ガンスリンガー

限界集落村人

15

夜、俺たちは平野に陣地をを作り始め、途中妨害が僅かに入りながらも、一週間で陣地は完成した。
円形に作られたその陣地は全方位計10挺のM60を配備した。
俺の中隊の陣地は妨害が僅かだったが、イーライとクラークは陣地を作るにあたって妨害が激しく、死傷者が複数でたらしい。
全ての陣地が完成したのは三週間後だった。

俺は夜空を眺めながら星を見ていた。この世界は空が綺麗だ。元の世界じゃなかなか見られないような絶景だ。
夜空を見ていると、そこへひとりの兵士がスープを持って来てくれた。
「中尉、スープをお持ちいたしました!」
「ありがとう。君、名前は?」
「は!自分はマグスです!」
「出身は?」
「14地区の東にある貧しい農家で生まれました!」
「徴兵制度でここへ来たのか?」
「はい!」
「あのなぁ、別に一々声を張り上げる必要はないぞ。」
「はぁ…、すみません。」
「それくらいでいいぞ。」
俺はもらったスープを一気飲みしてマグスに返した。
「徴兵制度は嫌いか?」
「いえ、決してそんなことは。」
「正直に言ってくれ。」
「……正直に言うと、嫌いでした。前までは…。」
「前までは?」
「はい。以前の上官は私たちの命なんてただの捨て駒にしか思っていなかったのに、少佐や中尉は私たちの命を大事にしてくださっている。徴兵制度のおかげであなた方に出会えた。だから今では感謝しています。」
部下の命を大事にするなんて当然の事が、彼らにはいままでなかった事で、喜ばしい事なんだろう。
俺は部下を大切にするが、少佐に関してはちょっとわからないな。
「マグス、敵に動きはあるか?」
「いえ、敵に動きは全くありません。包囲を続行中とのこと。」
敵の動きはなく、テントを張って城を包囲していた。
敵は5万。油断してこちらから攻勢をかければ全滅しかねない。
俺たちは一晩中敵の動きを監視し続けた。どうやら敵の方でも俺たちが容易に倒せる相手じゃないと噂でも聞いたか。
その晩、敵は動かなかった。

次の朝、俺のいる陣地に伝令が届く。少佐から、敵の方に一発お見舞いしてやれとの事だった。
少佐から届いたドラグノフで500m先で悠々と突っ立っている敵を何人か殺せとの事らしい。
たしかに、敵は500m先に平気で立っている。頭を吹き飛ばされるなんて考えないだろう。
俺はいい機会だと思い、マグスに狙撃を任せた。
「マグス、落ち着いて敵を狙え。」
狙撃には目標との距離、重力による弾道の下降、気温、気圧、湿度、風向きと風速が重要となり、特に風の影響が大きい。しかし今は運良く風はほぼなく、マグスのいい訓練になるはずだ。
俺はマグスの横で観測手をし、なにやらこちらを見て敵に指示を出している人物を狙わせ、マグスに僅かな調整を指示し、発砲させた。
見事に命中して標的は崩れ落ち、敵はその人物を抱えてテントの奥へ消えた。
クーパーの言っていた通り、マグスは見込みがある。実力もだが、人柄も悪くない。こう言う奴はリーダーに向いている。
俺は戦果を報告させるために伝令を少佐のもとに遣わせた。

数時間後、敵に突然動きがあり、騎馬隊がこちらに突撃して来た。
「全員配置につけ、敵が来るぞ!」
俺の指示で全員配置についた。
数は目算で約3000。15倍の兵力が押し寄せて来た。
敵との距離が250m程になり、俺は射撃を命じた。
一斉に射撃を開始し、敵は次々と落馬していく。前方の敵に足を取られてこける馬が多く、敵の勢いはなくり、良い的になっていた。
敵は俺たちに近づくこともできずに引き返して行った。
その日中に敵の動きはなく、俺たちは補給を受けてから一晩を過ごした。

次の朝、天候は豪雨に霧、敵の姿はほとんど見えなくなってしまった。
「中尉、どういたしますか?」
「数名の少数の隊を組織して偵察に出す。ただし、敵が近くに見えたらすぐに逃げるよう言ってくる。」
マグスは数名を選抜して偵察に向かわせた。
すると数分後に銃声が数発近くで聞こえたと思えば、偵察に出したものたちが戻ってきた。
「た、大変です!」
「どうした?」
「て、敵がすぐそこまできています。」
その事を聞いた時には、地響きと敵の声が聞こえてきた。
「全員配置につけ!」
全員配置につかせるが、敵の姿はまだ見えなかった。だが次第に距離が近くなり、ついて霧の中から槍兵が現れる。
全員が撃ち始めるが、その距離は50mもなく、倒しても倒しても来る敵は物量戦で陣地に攻勢をかてくる。
そしてついに陣地に乗り込まれ、敵との近接戦闘が始まる。
俺は陣地の中に入った敵を倒すが、倒しても倒しても来る敵に切りはなく、永続的に絶えることなく敵は陣地に侵入する。仲間は次々とやられていく中、俺は少佐に伝令を出した。
多数の死傷者を出すも、なんとか敵を後退させた。
だが味方は今の戦闘でかなり消耗してしまった。だが敵はその隙に第二波の攻撃を仕掛けてきた。
俺たちは必死に反撃し、これを退けると、雨が止み、霧が晴れた。
だが仲間の数はもう半分以下になっていた。
「マグス報告しろ。」
「はい。重傷46、死者71です。」
多大な死者を出したが、問題なのは重傷者だ。重傷者は戦う事ができない、いわば現場の兵士として死んでいる。戦線復帰には治療が必要だが、即応で組まれた中隊には衛生兵はいない。中隊規模ならいて当然だが、メイサの医療部隊は民間人しかいない。だから前線に置くことはできない。
もしこのまま敵が現れたら、全滅するところだったが、敵は霧が晴れると同時に再び元の位置に戻っていた。
もしかすると相手にも頭の切れる人間がいるのかもしれない。
その日の晩、少佐から援軍が50人送られてきた。そして重傷者は後方に運ばれ、俺たちはひとまず安心していた。

次の日の朝、とんでもない事になってしまう。
敵の領主の首を差し出す代わりに投降するという男が現れたのだ。
男はたった一人で少佐のいる後方のキャンプにやってきた。
「で、なぜ今更投降する気になったのでしょうか?」
機嫌の悪く睨みつける少佐に対し、男は平然としていた。敵地にたった一人にもかかわらず、なぜか余裕があった。
「それは簡単な事です。昨日の勝機を逃した今、我々に勝ち目はないからです。」
「もしやあなたが昨日の指揮を?」
「ええ、恥ずかしながら私めが指揮を執り、貴殿をここまで追い詰めたのでございます。」
明らかに挑発的な態度をとる男に対し、少佐は今にもその男を撃ち殺す勢いだった。
「ほう…追い詰めた?それはなにかの間違いでは?我々は数少ない兵で戦い、あなたの方に甚大な被害を出した。それに、現に追い詰められて投降しているのはそちらではないか。」
「そうですが、私があなたの立場ならもっとうまくやれましたよ。それに貴殿はこの戦いに勝っていない。」
「どういう意味だ?」
「その通りの意味でございます。そのご様子ですと、今回の戦いの結果が不服なようですが……いや違いますね、貴殿が納得しないのは結果ではなくその過程でしたか?」
男の挑発的な言動に、少佐は銃を抜いた。
「なんですか?それで私を殺しますか?」
男は銃を突きつけられて尚、動揺していなかった。銃の脅威を知らないわけじゃなく、この男は少佐が自分を殺さないと確信しているようだ。
「お前、面白いやつだな。お前なら私より上手くやれたのか?」
「はい、もし私めわ貴殿の軍師にしていただければ、あなたのその目で見ている野望、叶えることができるでしょう。」
男はそう言って地面に跪くと、少佐は銃をホルスターにしまった。
これが、軍師タヌーア・アルキメデスとの出会いだった。

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