無い無い尽くしの異世界生活

花屋の息子

一定の評価は得られたようだ

 翌朝、俺が畑に向かうと父たちが改良した三角ホーを畑で試していた。さらには三軒の男たちがワイワイやっているのだから、田舎と同程度の人口の町でも人目につき、面白いモンを使っているとガヤガヤと人が集まりだす。
 娯楽の少ないと言うか全く無い場所では、このような事ですぐ人が集まってしまう、企業秘密なんて絶対ありえないな。
 そんな集まった人たちを前に、父達はデモンストレーションをやるハメになったは良いが、「俺たちではうまく説明できない、お前が説明して来い」と父からそう言われて、四歳児である俺が観衆に説明する事になった。
 使い方と効果の予測は父にも説明したが、観衆の目線に曝されながら演説するのがイヤだったようで、既に顔が赤い、こんな所で父の弱点が上がり症と知る事になるとは思わなかった(笑)


「え~、この道具を思いついたグラハムの息子でエドワードと言います。今から僕が説明をして父達が使ってみるので何かあったら僕に聞いて下さい」


 どこの世界でも仲の良い者同士が固まるもので、この場合は近所同士でグループを作って固まってきいている。俺の事を知る者は、またあそこの子が何やら変な物を作ったのか?と言う感じだし、知らない者は子供が作ったものかと立ち去るものも居れば、小僧が大人の前を張って何をしていると言ったけげんな顔をしている者もいる。


「この道具は、いろいろな事が出来るのですが、まずはいつもなら取る事が出来ないほどの小さな草を取るための道具として使ってみます。先に付いた刃の部分で土を削り草を取ります」


 俺の説明と平行して父がデモンストレーションを行う、蟻の触角を取り付けた三角ホーは、実際の物と遜色ない性能で土を削っていた。
 やはり木と違い硬度と鋭利さがあると、性能に格段の差が生まれるようだ。


「次は少し大きな草を取ってみます。この時は先端を使えば引き抜けるように作ってあります」


 父は説明と連動して先端を刺して草を取り上げてみせていた。もちろん土台が木製なので強度に問題は残るが、見ていた感じでは余り大きな物や無理やり力任せに振るわなければ、すぐさま壊れると言った事も起こらないだろう。


「見ていた通り小さい内に草を取ってしまえば、いつもの草取りも楽になると思います、これを見て下さい」


 そう言うと俺は畑に入り、削り取った土に混じっていた芽の出たばかりの草を、爪で摘まみ上げて見せると、フムフムとうなずく者に良く見せろと前に出てくる者、いろいろな反応が返ってくる。
 その中には近所の者とヒソヒソと話す者も居て。


「小さい内にか!、確かに手間の掛かる草取りも楽になる」
「そうだな。暑い中畑に出ての草取りを楽に出来るのは良いな」


 観衆から肯定的な意見が聞こえてくるのは嬉しい限りだ。少し意外だったのは慣れているから、平気なのかと思った暑い中の作業を苦にしている人がいる事だった。
 イヤだ面倒臭いが無ければ技術発展など起こりえないのだから、これならイロイロ作っても受け入れてもらえそうだ。材料無いけどトホホ。


「「俺も作ってみるかな、どうやって作るんだ坊主」」


 自分が言った事とは言え観衆から質問攻めにあったが、おおむね三角ホーの有用性が認知して貰えたようで良かったよ。
 細かな作り方と材料は説明したが、やはり金で作るか魔物素材製にするかは、いろいろあるみたいでみんな欲しくても手が出せないと難しい顔をしていた。
 確かに金で作るとなれば材料をどうするか考えなければならないし、魔物素材は自分で採るには危険が伴うので、誰かに頼まなくてはならない、その金はどうする?とグループディスカッションを繰り広げていた。後は自分達でよろしくね。


 朝の一幕が降りた後おっちゃん達は自分の畑に帰っていった。結局祖父用と俺用に取ってきた分を、おっちゃんたちに上げてしまった事で、父の分しか残らなかった訳だが、今回想定していない祖母や母、姉の分まで入れたら、何度かは伐採のたびに材木探しをしなければならないだろう。
 前回のアリ処分でウチの分け前は、父祖父の奮戦の甲斐あって頭七つだったから、製作で使った分を引いて11本の残りがある、まだ余裕が有るから良いがだからと言って、今回のように大盤振る舞いを続けると、あっという間に底を着く本数なので、要注意だ。大事な事なのでもう一度言っておく。大盤振る舞いは要注意だ。
 父はその後も畑に残って、除草作業を行っていくと言うので俺と祖父は帰宅した。


「じいちゃん、僕は遊んでくるね」
「変なとこ行くんじゃねえぞ」
「は~い、いってきま~す」


 まあ遊びに行くって言ってもリードを誘ってからだな、家も隣と言う事もあってリードとは良く遊ぶのだ。
 あくまで隣と言うが日本の住宅地の隣とは訳が違う、田舎の隣は歩いて1~2分程度の距離が開いているのだ。このような所を見ると田舎のほのぼのとした光景だと思う。


「リードいる~?」
「こっち着てくれ」


 玄関前で声を掛けると裏の納屋の方から声が返ってきた、勝手知ったる隣の家だ庭を通って納屋の方に向かう、そこには先日切った木を薪にする為に割っているリードの姿があった。

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