ガンスリンガー

限界集落村人

20

王都には49万の兵がいる。それに対して俺たちは三人。護衛なしで来た俺たちは、ゲルマン王国4代目国王、タナス・ゲルマンを前にしていた。
「して貴殿はなぜ我のもとに参った?」
小太りの国王をいかにも無能臭を放っていた。
王の間は14地区とは比べものにならないほどでかかった。やはり六十の地区を支配する王の城。その城がこれまでの苦労を形にしているようだった。
そして立ち並ぶ家臣たちは1000人を越えていた。大佐が訪れるという事で各地の領主と家臣を呼び寄せたらしい。要するに幹部集結という事だ。
「今回、国王様には戦争の代償を払ってもらいたく参上いたしました。」
「ほ、ほぅ…、まぁ私が仕掛けた戦争だ。なにを望む?」
「私が望むのはその玉座。それだけでございます。」
大佐の言葉を聞いた国王は怒り狂い始めた。
「はぁ!?ふざけるな!だれかこの者を捕らえよ!」
しかし国王の命令を聞く者はだれもいなかった。
130万の軍勢をたった1万やそこらで撃退した大佐に対し、賢明な家臣たちは戦うだけ無駄と悟ったのだろう。
「国王の家臣諸君!!私に刃向かう者は今この場で剣を抜け!」
家臣たちは誰一人として大佐に歯向かわなかった。
「そういう事です国王様。これからは辺境の地で畑でも耕して暮らすといい。」
そして大佐は玉座に座った。
家臣たちは跪き、大佐に従った。

大佐は国王改め、新政ゲルマン王国第1代総統ディーナ・バルデラとなった。
地区制度は改められ、地区民投票により選出された地区知事によって国家の取り決めに準じて内政を執り行われる。
王都には各省が設けられた。
軍の統制はすべて国防総省に委託され、タヌーアが国防長官に任務され地区守兵、王国軍はすべてタヌーアに任された。
研究開発省にイルムスが配属され、兵器や技術の研究開発に取り掛かった。
王国の武器や兵器を製造していた鍛冶場は兵器製造工場へと変わった。
徴兵制度は無くなり、完全志願制になり、王国の兵士は760万から190万へ減少した。
王国は大佐が玉座についてから近代化を遂げ、国境が解放されて人口はみるみる増えていった。
それをよく思わなかったのは王国周辺の国々だった。
サイシン共和国は他国への出入りを禁止し、ダウク帝国は王国の不可侵の約定を破棄した。
ダウク帝国は400万の軍勢を国境付近に派兵し、王国は戦争の可能性があると報道した。
しかし国民は誰一人として危機感を抱いていなかった。なぜなら、この国に勝てる国なと、この世界にはいないと考えているからだ。

俺はダウク帝国の北にある森の上空、10000mにいた。
機内には俺とリー、マグスとリーの小隊員で神の目を持つというマグゴレアの四人。
「まったく、僕たち大佐にいい具合に利用されてるよね。あ、大佐じゃなくて総統閣下だった。」
「あのなリー、正直な気持ちはそうじゃないだろ?」
「まぁね。僕たちは総統閣下様の世界征服なんてのに興味はないけれど、人を殺すのは好きなんだ。だから総統閣下には感謝してるんだ。前の世界じゃ戦争なんてほとんどないから、この世界は俺たちに合ってるんじゃないかな。」
「そまさにその通り。ディーナはこの世界にきた瞬間から野望を抱いたように、俺たちもまたこの世界にきた瞬間から戦いたいという願望だけで動いてきた。クーパーがディーナに文句を言わなくなったのも、内心は変える必要はない。ここが自分の居場所だと感じているんだろう。」
俺たちが話をしていると、機内にいる隊員から降下まで1分と言われる。
「そんじゃあ行くか…。」
飛行機の後部のハッチが開き、俺たち四人は飛び降りる準備をする。
「20秒!」
下は雲しか見えない高高度。HALOを行うにあたっての注意事項は、失神しないようにする事。
「GOGOGO!!」
俺たちは飛び降りた。
高速で雲の中に侵入し、白い雲を突っ切ると、やっと地面が見えてくる。
高度はどんどん下がり、地面が刻々と近づいてくる。そして一定の高さでパラシュートを開き、ゆっくりと効果ポイントまで降りていく。
森にある木がない平野に降り、周辺を警戒し、全員降りてパラシュートをまとめたら森へと入っていった。

「こちらナイトフォックス、森に入った。敵にはバレてない。」
通信の感度は上空を飛行中の無人偵察機とリンクしているため離れると悪くなるが、まぁ問題ない。
「こちらクーパー。そこから森を南進すると廃村がある。そこかは現地協力者に従って首都オルデランに入れ。クーパーアウト。」
「全員聞いたな。これから現地協力者、通称自由の騎士団と合流する。」
帝国は現状王国に対する人口流出を避ける措置として、国境に大軍を配置し、王国へ渡ろうとするものを阻止しているらしい。帝国は長年奴隷制度をやってきている為、王国という自由な国を求めて既に500万人近くが流出している。
しかし国境が塞がれてから、奴隷や貧困層に対する搾取が激化し、結果的に国内に反発分子、レジスタンスを生み出す原因となった。そのレジスタンスが自由の騎士団。リーダーの男はなんとヘッケランだという。要するに王国から逃れた犯罪シンジケートが帝国内でレジスタンスとして活動しているという事だ。しかし今回はチンピラというよりは農民や奴隷の割合が多い。
だがヘッケランがいるということは、あの女もいるという事になる。そればかりは脅威として警戒すべきだ。
廃村が見えてくると、馬が6頭と人が二人立っていた。
「自由の騎士団だ。これから首都近郊の地下にある本部に案内する。それとこれを着てくれ。」
俺たちは渡されたローブを着て馬に乗り、自由の騎士団の本部へ向かった。
本部は王国にあった犯罪シンジケートの地下牢みたいな場所で、そんなに大きくなかった。
「よぉ!久しぶりだな裕一!」
ヘッケランと会うのは2年ぶりだ。
「お前んとこの少佐、あ、いや今は総統閣下だったか……相当すげー事しやがったな。」
ヘッケランはスラム街が潰れた後、数ヶ月後に帝国に入ったらしい。
レジスタンス活動を起こさせたのも、俺たちに協力する為と言っていたが、驚くべきはやはり人身掌握ができるという事か。
「んで、ちょっと本題に入るんだが、元の世界に帰る方法が見つかった。」
ヘッケランはそう言って俺の顔を見てきた。
「あれ、あんまり驚かねーな。」
「いや、驚いたさ。だが、俺には戻る気がないんだ。だからその情報は俺じゃなく帰りたいと思っている俺の仲間に教えてやってくれ。多分家族がいるやつはこっちの世界にいたくても帰らなきゃならないと思うんだ。」
「そうか、じゃあ俺はここにいるからそいつらが直々に俺に会いに来たら教えてやる。それも今みたいにひっそりとじゃなくて街で堂々とな。」
「つまり、帝国を支配圏に収めろって意味だろ?我らが総統閣下なら言われずともやるだろうよ。」
「それじゃあ俺はここで気長に待つか。」
マイペースなヘッケランはその後姿を消した。

ヘッケランから聞いた情報によると、帝国は新兵器を前線に配備するらしい。
帝国と王国の国境地帯は乾燥地帯で平坦な土地。大軍でも容易に進軍できる。
俺たちの今回の任務は、敵の内情調査及び皇帝の妹の捕縛である。


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