる、手間がかからなくて良いのだが、もう少し濃いキャラクターであったくれたら、面白いのにとかはけして口には出さない。
 それで虐げられる弟とか、めんどくさい性格でなくて良かったのかもしれない、普通が一番だよね普通が。

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