異世界生活物語

花屋の息子

悶絶は他所に置いておいて、目的を達成する

 カウンターに出された串焼きは、あんちゃんズが血抜きもせず適当に常温のまま持ち歩いて、ここに持ってきたものだ、まあこの世界に来てから異世界定番のアイテムボックスなんて物は、見た事も聞いた事も無いので、そのまま持って来るしかないわけなのだけど。
 それでも血抜きもしないで持ち歩いた肉など、普通どころかマズイに決まっている、それを知っているのか知らないのか、串を手にとって口に運ぶこいつらは、俺から見たらおままごとの泥団子を実際に食べているに等しい。
「なんだこれ~」
「まっぜ~ぇ」
「うぇ~」
 やはり所詮は泥団子だったって事だ、三者三様とはこういう事を言うのだと、四文字熟語の正しい現物を見させてもらった、そこだけはこのバカたちに感謝だな。
「血抜きもしないでこんな所まで持ってくれば、中の血が腐ってそんな味になるんだ、獲物はすばやく血抜きをするってのは常識なんだよ」
 おっちゃんの言葉なんか多分こいつらには聞こえていないんだろうな、未だに口に残った味に苦しんでいる、って言うよりもうこいつらに係わっているなんて、無駄な事に時間を使うのはモッタイナイ。
「まま、早くお肉買って帰ろ~」
 しばらくは口の中の後味と格闘していそうなので、本題に移らさせてて貰いたい。
「そうね」
「おいちゃんこんにちは~」
「グラハムさんとこの、ぼんかい、こんにちは、悪かったね待たせてしまって」
「ハーシェさん今日は、バルホースを1ケムと500フル下さいな」
「シーリスさんいつもありがとうございます、本当にお待たせしてしまって申し訳ありません」
「彼らもまだなり立てでしょ、仕方がありませんわ」
 俺も毎度毎度買い物に付いて来る訳では無いので初めてだった訳だが、毎年か隔年ぐらいでは彼らのように狩りの腕が未熟な者が、このように悶絶するものらしいので、肉屋からすると風物詩の感覚なのかもしれない、一般客を巻き込んだ迷惑な風物詩もあったもんだとは思うが。
「ねえおいちゃん、脂身の捨てる所ある~?」
 俺の本題はこっちだ、まああるのが分かってて聞くわけだが、それでもこう聞くのが礼儀ってもんだろう。
「ああ、あるよ、裏にまとめて捨ててあるけど、あんなもんどうするんだい?」
「油を採るのに使うんだ、外で燃やすから黒い煙が出ても良いタダの油が欲しくて」
「また面白い物を考えたね、良いよどうせ捨てる物だから、いっぱい持って行きなさい」
「ありがとう、持てるだけ貰ってきま~す」
「ハーシェさん、すいません、息子が変な物をねだって」
「良いじゃないですか、エド君が考えたって言う道具も、あっちこっちで話題になってるみたいですよ、ウチに来る奥さん達が、ウチも欲しいって店先で話してましたし、今度の油もエド君だったら何かやってくれそうな気がしてるんですよ、もしかしたら捨ててた脂身が売れるようになるんじゃ無いかってね」
 このおっちゃん、以外にしたたかな人だったようだ、まあ、こわもての狩人や戦士達から買い付けをするんだから、ビビリじゃ仕事にならないんだろうな。
「売れるようになっても、僕にはタダでちょうだいね」
「分かったよ、もし売れる物ができたら、エド君にはずっとタダであげるよ」
 よし質言は取った、販売まで視野に入れて、時ロウソクを作って行こうじゃないか。

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