異世界生活物語

花屋の息子

森の番人、じいちゃんの知り合い?

そう思いながら、やっとの思いで町までたどり着いた俺を安堵させる光景が飛び込んできた。
最初に走りこんだ兄ちゃんたちを見て、詰め所にいた兵士たちが父たちの援軍に出てくれたのだ、脛当ての上から太股に至るまでしっかりと革を巻いて、大顎対策も万全の兵士10人が槍を持って駆け出していく。
「坊主、怖くなかったか泣かないとは見所があるな」
装備は兵士の物と変わらない革鎧だが、よく見ると所々金属補強がされた、少し物の良い装備をした30歳くらい男が声をかけてきた。
「グラハムの息子ですから、このくらい平気です」
たぶんお偉いさんなのだろう、ここは父や祖父の為にもきちっと挨拶をしておかなければな。
「父たちを助けに行ってくれてありがとうございます」
「グラハムと言えばそうかクライン殿の孫であったか、心配はいらぬよお前の祖父や父たちは我等の助けなど無くても、蟻ごときに遅れを取ったりせんでな」
あれ?父たちをご存知でしたか、失礼な態度を取らなくて良かった~、相手さんも年の割りにしっかりとした態度の俺に、驚いた感じだったし上々の感は出たと思う。
「マリオネル隊長、第二隊準備完了しました」
「他の魔物が出てこないか柵を見て回れ、必ず三人一組で異変があれば即座に報告せよ、行け」
「はっ」
何も森に人がいたから襲ってきたとは限らない、森は魔物たちの巣窟なのだ一箇所で沸いたと言う事は、他でも湧き出る可能性があると言う事なのだろう、マリオネルと呼ばれた隊長さんはその可能性を潰す為に、
第二隊を編成して居たんだと思う。
領主さんとこの人しか知らないけど、お偉いさんがこんなにもまともな世界と言うものもあるんだなと、変な所に感心したくなる、ふんぞり返った貴族とかが治める国とかはこの理不尽な世界よりも、我慢が出来そうに無いから、俺にとっては不幸中の幸いと言うか何と言うかだけど。
その間にも蟻は、増援によって数の優位さを埋められた為か、はたまた父たちでもどうにかなるほどの敵だったのか、その数を大きく減らして大半が討ち取られて残り数匹を残すまでになっていた、蟻の外皮はなかなかに硬いようで、皆一様に頭への収集攻撃で倒している、頭を集中的に攻撃して脳震盪でも起こしているようにへたり込んだ蟻をすかさず、斧でのギロチン攻撃で仕留めていく戦法に見えた。
最後の一匹を仕留めた、父の周りに居たおっさんズたちはその場にへたりこんで、兵士達は周囲に敵が居ないかの警戒を行っている。
それにしても何と丈夫な蟻な事か、あれだけ槍と剣での攻撃受けてスタンに持ち込むことでしか倒せないとは、魔物の恐るべき防御力、兜を被って同じ事をやれと言われたら、一発二発でノックアウトできるぞ。
「時にグラハム殿の孫よ、名を何と言う?」
俺の後にいたマリオネルさんに、そう声をかけられた。
このタイミングかよ、もっと聞くタイミングはあっただろ、とは思ったがまあそんな意地悪なことは、言わないで置こう。
「エドワードと言います、今年で四歳になりました」
マリオネルほど精神的に老け込んでいた訳ではないが、まあ生前の俺は似たような歳だった訳で、名前を聞いたら年齢を聞くなんて、大体この年代の流れみたいなものだから、歳もついでに答えておいた。
「四つの子供には思えん位だな、先ほどの受け答えもそうだがなかなか面白き子だ」
よく言われるよ、中身おっさん入ってるんで勘弁して下さい。
「隊長、報告します、南側全域に以上ありませんでした」
駆け足で報告に来た兵士の報告を聞いて連戦にならなくて良かったと思う、軍兵の訓練を受けていない普通の農民が混じった前線がいる以上、ここでの敵の第二波なんかあった日には、確実に怪我ではすまない被害になる事は、今だにへたっているおっちゃんたちを見ればあきらかだろう、流石に追撃があったら立たせてでも逃がすのだろうが、兵士たちは警戒をしたままおっちゃんたちの回復を待っている、その後も5分程度立ち上がる者は無く痺れを切らした兵に、休むなら柵まで戻れと肩を叩かれて、やっと重い腰を上げたのだった。
「クライン殿、久しぶりですな」
マリオネルが、祖父を見つけてそう挨拶をする、本来なら祖父の方が礼を言うのが、正しいのだろうがそれ程の旧知と言うことなのだろう。
「マリオネルか、世話をかけた、礼を言う、流石に軍団蟻には手を焼いておった所じゃった」
「ご冗談を、北の壁と呼ばれたクライン殿には、羽虫も蟻も大差ありますまい」
そう言うとマリオネルは、大きく笑った。
「隊長さん、北の壁って?」
「何じゃ、聞いた事が無かったのか?」
「マリオネル、古い話はよせ」
えー、じいちゃんきになるよ。

「異世界生活物語」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く