和風VRMMOは本物もやってます!? ~妖電脳遊戯時空~

ノベルバユーザー225387

劇物と薬の混ぜるな危険



 微睡みのなかぼんやりとした頭で周囲を見渡す。
周りには自分の背丈よりも高い葱が立ち並び見上げると何故か先端には円筒形の帽子がかけられている。いや、ちがうな。あれは案山子か、骨をモチーフにするとは悪趣味だが珍しいな…………って!! 
「いやオカシイだろ!?」
  幻覚に思わずツッコミを入れてしまい、つられて意識がはっきりとしてくる。  
 確か骨の坊主か僧侶かなにか解らない奴らのステータスを確認しようとして…。そうだ、あんまりにアイコンの数が多すぎて酔ったんだ。
 目が覚めると倒れた時と似通った暗い雰囲気の路上に寝かされていた。 
 上体を起こし辺りを見渡すと心配そうな顔をしたタテジマさんと少し離れた所で両手をかざすノウンさんが目に写ってきた。
『オーwake-upでスカ』
『ほほほ、なんじゃもう起きてしもうたか。もう少し寝ていてもよかったものを』
 とりあえず目の前で手をグーパーさせて現実(?)に戻ってこれ、体に異常がないことに安心する。
『いや何笑ってるんですか!?こっちはぶっ倒れてたんですよ!!』
『いやいや他人の不幸は密の味というじゃろ?』
 いやいやいや其れを本人の前で言うか普通。キャラ造りか素かはわからないけど…。
『二人ともあんまり大声ださないでくださいよ』
 軽く言い争っていると両手をかざしたまま若干疲れた感じがするノウンに言い止められる。
 止められるのは仕方ないとしても何で汗かいてるんだこの人?。
『俺の穏形おんぎょうの術であいつ等から隠れてる状況忘れたんですかい、これじゃ意味ないですぜ』
 なるほど、ノウンさんの注意なのかボヤキなのか判断が難しいところだけどなんとなく解った。
『今のでだいたい掴めましたけどどういう状況なんです?』
『ん?ああ、個別認識を使わずに郡体のステータスを見たもんだから酔ってぶっ倒れたんだよ。ったく俺は止めようとしたのに』
 ああ、やっぱりか。そんな感じはしてたしな、やっぱりこの人一番常識人だ、あくまでこの中に限るけど。
『それで前衛いないまま袋叩きに遭う前にここに運んで身を隠してるってわけだよ。まだどっかおかしい所はないか?この先前衛がいないと真面目にキツイんだから何かあるなら言ってくれよ』
『Hahaha。No problemデース。meのexcellentなpotionをつかイマーしタ』
『そうだったんですか。回復ありがとうございました』
 お礼を言って軽く頭を下げると使われたであろうアイテム空ビンが目に入った。
 (超濃厚濃縮還元テトロパラジデッドリー トキシンとベンゼンの香りチャレンコフの色合いを添えて~)
 いけないな、まだ少し気持ち悪いのが残ってる見たいだ、シャレにならん名前のアイテムが見えてる。目を擦り再度読み直す、なになに…。
(超濃厚濃縮還元テトロパラジデッドリー トキシンとベンゼンの香り チャレンコフの色合いを添えて~)
 やっぱりヤバイものじゃないか!?
『イエいえ、礼には及びまマセーン』
『問題がないならこっからのこと考えようぜ』
『いやいやちょっと待った。待って下さいよ!』
 足元にあるビンを拾い上げ何事もなかったかのように話しを進めようとする二人に詰め寄る。
『そうじゃ。茶番劇はこのくらいにしておいてそろそろ対策を練ろうぞ』
『いや茶番かもしれないけど大事なことですから聞いてくださいって、ああもう』
 三人は俺の言うことをスルーし相談を初めてしまい仕方なしに参加を余儀なくされる。
『先ずここは妾が一つ華美なものを放ってみせようか』
『いやいや前にもそれでガス欠になって退散する羽目になったでしょう。今回は自重してください』
『むー…。致し方なし、か』
『そのトぅりデース。それーにgeneralはbackでstandbyしてるのがGood Job!フーリンカザーンデース』
『人のっ!話しをっ!聞いてっ!下さいよ!それにどこら辺が風林火山なのかさっぱり解らないし。はあ、隠れたまま地道に削って数を減らしていくのはダメなんですか?』
 一気にまくし立てても思わずため息がでてしまうがとりあえず棚上げして意見を言う。
『それは無理だな、穏形の術はあくまで姿を隠すってだけだ。最初の一発は気づかれずにやって仕留めたとしても他には気付かれるよ。地道に削っていく案には賛成するけどな』
 これでスルーされていたら本気でキレてやる、半ば本気でそう考えながら言ったが意外にもしっかりと受け取ってもらえた。
『半分ほど減らせば本命が出てくるんじゃ。以前は妾の一薙ぎであっという間であったがそのあとが続かなくてのぅ。かえすがえすも苦々しい限りじゃった』
 その時のことを思い出しているのか口元は扇子で隠しているが持つ手はプルプルと震えており、顔ならぬ扇子に悔しがっていますと書いてあるように感じさせる。
『今回は任せて下さいよ。こうなる事も想定して色々考えて来てますから』
『その割にはひどく取り乱しておったように見えたがの。まあ良い善きに計らうのじゃ』
 ノウンさんは汗を流しながらも我に策有りといった表情をつくる が即座に突っ込まれ撃墜される。
『それで考えとは?』
『よくぞ聞いてくれた。と言ってもそこまで難しいことじゃない、この辺はいりくんでるから巧く誘導すれば簡単に分断できる。あとはちょっとずつチマチマ数を減らしていけばいい』
 話しを聞いてみると突っ込まれ落ち込んだのが嘘のように立ち直り意気揚々と説明してくれた。
『この辺は平城京をモチーフにしてある…、らしいからな地元なんで良く知ってるんだよ』
ノウンさん京都府民なんだ。その割りには関西弁、というか京都弁ないな。
『なら。ここは任せようかの』
『その前に妖力がキツいんで回復させてください。タテジマ、俺にも回復薬くれないか?』
『リョーカイデース。しょウショウwaitを』
 ノウンさんのオーダーにタテジマさんは地べたにシートを広げ、どこから取り出したのか様々な道具を並べ始める。
 材料と思わしき植物や骨。紫、黄色、青の蛍光色とりどりの液体。道具と思わしきビーカー、ドリル、ペンチ、ドライバー等々の工具一式。
『イヤイヤ、流石にドリルは冗談でしょう』
 思わず口に出てしまう、スキルの仕様で全部の道具を展開するのでなければギャグでやっているとしか思えない。そんな思いを他所にタテジマさんは薬草を潰し汁にしてボウルにいれ、まな板を出しその上で河豚と思わしき丸い魚を捌き始める。
 材料は気になるがやはり工具の類いは使わないようだ。そして懐から小箱を取りだし中身を取り出すと辺りになんとも言えない人工的な香りが立ち込める。そしてドライバーを取りだし…。
『Oh!ここカラハキギョーSecretデース』
『そこじゃなくて!作り方以前に何いれました!?明らかに毒物と劇物でしょう!』
『ナンのこトデースか?こレはbasicナそザイデース』
 人工的な匂いのする青い玉をボウルに投入し後ろ手に隠すが方法よりも入れたもののほうがインパクトが強すぎる。
『何がベーシックですか、何が。どうみても毒だし後から入れたのって絶対に芳香剤かなにかの類いでしょう』
 視線をタテジマの置いた箱に向けると(完全消臭 無香の向こう)     といういかにもな名前の書かれたラベルが張ってあり、どう考えても口に入れていいものではない。
『あー急かす訳じゃないが気持ち急いでくれると助かるんだが』
『うむ。そうじゃ男子なのじゃからそのような些末事は気にするでない』
 タテジマさんに問いただそうと詰め寄るが二人に止められる。
『ダイじょーブ。gameなノデno problemデース』
『そういう訳にはいきませんよ。下手なものより余程有害じゃないですか』
 握りしめた左手を頬の辺りに持っていきゆっくり開く謎のポーズでおどけるタテジマさんに詰め寄ろうとする、が。
『妾の手を払うとは良い度胸じゃのぅ?』
 気品は残しつつも凍りつくような恐ろしさを纏わせた声に思わず振り返る。そこには表情こそ笑顔だが眼がまったく笑っておらず背後に鋭い眼光を放つ獣が見えるかのようなタマモさんがいた。
『しばらく黙ってもらおうかの』
『はい』
 凍てつくような視線と声に思わず即答し引き下がる。
 背後では耳をつんざく機械音、前方には冷たい笑みで視線を突き刺して来るタマモさん、2つの恐怖に挟まれた状況はほどなくして終わりを迎えることになる。
『デーキまーシたー』
『ようやくか。………っく。あーキクキク。くぅぅ。』
 タテジマさんの完成を知らせる声にタマモさんの視和が和らぎ冷たさから開放される。
 振り返るとノウンさんはボウルを片手に顔をしかめ何かに耐えるように頭を押さえ、うめき声をあげてている。その様子にタマモさんは先程の機嫌の悪さが嘘のように面白がっている。
『でもっこれマッズイな』
『くくく。良薬は口に逃がしと言うじゃろう。其よりも早う仕掛けようではないか』 
 タマモさんはもう待ちきれないと言う表情で早う早うと子供のように急き立てる。
『Time is many ソロソロイキマース』
『後でさっきの件についてじっっっっくりとオハナシしましょうね?』
 一応、釘を刺しておくがどこ吹く風で三人はワイワイとタイミングを図る。
『よし!今が頃合いじゃな。皆の衆いくのじゃ』
 グダグダな様相で俺は本日二度目の戦闘に参加するのであった。



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