俺は今日から潔癖吸血鬼

倉本あまね

なぜ君はここに?

オマエワコノママデワシヌゾ。


俺は死ねない。死ぬわけにはいかない。


ナゼソコマデシテイキヨウトスル?


あれ、確かになんでだろう。別に未練なんてないかもしれない。


ダッタラ…


いや、未練はあるはずだ。

勉強?違う。

まだ食べたことのない料理?違う。

友達?違う。

どれも心残りではあるが別にどうだっていい。

梨彩?惜しい。おそらく未練の中に入っているだろうがまだ小さい。


デワ、オマエノミレントワ?


そうだ。思い出した。俺が生きる理由。逆になんで忘れてたんだろう。


体を起こしながらその名前を叫んだ。


「菜々ァァァァァ!」


菜々がいるから俺はまだ死ねない。

菜々がいるから俺は生きることが出来る。


俺はフラフラしながら家に帰った。


「梨彩!菜々!」


「兄さん!」「悠真!」


2人の後ろに見覚えのある人物がいた。


「富士さんに姫さん!いくらなんでも早すぎませんか!?まだ10分くらいしか経ってないのに…」


「はぁ?なに言ってんだ?もうこっちの世界帰ってきてから1時間もたってんじゃねぇか。」


「え…」


確かに大介に家の住所を送ったのはコンビニについてすぐのことだ。そのあとに時間が経ってたとすると…


「そうだ!穴ッ!」


そういえばと思い矢が刺さった腹を見た。


「あれ、ない…」


傷がない。だが矢が刺さったのは夢ではない。パーカーの下のTシャツが血だらけである。


「兄さん!そのシャツどうしたの!?」


「ああ、コンビニに行った時に誰かに矢を刺された。でも傷はほら、このとおり治ってる。そういえば2人はいろんな人に電話してどうだった?」


梨彩は心配な様子を見せつつも答えてくれた。


「それがね、誰も出てくれないの。菜々姉が警察にだって電話したのに繋がらないし…」


やっぱりそうだ。俺の考えはほぼ確実だと思った。

あるひとつを除いて…

とりあえずみんな廊下にいたものだからリビングに招いて自分の考えを告げた。


「ここはもともといた世界ではないと思うんだ。」


みんなも唖然としているから順を追って説明した。

コンビニに行って車が停まっていたにもかかわらず誰もいなかったこと。

菜々たちがいくら連絡しても誰も出なかったこと。

そこら辺からこの世界にいるのはドゥールに呼び出された人間だけだと推測した。


「でも、それだと…」


梨彩がなにかモジモジしているのを見て俺は頷いた。


「菜々がここに居るのはおかしい。」


大介と愛理沙もあとから気づいいた素振りを見せて菜々は話についていけずにあたふたしている。


「でもその矛盾除くと俺がさっき言ったことがぴったりあうんだけと。」


梨彩が「って言うことは…」とつぶやくと

「菜々ちゃんはなんらかの手違いでこっちに来ちゃった。」

大介と愛理沙が息ピッタリに続いた。


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