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ぺぺろん

【第1章】愛されたいのは貴方だけ

ここは研究室
様々な実験が繰り返され
生死が繰り返される場所

人は毎日普通とは違った刺激に飢え新たな物を生み出してきた

私もその1人
「被検体0820調子はどうですか?」
病室のような鉄で仕切られた部屋に無機質な声が響く
「退屈です」
「退屈、とは物事に興味がもてず、あきあきすること。です、精神的感情になります、私は被験体0820の身体の健康状態について質問しています」
「はいはい、健康です、健康…」

「気分の落ち込みが伺えます」
「退屈だって言ったじゃん」

朝と夜このAIからの質問と昼にある施設からの身体検査そして3食の食事
飽き飽きしていた、この施設にも
変わり映えしないこの空間にも

私のような被検体は番号からしてまだまだ居るのだろう
会うことはないがこの代わり映えしない空間に1人でもいれてくれれば楽しいのではないだろうか

ふたたびAIからいつもと同じ質問が繰り返される
私はそのAIの質問を遮ってみた

「ねえAIさん」
「どうしましたか?」

「もしも私達が反逆して外に出たら?」
「それは有り得ません」

「なんで?ここの人間全員私の毒で殺しちゃうかもよ?」
「仮に反逆したとして被験体0820貴方には帰る場所がない外に出ても貴方にメリットはない」

「そんなの分からな…」
すべてが口から出る前にジリリリリとベルがなった
「時間ですセッションを終了いたします」

AIのランプがプツンと切れ静寂が広がる
鉄で遮られた部屋に太陽が降り注ぐ事はない
ひんやりと冷たい部屋で心が沈んでゆくのがわかる

「もう、はやく、」


誰か助けに来て



***

ピロンと部屋のドアに電源が入る

黒髪に赤いインナーカラーをいれた男は私に呼びかけた
「出ろ今日はお前の番だ」

「…」
「出ろ聞こえないのか?」

「聞こえてる」

どうやら私を使って実験をするらしい
「今日は毒の濃度の最大値を計る」
「嫌」
「我慢しろ」
「嫌」
「困らせんなって」
「嫌」
「苦しいのはわかるけどな」
「何がわかるんだ!」

つい声が大きくなってしまう
口から毒ガスがふわりと舞う

「落ち着けって、どうどう、」
「苦しいの!嫌なの!!」
心の淀みのように
空気が淀む
空気に色がつき
毒が広がる

思わずその場から走り出す
「おい!まて!」
ジリリリリリリリリリ
感情の起伏に反応したAIがベルを鳴らす

目の前にアクリル版の壁が現れ私を閉じ込める
「嫌だ、いや、」
空に睡眠薬を霧状にした物が振りまかれる

意識がふわふわと浮かび上がる
倒れ込んだ床の冷たさを感じながら目を閉じた

***


瞳に薄い光が指す
「目が覚めましたか」

聞き慣れたAIの声
首にはチップの埋め込まれたチョーカーが巻かれていた

「なにこれ、」
「チップにAIが組み込んであります、被験体0820の精神的激しい起伏がみえましたメンタルケアを行うため、こまめなカウンセリングを行います、尚この音声は重要と判断した場合カウンセラーに音声通達されます」

「…」
どうやら話の内容によってはあの男に送られてしまうらしい

「ねぇAIさん、」
「なんでしょう」
「ずっと思ってたのよねAIって呼びづらいのチップって呼んでいい?」

「かまいませんが」
「やったね、よろしくねチップ」
「よろしく、とは初めて会った人間に…」
「細かいことはいいのよ」

なんだろう心がウキウキする
新しい友達でも出来たかのような高揚感だ

そんな高揚感の中ふと疑問点が浮かんできた

「ところでチップ、」
「なんでしょう」
「私以外に実験体はいるの?」
「あなた以外にほぼ完全体である被検体はそれぞれ散りばめられた実験支部に存在します」
支部は4箇所
本部を中心として
北の支部に炎を操る0860番
東の支部に植物を操る0180番
南の支部に羽を操る0600番氷を操る0966番
西の支部に水を操る0420番

「そして本部に毒を操る私って訳か」
「そうですね被験体0820」
「私達ってなんの為につくられたの?」

「この実験については機密事項が多いため話すことはできません」
「えー、教えてよ」
「少々お待ちください」

しばらく読み込んでいるのかランプがぴぴっと点滅した
「カウンセラーより承諾が降りたため一部お話いたします」

「げ、今までの話聞かれてたのかよ」
「現時点本部含め実験を行ってきた幾多の被検体にはある使命を課せています」
「使命?」
「実験体が完成しその暁にはこの国を脅かす存在になってもらいます」

「は?なんで、意味わかんないじゃん」
「マスターのお言葉の一説を借りますと『人間は誰にも殺されないと今現在、思い信じている牛や豚、鳥に魚は人間が食うと言う一方的な理由で殺されているのにも関わらずだ、不条理だと誰も気づかない、だが人間も死ぬ、私は人間も殺し合いをしなくてはならないと思っている、それは人間が相手ではなく人間より強者のものによって、だ、人は増えすぎた、』と」

「闘う?そんなの嫌だね!!私は普通に戻りたいよ」
「普通という言葉をマスターは毛嫌いします」
「わたしは…私は普通の女の子みたいに買い物したり食べ歩きしたり恋したりそんな生活が良かったの!なんでこんな鉄の中閉じ込められて自分の毒ガスで死にかけなきゃいけないわけよ!!」
怒りが溢れ言葉が流れ落ちる

「私…1度でいいから愛されるって知りたかった恋してみたかった」
「愛とは性別のある物のみに許された物0820貴方には性別は存在しません、よって恋は成り立たない」

「そんな事言わないで」
「恋なんてひとりよがりですよ相手の気持ちなど結局分かりはしないのだから」

「夢がないわ」

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