無い無い尽くしの異世界生活
マジ遠足
リードの声の聞こえた裏手に回りながら、「リード遊びに行こうぜ」と声をかけながらお邪魔した。
「エド、それがよ~親父に薪割りやっとけって言われてさ。悪りっ今日は無理だわ、これだぜ!」
リードの後に積みあがった木の山を指を刺しながら、気だるそうにそう返してきた。襲撃があったり、赤金虫の被害があったりと散々な伐採だったが、俺が虫捕りに勤しんだり新芽掻きをしたお陰で、本命の伐採自体はいつもより収量が多かったのが、リードにはその分不運として回ってしまったかな。
「そうか、仕方ないな、頑張れよ」
「あー」
そう言ってリードを誘うのを諦めた俺は、リアムやウェインと近所の家を回ったが、皆薪割りに精を出していて遊び相手は見つからなかった。
「ウチはじいちゃんがやってるからな~」
割った薪は積み上げて乾燥させてから使う、今使っている薪は前回の伐採後に割った薪で、今回みんなが作っている薪が使われるのは、早くても数ヶ月は先になるので、子供がゆっくり割ったところで薪が尽きる訳ではない、その為農作業より優先度が低く大人の手を使うより、鋤など子供の力では扱えない農作業は大人が、薪割などは子供がやるのが一般的なのだ。
俺はまだ斧が持てないからやって無いだけだ。
「こうなったら、ばあちゃんに頼んで曾ばあちゃん家に連れてってもらうか~」
伐採が終わったら魔法修練のために、曾祖母の家を訪ねる予定だったのだから問題は無いはずだ。現状の魔法力では折角の魔法も、使い物にならずファンタジー技能としては意味を成していない、本来なら早々に曾祖母を訪ねたかったのだが、技術改革もやりたいしで後回しになっていたのだ。
俺のスキルアップのために覚える魔法は、省力化してもお腹いっぱいご飯が食べられる環境整備と違って、後回しにしても支障が在った訳ではないからだ。
遊びに行くのは良いのか?何てツッコミは無しだぜ!
遊び相手が見つからなかったからと言う訳で訪ねるのもどうかとは思うが、向こうも会いたがっているのだから問題では無いだろう、どちらかと言えば祖母の都合の方が余程問題で、今日は無理となったら俺の予定がまるまる開いてしまうのだ。
大急ぎでウチに戻ると、祖母を探し回り曾祖母のウチに行きたい旨を伝える。
「伐採が終わったらって言ってた曾ばあちゃんとこ連れってって~」
「そうだね~、まあ今から立てば昼頃には着くから、行ってみるかね」
そう言うと手土産だろう小物を手さげに詰め始めた。こちらの世界でも親類の家を訪ねる際のマナーなんかは変らないものだ。日本時代と変るのは、酸っぱく無い梅干みたいな果実の塩漬けや、バイネル王の実やベリー系をハチミツで漬けた物、まあ自分ちの漬物が一般的と言うところだろうか、行くといっていた為か漬物類などは、すでに小分けにされたのを手さげカゴに詰めるだけになっていた事で、すぐに出かけられた。
「それじゃ行ってくるからね、夕方には帰るから後頼むよ」
「ママ行ってきま~す」
「いってらっしゃい、お義母さん、おばあさまに宜しくお伝え下さい」
どうも母は曾祖母が苦手なようで、行きたくは無いが悪印象も与えたくないといった感じが、祖母との会話から読み取れた。祖母もそんな事はお見通しで、若干ため息気味に「伝えておくよ」とだけ言っている辺り、多分いつもの事なんだな。
曾祖母の家まではそれなりの距離がある。俺が住んでいる東区画の反対側、西区画の中でも西側になるらしい、この東区画ですら未探索地域の方が多い、俺の探索では大体二割くらいでしかない、俺の感覚では区画が縦2キロ横で3キロくらいの楕円状に作られている、これがどこも区画の大きさが変らないとすれば、目的地までは6~7キロくらいあるということだ。
「遠いけど頑張って歩くんだよ」
そう祖母から言われるが異世界生活は歩きが基本なため、日本にいた頃よりも今の方が余程足腰には自信がある、今思えば田舎の生活はすぐ車で移動していたので、少し意味の違うドアトゥドアのようなものだった。なので前世より歩いたとしても問題は無いのだ。
しばらく歩いて大き目の川に架かった橋を渡っても、そうそう景色と言う物は変らないもので、畑、畑、畑、どこまで行っても見えるのは田舎の風景が目に映るのみだ。
体力的には問題が無くとも、視覚的な目新しさが無いのは少し辛い、異世界ならゴーレム農法とか召喚獣農法とか、そういったものを期待したが一切なく、ウチと同じ事が行われているだけだ。
唯一目新しい物は領主館が見れた事だろうか、それも立派な宮廷でもなければ城という訳でもない、石積みの塀に囲われた巨大な家といった感じのそれは、この世界における文明レベルの低さを感じさせるものだった。はっきり言って古い寺などにはもっと大きな物は数あり、京都に修学旅行した人間からすれば、巨大と言うには言い過ぎかもしれないが、このあたりの平均からしたら巨大と言う事で捉えて欲しい物と言うところだ。
領主館には流石に門兵が槍を構えて配されていて、悪戯にも入り込んだりは出来なさそうだ。別に入らないけど。
そんな館を横目に進んだ西側にも橋が架かっていた事から、この川自体は堀のような役目で作られた物なのかそれとも、元々あった中州に館を築いたのかは解ら無いが、造りとしたら後者な可能性が圧倒的に高そだった。
それからも変らぬ景色と戦いながら、祖母の家を目指す。ほぼ半分は来たが、まだもう半分だ・・・・長いな~。
「エド、それがよ~親父に薪割りやっとけって言われてさ。悪りっ今日は無理だわ、これだぜ!」
リードの後に積みあがった木の山を指を刺しながら、気だるそうにそう返してきた。襲撃があったり、赤金虫の被害があったりと散々な伐採だったが、俺が虫捕りに勤しんだり新芽掻きをしたお陰で、本命の伐採自体はいつもより収量が多かったのが、リードにはその分不運として回ってしまったかな。
「そうか、仕方ないな、頑張れよ」
「あー」
そう言ってリードを誘うのを諦めた俺は、リアムやウェインと近所の家を回ったが、皆薪割りに精を出していて遊び相手は見つからなかった。
「ウチはじいちゃんがやってるからな~」
割った薪は積み上げて乾燥させてから使う、今使っている薪は前回の伐採後に割った薪で、今回みんなが作っている薪が使われるのは、早くても数ヶ月は先になるので、子供がゆっくり割ったところで薪が尽きる訳ではない、その為農作業より優先度が低く大人の手を使うより、鋤など子供の力では扱えない農作業は大人が、薪割などは子供がやるのが一般的なのだ。
俺はまだ斧が持てないからやって無いだけだ。
「こうなったら、ばあちゃんに頼んで曾ばあちゃん家に連れてってもらうか~」
伐採が終わったら魔法修練のために、曾祖母の家を訪ねる予定だったのだから問題は無いはずだ。現状の魔法力では折角の魔法も、使い物にならずファンタジー技能としては意味を成していない、本来なら早々に曾祖母を訪ねたかったのだが、技術改革もやりたいしで後回しになっていたのだ。
俺のスキルアップのために覚える魔法は、省力化してもお腹いっぱいご飯が食べられる環境整備と違って、後回しにしても支障が在った訳ではないからだ。
遊びに行くのは良いのか?何てツッコミは無しだぜ!
遊び相手が見つからなかったからと言う訳で訪ねるのもどうかとは思うが、向こうも会いたがっているのだから問題では無いだろう、どちらかと言えば祖母の都合の方が余程問題で、今日は無理となったら俺の予定がまるまる開いてしまうのだ。
大急ぎでウチに戻ると、祖母を探し回り曾祖母のウチに行きたい旨を伝える。
「伐採が終わったらって言ってた曾ばあちゃんとこ連れってって~」
「そうだね~、まあ今から立てば昼頃には着くから、行ってみるかね」
そう言うと手土産だろう小物を手さげに詰め始めた。こちらの世界でも親類の家を訪ねる際のマナーなんかは変らないものだ。日本時代と変るのは、酸っぱく無い梅干みたいな果実の塩漬けや、バイネル王の実やベリー系をハチミツで漬けた物、まあ自分ちの漬物が一般的と言うところだろうか、行くといっていた為か漬物類などは、すでに小分けにされたのを手さげカゴに詰めるだけになっていた事で、すぐに出かけられた。
「それじゃ行ってくるからね、夕方には帰るから後頼むよ」
「ママ行ってきま~す」
「いってらっしゃい、お義母さん、おばあさまに宜しくお伝え下さい」
どうも母は曾祖母が苦手なようで、行きたくは無いが悪印象も与えたくないといった感じが、祖母との会話から読み取れた。祖母もそんな事はお見通しで、若干ため息気味に「伝えておくよ」とだけ言っている辺り、多分いつもの事なんだな。
曾祖母の家まではそれなりの距離がある。俺が住んでいる東区画の反対側、西区画の中でも西側になるらしい、この東区画ですら未探索地域の方が多い、俺の探索では大体二割くらいでしかない、俺の感覚では区画が縦2キロ横で3キロくらいの楕円状に作られている、これがどこも区画の大きさが変らないとすれば、目的地までは6~7キロくらいあるということだ。
「遠いけど頑張って歩くんだよ」
そう祖母から言われるが異世界生活は歩きが基本なため、日本にいた頃よりも今の方が余程足腰には自信がある、今思えば田舎の生活はすぐ車で移動していたので、少し意味の違うドアトゥドアのようなものだった。なので前世より歩いたとしても問題は無いのだ。
しばらく歩いて大き目の川に架かった橋を渡っても、そうそう景色と言う物は変らないもので、畑、畑、畑、どこまで行っても見えるのは田舎の風景が目に映るのみだ。
体力的には問題が無くとも、視覚的な目新しさが無いのは少し辛い、異世界ならゴーレム農法とか召喚獣農法とか、そういったものを期待したが一切なく、ウチと同じ事が行われているだけだ。
唯一目新しい物は領主館が見れた事だろうか、それも立派な宮廷でもなければ城という訳でもない、石積みの塀に囲われた巨大な家といった感じのそれは、この世界における文明レベルの低さを感じさせるものだった。はっきり言って古い寺などにはもっと大きな物は数あり、京都に修学旅行した人間からすれば、巨大と言うには言い過ぎかもしれないが、このあたりの平均からしたら巨大と言う事で捉えて欲しい物と言うところだ。
領主館には流石に門兵が槍を構えて配されていて、悪戯にも入り込んだりは出来なさそうだ。別に入らないけど。
そんな館を横目に進んだ西側にも橋が架かっていた事から、この川自体は堀のような役目で作られた物なのかそれとも、元々あった中州に館を築いたのかは解ら無いが、造りとしたら後者な可能性が圧倒的に高そだった。
それからも変らぬ景色と戦いながら、祖母の家を目指す。ほぼ半分は来たが、まだもう半分だ・・・・長いな~。
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