ガンスリンガー

限界集落村人

13

檻の中で生活し始めてから一週間がたった。俺は毎日ヘッケランが持っていた雑誌を一日中読んでいる。日付は2018年の4月15日。雑誌はロシアのものなねに、内容はなぜか理解できた。この世界に来てから、他の言語を喋ろうとしても頭の中に浮かばないのだ。俺は英語をしゃべっているつもりなのに、日本語で喋ってしまっている。後、この世界の意味不明な文字も普通に理解できるのだ。なんらかの魔法が作用しているのだろうか。
しかし毎日が退屈。その上愛華が檻の向こうから俺をガン見してくる。こんな最悪な日常があとどのくらい続くのだろう。
こんないかれ女じゃなく、メイサに会いたい。きっと怪我した俺を優しく看病してくれるのだろう。
愛華がいない間にヘッケランの部下が俺を看病する。もし俺の檻に入っているところを見られでもしたら、多分そいつは殺される。
愛華も見た目だけは女神のような美女だが、中身は悪魔のように恐ろしい。まさに
美女の皮を被った悪魔だ。
俺は愛華を極力視界に入れず、雑誌を読んでいた。
するとそこへヘッケランの部下がなにやら慌ててやってきた。
「大変です!王都のスラム街が貴族の私兵団に攻撃を受けてます!」
「どこの貴族なの?」
「北方の、マルス・ディ・ティアンツ伯爵の手の者のようです!現在ボスが応戦していますが、敵は圧倒的な兵力で味方はもうわずかしかいません。」
マルス・ディ・ティアンツ。もしやマリが俺を助けるために呼んできたのか。マリの親切が仇になってしまった。もしヘッケランが死ねば大事な情報源を失うことになる。それだけは阻止しなければならない。
「マルス伯爵は多分俺を助けに来たんだ。俺が出て話をすれば分かってくれるはずだ。」
俺が直接出向いてマルス伯爵たちを止めたいところだが、この女は当然承知しない。
「裕一を奪いに来たなら尚更あなたをここから出せないわ〜。そうね、いい機会だから裕一をたぶらかしたあのマリとかいう女を殺そうかしら。」
愛華は絶対に俺を檻から出さないつもりだった。こうなった以上、最終手段を取るしかないようだ。
俺にしかできない、悪魔のゆういつの弱点をつく攻撃。
「愛華、俺が悪かった。まだ俺は君を愛してるよ。」
「あら?下手な演技したって無駄よ?」
「演技じゃないさ……。」
俺は檻にしがみついていた愛華を抱き寄せ、愛華の唇にキスをした。
数秒間した結果、愛華はその場で気絶する。
悪魔の勇逸の弱点は、悪魔のキスである。
気絶した愛華はおそらく一日は起きない。夢の中でキスの後、妄想パラダイスを繰り広げているのだろう。考えるだけで鳥肌が立つ。
俺はヘッケランの部下の手を借りて牢獄から出た。そこは王都から数キロ離れた洞窟だった。
俺は馬に乗り急いでスラム街に向かった。

スラム街につくと、ティアンツ家の旗を持つ軍勢がスラム街を取り囲んでいた。
そしてそこには白馬に乗ったマルス伯爵がいた。
「マルス伯爵!今すぐ戦闘を中断して下さい。」
俺がマルス伯爵に呼びかけると、マルス伯爵は驚いた様子で俺の周りをうろちょろして俺をなにやら確認した。
「君!生きていたのか!」
「ええ、まぁ…。それより今すぐスラム街の攻撃を辞めていただけませんか?」
「いや、それは無理だよ。」
マルス伯爵のへんてこな顔が、珍しく真顔になっていた。
「スラム街に根づいていた犯罪シンジケートを潰せば、私の発言力は増し、従わない貴族たちも私に従うようになる。君に頼んだ邪悪龍討伐も全ては私の名声のため。私は貴族連合の盟主、貴族による王家の打倒こそが私の野望。それを妨げることは何人たりとも許しません。」
ヘッケランの言っていた貴族連合の盟主がマルス伯爵だったとは、人は見かけによらないな。
だがこれは俺としてはなんとかしなければならない。この犯罪シンジケートが潰されれば、貴重な情報源が失われ、帰る方法を探すのが更に困難になる。ヘッケランだけでも助けださないと。
「君は下がっていたまえ。犯罪シンジケートなど私の騎士と勇敢なる兵によってすぐに殲滅させられるさ。」
マルス伯爵はどうやら話しても無駄なようだ。
「しかし君を助けるという口実をマリが持ってきた時は私も嬉しかったよ。なんせこんなにうまい話、他にはない。君に感謝しなければな。」
このマルス伯爵という男は、俺が思っていた以上にゲスな野心家だった。
俺はマルス伯爵を無視してマルス伯爵の兵士が比較的少ない場所からスラム街に入った。

一刻も早くヘッケランをここから連れ出さねば。ボスのヘッケランさえ生きていれば、そういう組織はどうにかなる。だがボスが死ねば、犯罪シンジケートは消滅するだろう。
俺はマリが捕らえられていた廃墟に向かった。
廃墟が見えてくると、そこではマルス伯爵の兵士とお男が木の棒片手に戦っていた。
間違いなくあれはヘッケランだった。
俺はヘッケランとマルス伯爵の兵士の一団に突撃した。兵士達は驚いて道を開け、俺はその好きにヘッケランに手を伸ばし、馬に引き上げた。
俺はそのままその場から離脱しようとした時、路地を騎兵隊の一団に挟み撃ちにされてしまった。
「おい裕一、やつらの敵は俺だ。お前は事情を説明して助けてもらえ。」
「馬鹿野郎が。俺が仲間を見捨てるわけないだろ。」
「仲間か……そう言ってもらえると嬉しいよ。」
俺は知恵を振り絞り、この状況を打開する方法を考えるが、なにも思いつかなかった。
一か八か、騎兵隊に突っ込んで突破を図るしかない。俺は馬を正面の騎馬隊めがけて突っ込ませた。
しかし、騎兵隊の一団は突然急停止する。
騎兵隊の先頭にいたのはマリだったのだ。後ろから挟み撃ちにしてきた方はハミルだった。
「裕一殿!ご無事でしたか!」
ハミルがそう言った。
マリは泣きながら俺に飛びついてきた。
「心配させやがって、このバカ者ぉ……。」
マリはどうやら助けた俺が自分のせいで捕まったと思って責任を感じていたのだろう。
「して、そちらの方は?」
ハミルはヘッケランをだれかと尋ねてきた。
「彼は俺の友人だ。どうやらこのスラム街で戦闘に巻き込まれたようなんだ。」
「それは災難でしたな、私たちがスラム街の外まで護衛いたそう。」
「俺たちは大丈夫だから、二人はマルス伯爵の指示に従って犯罪シンジケートを一掃する方を優先すべきだ。」
「……それもそうですな。マルス様はああ見えて命に逆らう者には容赦ありませんからな。しかし分かっていただきたい。我々は裕一殿を助けることが何より重要な事だと思っております。ですから何名か護衛につけさせていただきます。」
ハミルは俺に何人か護衛をつけてスラム街から離脱した。



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